高木 瀾(らん) (8)

「maッ‼」

 ゾンビもどきは、私達の方を向いて、全個体ほぼ同時に絶叫。

 だが、その瞬間、笹原ささのはらは印を組み叫ぶ。

 そして、ゾンビもどきは、キョトンとし……私と笹原ささのはらの身には……何も起きない。

「何が起きたんだ?」

「『気弾』だ。奴らは、口から『気弾』を放てる」

 えっと……。

「じゃあ……私達が何とも無いのは……一発も命中あたらなかったのか?」

「『気弾』は、昔のマンガの『かめはめ波』とやらとは違う。呪詛の一種だ。相手の気配を認識とらえられないと、命中あてる事は出来ない」

 笹原ささのはらは、錫杖を構える。

「癪だが、昼の試合で関口が私にやった手を使わせてもらった。命中あたる直前に気配を消す呪法を使った」

「私は?」

「その服には、元から気配を隠す呪法がかけられてる。誰がやったのか知らんが、かなり強力なヤツがな」

「なるほど……」

 私と笹原ささのはらは逆の方向に走り出し……。

「見えてるか? こいつらは『気弾』とやらを使えるし、結界も張れるそうだ」

 私はヘルメットのカメラに映っている映像を見てる関口達にそう伝える。

 そして、大型のバタフライ・ナイフから先頭に居たヤツの頭を殴り付け……。

 しまった……。

 いつもの癖だ。

 戦うにしても、相手の戦闘能力を奪えば済む。不要な殺しまでやる必要は無い。

 「正義の味方」として戦い始めて1年経っていないのに、それが私の第二の本能と化しつつあるようだ……。

 だが、相手は……えっ?

 待て……何故、倒れる?

 外に居たゾンビもどきは、脳震盪を起すほどの打撃を受けても、鳩尾などの急所に強い衝撃を与えても動き続けていた。

 それなのに……。

 試しに、次のヤツの鳩尾に思いっ切り蹴り。

 これまた倒れる。

 奴らは、私の気配を検知出来ないらしい。しかし姿は見えている。

 奴らにとって、私は姿は見えているのに音はしないような状態なのか……それとも、音はするのに姿は見えていないに近いのか……ともかく、ゾンビもどきにとっても私は良く判らない奇怪な存在に思えるようで、明らかにとまどっている。

 いや、待て、

「良く判らんが……知能らしきモノが有る悪霊や魔物が取り憑いた相手なら……その……」

「あ……私も初体験だが……並の人間なら気絶するような攻撃で……戦闘能力を奪えるようだ」

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