第169話 今後の方針
マイリ-商店は1階と2階が事務所になっていて、3階に小部屋が並んでいた。それぞれの小部屋は普段は倉庫的に使われているが、遠くから来た商人や来客を宿泊させることもあるため、寝具を入れればすぐに使えるように準備してあるらしい。
その中の2部屋が早速改造され、俺と天使たち、レヴィとシャロレの2組が泊まることになった。マイリーさんが用意できるのは今のところ2部屋だけとのことなので、アーティは別で宿を取ることに。
「で?旅の疲れもあるし今日のところは身体を休めるとして、だ。明日からどうすんだよ」
「まずはベルンハルトに教えてもらった通り、クエストをこなそうと思う」
ウルガーの救出手段としてクヌが考えたのは、領主への直訴だ。ただ領主は一般人が気軽に会える人ではないので、転生者が領主に謁見できる制度を利用する。その手段としてベルンハルトが教えてくれたのが、クエストだ。領地にある程度貢献して認められれば、領主に謁見することができる。
「なら冒険者ギルドに通って、依頼を受けて、達成してって感じか。…そんな悠長なことしてて間に合うのかよ」
「間に合うかどうかっていうよりも、他に方法が無いじゃない」
「おい子馬!方法が無いからって、それで万が一ウルガーの救出に間に合わなかったら…」
「間に合うように、手分けして頑張ろうね」
「そうですよね、シャロレさん!」
「そのシャロレかシャロレ以外かって態度、いい加減どうにかなんないのアンタ…」
アーティが心配する気持ちも分かるけど、こればっかりはしょうがない。今のところはレヴィやシャロレが言うように、できることをやっていくしかないのだ。とはいえもちろん時間の浪費は避けたいところ。効率的に貢献度を貯めて、可能な限り速やかに謁見を実現したいわけだけど…。
「ねぇレナエル、ギルドの依頼以外で貢献度を稼ぐ方法は無いの?」
「ギルドではなく個人の依頼でも構いませんよ。むしろ数をこなすには両方を達成していく必要があります」
「依頼によって貢献度の溜まり具合も変わるのかな?」
「難易度次第ですね。討伐依頼なら強敵であったり数が多かったり。配達依頼なら遠方であったり、物量が多かったりするほど、貢献したと見なされるでしょう」
「なら強敵の討伐依頼だけ全員でやってりゃあ良いんじゃねぇの?」
「貢献度は地域への貢献、言い換えれば地域住民への貢献ともいえます。その意味ではギルドの討伐依頼だけ達成するよりも、多くの人の依頼をこなす方が効率が良いでしょう」
「ねぇレナちん、この辺りで美味しいお店知らない?」
「…この前渡した参考書の巻末にエットの飲食店一覧が載っていたでしょう?クレープを扱っているお店は2軒あります」
さすがはレナエル先生。みんなの質問に的確に答えている。約1匹、方向性が違う生徒が混じっているようだが。確かに大切なことだけど、今じゃないだろう。
「まとめると、冒険者ギルトと個人の依頼を手分けしてこなす。しかもできるだけ多くの種類を、って感じか」
「そうね。けどルイ、あなたはギルドに近づかない方が良いんじゃない?」
「へ?何で?」
「何でって…冒険者ギルドなんて、転生者の
「いやでも、フードを被ってれば…」
「ルイくん?」
「う…」
せっかくのエットだし、ギルドも見てみたいんだが。シャロレの心配そうな表情からすると、とてもじゃないが許してもらえなさそうだ。
「転生者が密集する冒険者ギルドよりも、街中の方が危険はないでしょう。どのみち誰かが個人依頼を担当しないといけないでしょうし…」
「分かった、分かったよ。俺は個人依頼をやることにする」
「あたしは馬車で配達かしら」
「当然、俺は討伐だな。しゃ、シャロレさん。良ければ俺と一緒に…」
「私は…採取とかあるかな?」
「シャロレさん?聞いてます?ていうか間違いなく聞こえてますよね?」
何だかんだで各自の得意なことを活かして分担が決まりそうだ。ギルドに通って依頼をこなすような、いかにも冒険者っぽい生活もしたかったんだけど。街中を巡って依頼をこなすのもそれはそれで面白そうだし。
「じゃ、明日から頑張ろうということで…メシ食いに行こうぜ!」
お仕事も大切だけど、エットを楽しみながらやっていきたいものだ。
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