少女の仮名と別の可能性 1
「おお! ホントに漢字の『
「
「……『
「うん、うん! バッチシ! そっかぁ、漢字でもいいんだぁ……」
美名と小さなクミは、お互いの顔を見合わせ、ほころばせた。
「
術の失敗を「附名」魔名術者は心配したが、「漢字」での「渡名」は滞りなく完遂した。
「……アタシも自分では枠外と思ってるトコロがあったけど、どうもイケないねえ。囚われていることを自覚できないものが、多いもんだ」
「……本部に問い合わせなくてよかったんですか? 『漢字の個人名』の許可、モモ様の一存なのでしょう?」
「構いやしないよ。どうせ、こういうのに目を
「美名
「報告するなり、
「私がどうするか……モモ様は判って言ってるのがズルいわよね」
ウの魔名術師と
(魔名に漢字は使わない……。私の……日本人の感覚でいえば、自分の子どもに『アルファベッド』の名前をつけるって感覚かしら。そうしようと考えついたこともない、想像の外……)
そうしてつと、ひとつの疑問が湧いた。
(どうして、私と――日本語と、
「……モモ
美名が述べる礼に思考を中断され、クミは彼女を見上げた。その心中には、少し複雑な想いがある。
「幻映」から戻った美名の顔が晴れやかになっていたことにはクミも喜んだ。
だが、美名と
(やぁね……。いいトシなのに、「大好きな友ダチが自分の知らないヒトと仲良く喋ってる」みたいな、このカンジ……)
向けられているクミの視線を見つけ、幻燈の大師は意味深げに微笑みを返した。
(……なんだか見透かされた気分。さすが、「マ行幻燈大師」――「心のスペシャリスト」ってところよねぇ……)
「その子も、報告しなくてよいのですか?」
マ行大師とクミが、傍目には見つめ合っているようになっているのに気付いて、カラペは訊いた。
「『
「ええ、そうです」
「するもんかい。したところで、
(ゲッ……)
「やく?」と少しだけ首を傾げた美名だったが、つと
「『客人』が『
「……それが、美名嬢が『訊きたいコト』のふたつめかねえ?」
「はい」
モモノは
「あいにく、知らないねえ。なんだい、クミネコはおウチに帰りたいのかい?」
小さなクミは口を尖らせて、「そうよ」と答える。
「帰れるものなら、帰りたいわよ」
「
「いつでも帰れることが判ったなら、ゆっくりしますわよ」
「クミネコ、つれないねぇ」
大師は美名に向き直ると「司教さね」と言う。
「アタシら、教区の管理を任されている大師には
「……『客人』を、司教の
「集めるってホドじゃあない。記録がないから判らんがねぇ、少なくとも、アタシが大師に就いてからは、クミネコしか『客人』は現れていないはずだ。そんな『客人』について何をか知っているとしたら、魔名教内では司教以上――司教か教主かってコトだろうねぇ」
美名は目を
魔名教会では、「
名目上は「教主」が「司教」より上に置かれるのだが、魔名教会の運営、実務全般は司教が管理するため、権力としては同様に等しいというのは居坂の周知事実である。
このふたつの下に、「
「クミのことを……『客人の世界への帰り方』を調べるには、そこまで上に行かないといけないのね……」
「ホラね。ゆっくりしていけってことさ。最悪のところ、クミネコは煮られて焼かれて、司教サマと教主様の夕食に出されちまうのかもよ?」
憎まれ口を叩くモモノに、クミも歯を剥いて対抗してやった。
「あの、モモ姉様。もうひとつ、訊いてもよろしいですか?」
「……ン?」
顔を美名に向けた幻燈大師は、嬉しそうにニンマリとする。
「いいねぇ。遠慮がなくなってきてるってのはいい兆候だよ」
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