第91話 side 神々
わしは下界の様子を見て頭を抱える。
あれはなんだ?
どうしてこうなった?
意味がわからない。
わしはあんなことは仕組んでいない
あれでは、世界が崩壊する未来を変えるどころが増長してしまう
誰の仕業だ?
いや、あいつらのどっちかしかありえない。
そもそもこのことを知っているのは、わしを含めて3柱だけなのだから
わしは2柱を呼びつける
「主神、急に呼び出してどうしたんだ?あんたと違って俺らは忙しいんだが?」
「せっかくエステしてたのに、大したことない用事だったら怒るわよ」
散々な言われようだ
「下界の様子を見てみろ!どっちか知らないが心当たりがあるんじゃないのか?」
「あー、この前のなんて言ったか……ああエルクくんだったか。元気があり余ってるな。元気で何よりだ」
「貴様本気で言ってるのか?」
「本気ですよ。思ったより早かったなと思ってるくらいです」
裏切り者はハマトの方だったか
「何が目的でこんなことをした?」
「あの世界にはスパイスが足りないと思わないか?魔物との戦闘はあるが、戦争も終わっちまったからな。毎日毎日のほほんと皆生きてやがる。それじゃあいけねえ」
こいつが何を言っているのかわからない。
世界が平和で何が悪い。
そもそも、下界の者が気づいていないだけで、世界が崩壊しそうになっているのに、何がスパイスが足りないだ
「こんなことしてどうなるかわかっててやってるんだろうな?」
「あ?それは下界のことか?それとも俺のことか?」
「どっちもだ!」
「下界のことはしらねぇよ。わかってたらつまんねぇだろ?」
「自分のことはわかってるようだな」
「ああ、わかってるぜ。これからは俺があんたの代わりにあの世界を面白おかしくするんだろ?」
こいつは死にたいようだ
「貴様はわかってないようだな。あの世界は貴様がどうこうせずとも崩壊する運命だ。それを防ぐためにあの男を送り込んだというのに。貴様のせいで台無しだ」
「ははははは。ここまで来ると笑いが抑えられねぇな。なあノルン、教えてやれよ」
「あなたは騙されたのよ。私達にね」
まさかノルンまでもが裏切っていたとは思わなかった
「ノルン!崩壊する未来というのも嘘なのか!?」
「嘘ではないわよ。あのまま放置していたら崩壊してたわ。それが何万年、はたまた何億年先のことかは知らないけどね」
ぐぬぬぬ
「言っておくが、俺達に勝てるなんて思わない方がいい。よく考えてみろ。俺はあんたからスキルという名の神の力を一度預かった。こんなことしてるのに、負けるかもしれない相手にわざわざ力を返すと思うか?あんたあれからちゃんと確認したか?自分の力が少なくなってないかを」
わしは自分の神力を確認する。
数年前に比べて2割近く減っている
何故だ?一度に2割も減れば気付いてもいいはずだ
「何不思議そうな顔をしてるんだよ。向こうの世界に送ったのはあの男だけじゃないだろ?誰も一度で奪ったなんて言ってないぜ」
「まさかあの時失敗したのは貴様らのせいか!」
「ははは、そうだと言いたいが……それは違う。あれは別件だ。ちょうどいいから利用させてもらったがな」
「それでも貴様らに負けるほど弱くはなってないぞ」
「かもしれないな。だが俺達が本気で戦ったらどうなるかわかるだろ?それこそあの世界が戦いの余波で消滅するかもな」
「ぐぬぬぬぬ」
「ひとつ言っておくが、俺達はあんたをどうこうするつもりはないからな。主神の座を乗っ取るつもりならそもそも力は返してねぇ。自衛のために一部奪ったたけだ。さっきはああ言ったが俺達なりにあの世界の事は考えている。あの世界は停滞し過ぎていて進歩がない。魔法やスキルなんてものがあって、なんであの地球より文化が進んでねぇんだよ。それはあんたが静観しすぎているからだ。そのせいで今の生活に満足して、より良くしようとは誰も考えねぇ。違うか?」
「だったらこんなことせずにわしに言えば良かっただろ?」
「何言ってるんだ?俺達は何度も言っただろ?あの世界には神の試練がもう少し必要だと。それをあんたは聞かなかった。あんたには言っても無駄だとわかったから行動に移したまでだ」
確かに以前に何度か言われたことはあったが、最近は言ってこないので忘れていた
「そういうことよ。主神様の考えが間違っているとは言わないわ。でも慎重すぎるのよ。あの件がトラウマになっているのはわかるけど、もう少し現実を見てほしいわ」
「ノルンの言う通りだ。以前のあんたが今は静観すべきだというなら、俺達は納得してなかったとしてもおとなしく引き下がったさ。俺達が知らない事情があるんだろうとな。だが、今のあんたは変化を恐れて逃げてるだけだ。だからノルンに協力を求めて、あの世界が崩壊するということにした。あんたがちゃんとあの世界と向き合えるなら、俺達は何もしないし、今まで通り指示には従う。当分はあの世界にはこれ以上干渉しないから、今後どうするか真剣に考えてくれ。干渉しなくても彼が世界に刺激を与えてくれるだろうしな」
逃げているつもりはなかった。だが、言われてみると大事な場面ではリスクの少ない方を選んでいた気がする。
その結果、文明が進まないと言われれば確かにそうかもしれない
「話は終わっただろ?今は帰らせてもらうことにするわ。色々と言わせてもらったが、俺達があんたの部下なのは変わらねぇから何かあれば呼んでくれ」
そう言って2柱とも戻っていった
わしは下界の様子を見ながら考える。
わしが不甲斐ないばかりに、あいつらに苦労をかけていたのかと。
あいつらの言うこともわかる。間違っているとは言えない。
だが、試練だとしてもあれはやりすぎなのではないのだろうか……
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