関口 陽(ひなた) (3)

「えっとさ……お前……何を言ってんだ?」

 後でバレたら、更にややこしい事になるので、上司である「大黒天」の爺さんに正直に自白ゲロしたが……問題が1つ。

 どう説明すれば良いか判らない。

「で……ですので……私が、本土から連れて来た撮影のバイトが……いつの間にか、勝手に、住民の避難誘導をやってました……」

「1人で出来る訳無いだろ」

「えっと……見物に来てた、他の東京の『自警団』の連中に助けを求めて……」

「いや、あいつらは前線要員がほとんどだろ……。避難誘導なんて手慣れてる筈が……」

「……」

「聞こえねぇよ」

「…………」

自白ゲロするなら、聞こえるように自白ゲロしろ」

「『本土』の御当地ヒーローが、遠隔で避難誘導の指示を出してるようです」

 爺さんは、一瞬、唖然としたような表情になり……そして……。

「おい、まさかと思うが……『本土』の御当地ヒーローをバイトに雇ったのか?」

「……は……はい……」

「まさか続きでアレだが……まさか、先月末のあの事件の……」

「……は……はい……」

「よもやとは思うが、『贋物の靖国神社』を焼いた馬鹿か?」

「……は……はい……その馬鹿です」

 それも……「死んだフリをする」と云う、たったそれだけの為に、「紛物の東京」の自警団の中でも最大最強だった「英霊顕彰会」の本拠地にして聖地を爆破したのだ。

「そいつの名前は……?」

「知りません。『本土』の『御当地ヒーロー』は仲間にも本名を明かさないとか……」

「知ってるよ。『御当地ヒーロー』としての名前だ」

「『羅刹女ニルリティ』と……あと『ラン』って名前を使ってます」

「あの化物の縁者か?」

「えっ?」

「名前からして……『護国軍鬼』の1人……『羅刹天ラーヴァナ』の関係者か?」

「……すいません、そこまでは……」

「今後、どうするかは……事が終ったに話そう……。この事態だ……立ってるモノは商売敵でも使うべきだろうな……」

 そうだ……。忘れてた。あいつも「役に立つなら敵でも使う」ようなヤツだった。そんなのがトラブルに居合せたら……何が起きるか……。

「だが……明日から……この『東京』は……今日と同じでいられねぇかも知れんな……」

 横で聞いてた笹原は……まず、下を向いて額に手を当て……続いて、天を仰いで溜息。

「お前……何で、魔法はピカイチなのに、他はイマイチなんだ?」

「あ……もし、ここでの仕事、馘になったら、『渋谷』の連中に雇ってもらうってのはどうだ? さっきの台詞、ラップみたいに、ちゃんと韻を踏んでた」

「あのな。馘の心配をする必要が有るのは……私じゃなくて、お前」

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