高木 瀾(らん) (4)

「あのさ……どう見ても、相手の方が近接戦闘の技量は上だぞ。何で魔法使わない?」

『祭の運営から「カメラ映えする戦い方しろ」って言われてんの』

 ややこしいな……。

「相手が、まだ、お前を舐めてるから助かってるだけで……棒術と多節鞭を切り替える戦い方をされたら、絶対にお前の腕じゃかなわないぞ。相手が油断してる内に何とか……」

「待て、そんな塩試合したら客がブーイングの嵐だぞ」

 私のアドバイスに対して、何故か関口の味方から苦情……。

「これ、勝つのが目的ですよね?」

「強さをアピールした上で勝つのが目的なの。勝てりゃいいってものじゃない」

 ここまで意味不明な「勝てりゃいいってものじゃない」を聞いたの、生まれて初めてだ。

「この『祭』のそもそもの目的は、相手チームに勝つのと、見世物として面白くするのの、どっちですか?」

「両方」

「あの……まさか、わざと両チームが事前に打合せて、大体、同じぐらいの力量で、似たような戦い方のヤツ同士が当たるように調整してます?」

「当り前だろ」

「何で? 何が『当り前』?」

「両方の『自警団』の宣伝と、『祭』による観光収入も、この決闘の目的なんだよ」

 ……駄目だ、こりゃ。見世物かガチンコか、コンセプトを明確にしてくれ。

 ……いや待てよ、なら……。

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