第300話
三人の様子を見るとルールがなければとんでもないことになるのが分かる。止める存在がいなければ、俺は意図も容易く理性をかなぐり捨てて欲望のままを尽くすだろう。
その自信が俺にはある。
「ぼ、僕だってランドロスさんの気を引きたいんですっ! マスターさんがそうするなら、僕ももっと過激な格好をすることになるんです」
クルルのパジャマの下を脱ぐのより過激な格好……下着姿ということだろうか、それとも下に何も身につけない格好か。想像するだけで興奮して鼻血がでてしまいそうだ。
「なら私も……」
「そうなったら、ドンドンエスカレートして、みんなでランドロスさんに裸でひっつくことになるじゃないですか」
「シャルが諦めて止まるって選択肢はないんだね……」
「は、裸は恥ずかしいですけど、ランドロスさんの気を引きたいですから」
「……じゃあ、シャルにとっても好都合じゃないの? 気を引けるんだし」
「ら、ランドロスさんは、淫に肌を見せても喜ばないはずです!」
シャルは顔を真っ赤にしながらそう言い、カルアとクルルが微妙そうな表情を浮かべる。
「ええ、いや……それはランドロスに夢を見過ぎだと思うよ? ランドロス、ちょっとスカートが捲れたらめちゃくちゃ見てくるよ?」
「そ、それは……そうかもですけど
「そもそも誘惑したら陥落したんですよね? 淫に肌を見せたら喜ぶと思いますよ?」
「う、うう……」
シャルはふたりに言われて、とても悲しそうな顔をして俺の方に助けを求めるような視線を向ける。
「そ、そう……なんですか? 僕が服を脱いだら嬉しいんですか?」
「い、いや、それは……そうだが……」
「……みんなでエッチなことをしたいんですか?」
「そ、それはだな……」
裸の嫁や彼女達に囲まれる妄想をして思わずすこし興奮してしまう。……そりゃ、したい。したいさ。俺も男だ。
好きな女の子達に囲まれてエロいことが出来るならしたいに決まっている。
それを隠そうと首を横に振るも……この場には嘘を見抜くのが得意なクルルがいる。
「……ランドロス、嘘吐いてるね」
「吐いてない。信じてくれ。俺はな、そんなことに興味はない。みんなとエロいことをしたいとは思っているが、そんな複数同時になんてな、ことは……」
「……ランドロス、嘘吐いてるね」
「ち、違う」
「ランドロス、そうやって誤魔化そうとすると変に拗れるから。みんなランドロスの望みは叶えてあげたいと思っているから、安心して」
「……違うんだ。いやそりゃな、俺も男だからそういう状況に夢を見たりはするさ。でもな、それで誰かを傷つけたりはしたくないんだ」
キスをするのだっていっぺんにこなしたりはせず、ひとりひとりと向き合ってしている。
本音を言えば、もっと好き放題に触ったりキスをしたりしたいが、シャルは間違いなく嫌がる。
クルルは灰色の髪を揺らしながら首を傾げる。
「……誰も傷つかないと思うよ? ね、カルア、シャル」
「まぁ、私はそういうランドロスさんが女の子をたくさん侍らせてエッチなことをするというのは想像がついて分かった上で結婚してますし、シャルさんもそれぐらいは分かってるはずです」
シャルはこくんと小さく頷く。
……つまり、いいのか? 今日、シャルとの行為を諦めざるを得なかったが……その代わりにこの部屋でみんなでするというのは……いいのか?
いや、しかし、シャルの初めてがそういう倒錯的なのは……。クルルとカルアも初めてだが、元々倒錯的な趣味をしているのでそんなに気にならないが、シャルはもっと普通にロマンチックな感じで結ばれる方がいいのではないだろうか。
だが……エロいことをしたい。まだ汚れを知らない身体に俺の色を染み込ませたい。そういう感情が強まっていき、頷きかけた瞬間のことだった。
「ちょっと待ったぁ!」
天井の木の板が外れ、屋根裏から黒い影が落ちてくる。
何奴っ!? と思いながら身構えると、机の横にすとんと少女が着地する。人の重さを感じさせないような軽い音と着地時に姿勢を崩さず、すぐさま動けるような体勢になっていたことから「只者ではない」と判断して警戒を強めるが……どうにも見たことのある背格好だ。
「卑怯な手でロスくんを誘惑することは許さないよ!」
「あ、貴女は……! ストーカーのっ!」
「違うね。逆にあなた達がストーカーなのさ!」
「……逆に?」
俺が思わず素で首を傾げるもスルーされる。……逆に?
「この前の話で、ランドロスがストーカーでないことは分かったよ。でもね、だからと言ってランドロスが私のことを好きじゃないとまでは確定していない!」
「……いや、別に異性として見ていないが」
「そして君たち、ランドロスの弱さにつけ込んで手前勝手なことをしちゃダメだよ! 相手の迷惑を考えないと!」
お前が言うの?
「うっ……」
シャルは心当たりがあるからか、薄べったい胸を押さえて呻く。
「まずシャル! シャルちゃんは人に対してしつこくルールや規範を強いて牽制するくせに、自分のときになると好き勝手に甘えまくってる!」
「うう……」
シャルは助けを求めるように俺を見て、俺が助け舟を出そうとするとクウカは俺の口元に手をやって黙らせる。
「次にカルア! 会った時からずっと金銭面で甘えてばかり! それ以外も効率ばかり考えてランドロスの意見や意思を尊重していない!」
「そ、それは……その……」
カルアは思い当たる節があったのか目を横に逸らして口をモゴモゴとする。
俺はクウカの手を持ってのかしながら突っ込む。
「いや、なんで知ってるんだよ。……いや、マジでなんで知ってるんだよ。怖いんだが。というか、なんで空間魔法を防げているんだ?」
「愛の力かな……?」
「えっ、怖い」
俺のその反応をスルーしてクウカはビシッとクルルを指差す。
「クルルはとりあえず、夜中に脱いでひっつくのは禁止!」
「な、なんでそれを……」
……えっ、何それ俺も知らない。
見たかった。……いや、そうではなく、なんでそれを知っているんだ……衛兵を呼ぶべきか?
いや、しかし……俺の空間魔法から逃れられる力があって衛兵に対応出来るか? 先程の流麗な着地を思い出すと……相当な身のこなしだ。
正直なところ、シユウやグランと同等程度はありそうである。うちのギルドの中でもかなり上位にきそうだ。
あの低階層で死にかけていたクウカが、たった半年ほどでこんなにも……。
愛の力と言っていたが……。まぁ俺もシャルに恋してからかなり急激に強くなったな。あの頃の俺と年齢も近いし、そういうことが発生しうるのかもしれない。
……知り合いが強くなったのは喜ばしいが、けれども衛兵を呼んでも捕まえられなさそうは問題である。……どうしよう。マトモな対応方法がないぞこのストーカー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます