高木 瀾(らん) (1)

『何が起きたのか不明ですが……「魔法」同士の激突で、関口選士が優勢になったようです』

 何故か、2人が、ほぼ同時に同じ呪文を唱える。

 対戦相手は錫杖を振り降す。

 関口は、印を結んだまま、突っ立ってる。

 そして、何も起きない。

 対戦相手は、一瞬の驚愕の後に怒りの表情。

 関口は相手を挑発。

 司会だけじゃなく、私にも何が起きたか判らない。

「あの……魔法勝負をネットやCATVで中継するってコンセプトそのものに無理が有りません?」

「か……かもね……」

 霊的・魔法的な存在や「気」は、基本的にカメラに写らない。

 当然だ。物理的な実体も無ければ、光も出さないのだから。

 その手のモノを認識出来る人間からすれば……凄い事が起きてるのかも知れないが……ドローンに搭載されてるカメラ越しに見てる私達からすれば……はっきり言って、どう反応していいか判らない。

「あの〜、関口さんの中指おっ立てた手、モザイクかけます……?」

 その時、撮影スタッフの1人が、そう聞いた。

「いいよ。今時、ディズニー映画で、1分に1回『FUCK』を連発したって、PG−13にすらならない御時世なんだから」

 久留間さんは、そう答える。

 だが、その時。

「あ……マズい」

 対戦相手が錫杖を振るが……その先端の速度が異常だ……。棒を振ると言うより、鞭か鎖分銅でも振った速度に近い。

 更にマズい事に、関口は、その攻撃を避ける為に……。

 馬鹿野郎、最初の内は躱せるが、その内、ジリ貧になるぞ……。

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