ネコの想いと少年の願い 1
薄い陽光を感じ、銀髪の少女はまぶたを開く。
開かれた深紅の瞳には、黒毛の獣の
「……美名!」
「……クミ?」
美名はゆっくりと身を起こし、辺りを見回す。
そうして、ここはリントウ家に用意された寝室で、自身は寝台に横たわっていたのだと知った。
「痛いところ、ない? 冷たいところとか、熱いところとか、ない?」
「……うん。大丈夫」
心配顔のクミに笑顔を作って応じると、美名はひとつ、瞬きをした。
「すべて、夢……」
「気が付いていたか」
低い声に美名とクミが目をやると、暗色の
どこか物寂しげな少年の顔を認めた美名は、悟る。
「夢じゃあ、ないよね……。クシャのことは、夢じゃあ……」
少年はため息をひとつ吐いて室内に入ってくると、美名を見下ろす。
そんな少年に顔を向けて、美名の傍らの小さなクミは「アキラ」と呼び掛けた。
「もう……終わったの?」
クミの問いかけに、少年は首を振った。
「お前は休めって、
「どの口が言うのよ……」
顔を戻したクミは、美名がもの問いたげな顔をしていることに気が付くと、少しの
「……今、クシャの隣の村――フモヤってところらしいんだけど、そこから人手が出てて、皆で、その……クシャの『後片付け』をしているのよ。『アキラ』は美名を運んだあと、その手伝いに行ってたの」
「奇妙な光景だった」と少年が口を挟む。
「お前の言う通り、村中で地を這うような白煙が漂っていた。雪が
「ああ……、やっぱり、ドライアイスだったのかな……」
「……フモヤの奴らは『
「……使えるものは、どんどん使っていいわよ」
そう言うと、小さなクミは困惑顔のままの美名に顔を戻す。
「……洞蜥蜴の『
クミの言っていることの大部分は、美名にはよく判らない。
少年に目を移してみるが、彼も神妙な顔をしているだけで、理解している風ではなさそうだった。
「そこに――『コブ』にまず、『アキラ』が穴をあけた。圧力が弱まって、一気に気体化した二酸化炭素に
パチパチと瞬きをして、美名は首を振った。
「そうじゃなくて……、洞蜥蜴のことなんかじゃなくて……」
美名は、小さな友人の双眸を見つめる。
「クシャは? 村里のヒトたちは、どうなったの?」
寝台の傍らに立ち、美名とクミを見下ろしていた少年は小さく息を
「……助かったのは、今のところ四人だ」
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