少女の髪と楚々とした教主 2
「な、何を……」
「……ニクラ様。私の
美名は彼女に、握っていた拳を開き見せる。
少女の銀髪は
「……髪を……、そんな真似……」
頭髪――。
「頭」――人体の最も天頂にあり、絶えず
現在でも、亡くなった者に対する
また、かつて存在した刑罰に、「
このように、頭髪とはヒトにとって重要な意味をもつ。
守衛手司ニクラも、充分にその事実は承知している。
だからこそ彼女は、不揃いの銀髪になりながらも
だが――。
「……か、髪を切って、誠実の証になどなるわけが……ないでしょう!」
彼女は
銀髪の少女の
意気を取り戻したニクラの瞳に、今度は美名が少しだけたじろぐ。
(……足りなかった?! これ以上は……)
美名は覚悟する。
これでニクラが引きさがらないようであれば、今この場で、「
彼女が「断髪」という唐突な行動に出たのは、できればその、教会区内での戦闘を避けたかったがためである。
ニクラを「明良の敵」だと断定した今、魔名教のヒトの誰が味方で、誰が敵か、判ったものではない。加勢の怖れは大いに考えられる。加えて、「守衛手司」に刀を向けた場合、無関係の者から見れば「
(……それでも、やるしかないの?!)
決心の
「クメン様!」
耳に慣れた声。小さなクミの、怒るような叫び。
彼女は、美名の決心を引き取るようにして、傍らの名づけ師を見上げ呼んだのだ。
「クミさん……?」
「私、クメン様以外の誰かが私たちについてくるって言うなら、行きません! 教主様のところには行きません! さっさと福城を出て、別のオ様を探しにもいきます!」
言われた名づけ師は、クミの
そして、「
「
「クメン様ッ?!」
「……あなたの、守衛手司の
「で、ですが……」
「決して、ニクラさんの御心配には、及びません」
美名。クミ。クメン師。そして、無言のままの明良――。
四人から、ほとんど敵視のような注目を浴び、ニクラ手司は無意識であろう、一歩退いた。
「こ、このことは……司教様に報告しますよ……」
「構いません」
「何か起きても、クメン様の
「結構です」
「……クッ」
苛立ちを露わにした目線を美名に送るのを最後に、守衛手司ニクラは
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