関口 陽(ひなた) (14)

「狙われてるのが誰か見当が付いた」

 さっきまで、携帯電話ブンコPhoneで誰かと話していた笹原ささのはらがそう言い出した。

「どう云う事?」

 「四谷百人組」の藤井詩織がそう訊いた。

「あの第0棟の担当は……ウチの『護國院』って子院チーム……で、そいつらの面子めんつを潰したのが……2人ほど、この中に……」

「は?」

「えっ?」

 私は、おずおずと手を上げる。

 一方、ランは……ヘルメットで表情が読めないが、多分、何1つ悪びれる様子なく手を上げる。

「世話になった。どうやら、私とこいつの問題のようだ。万が一の場合は、気が向いた時でいいから、私達の墓に高価たかいケーキでも供えてくれ。行くぞ、関口」

「あ……ああ、そうだな……」

「ふざけんな」

「待ちやがれ」

 そう言ったのは「四谷百人組」の藤井詩織と「原宿Heads」のMC富三郎。

「あのね……巻き込まれたとは言え、私らも喧嘩売られたも同じなの」

「売られた喧嘩を買わなけりゃ……一般人や他の『自警団』に舐められる」

「そうか……あんたはどうする?」

 ランは笹原ささのはらにそう訊いた。

子院チームは違うが……同じ『自警団』のヤツの不始末だ。ここで私が加わらなかったら……悪者になるのは、『寛永寺僧伽』の子院チームの1つじゃなくて、『寛永寺僧伽』全体だ」

「よし……なら……全員、突撃ッ‼」

 MC富三郎のその号令を聞いて、何故か、流石はラッパーだけあっていい声してんな、と云うしょ〜もない考えが頭に浮かんだ。

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