第66話 大人の階段

バッ…


よかった夢か

師匠が死ぬ夢を見て目が覚めた


夢…だよな?


嫌な予感が頭から消えない

だが今は考えても仕方ない

今日中にクレアを探し出す


朝から探し始めて

ずっと廃墟の山を通り過ぎていく

同じ所をグルグル回っているような気さえしてくる

生存者はもういないかもしれない…


朝見た夢のせいで少し心が弱っている


っ!!


感知に反応有り

人数多数…それにこの魔力は!!


心拍数が上がる

気持ちがはやる

速く、速く、もっと速く


あと…少し!


「え」


あと少しの所まで来た瞬間

[魔力弾]の弾幕が襲いかかってきた


「ここには誰も近付けさせない!」


あぁ…この声


探し人の声を聞いて完全に油断していた

腹に衝撃を感じた俺はそのまま気を失った



「ん…」


「お姉ちゃん、男の人起きたよー」


目が覚めると目の前には5歳くらいの女の子が立っていた

お姉ちゃんと呼ばれた人の方を向く


「ルーカスっ!!」


赤い髪を揺らしながら駆け寄ってくる女性

髪を揺らしながら…

揺らしながら…

揺れ…てない?


「ああああぁー!!!」


「えっ、えっ、何よ!!」


「髪!!髪!!」


「そうよ!切ったの!悪い?」


クレアと言えば赤い髪のロングヘアがアイデンティティみたいな所があったのにその髪が見るも無惨に切られ

ショートボブのような髪型になっていた


「それも可愛いけど、前の方が好きだった…」


「可愛っ…!!じゃなくて久しぶり会ったのにまずそこなの?もっと言う事ある…」


髪の事は相当なショックだった

けど半分は照れ隠し


本当は会いたくて会いたくて仕方なかった

生きていてくれて嬉しかった


言葉よりも早く身体が動く


気付けば俺はクレアを抱き締めていた


「久しぶり、無事でよかった」


そう言うとクレアの身体が震える

顔を見ると涙がとめどなく溢れていた

この何日かとても大変だったのだろう


そこからクレアは30分ほど泣き続けた

泣き疲れてその場で寝てしまったので仕方なく膝枕する


周りの人からニヤニヤとした視線が飛んできて少し恥ずかしかった


「う〜ん…」


「よ、寝坊助」


「おはよ……って、えっ!?」


少しして状況を把握したクレアは赤面しながらサッと立ち上がる


「私どれくらい寝てたの」


「さぁな?1時間くらいか?」


「くっ…!!それはそうとルーカス少し口調が変わったのね」


説明の為魔法学園での話をし、クレアからはここ数日の話を聞いた


話しながら涙を流すクレアを見て、不謹慎かもしれないが綺麗だと感じた


その晩はお節介な大人達のせいでクレアと一緒に寝ることになった


「なぁ、クレア」


「なに?」


「好きだよ」


「えっ、あっ!えっ!?ひゃっ!!」


混乱したクレアは奇声をあげながら逃げようとするのですかさず腕を掴んで引き寄せ唇にキスをする


「なぁ、クレア俺の事嫌いか?」


「すき」


「え?」


「すーきー!!!!」


そう叫んだクレアが頬にキスをしてくる


理性が完全に崩壊した俺はクレアと大人の階段を登った

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