第85話 買い出し
翌日の朝、僕はダイスくんとラクネと3人で必要な物の相談をしていた。
ちなみに、僕が必要そうな物を昨日考えたら、大体はアイテムボックスに入ってたよと言ったら「訓練だからそういう事じゃない」って言われた。
「アイテムボックスの事を秘密にしたいなら、訓練では冒険者が見てるんだから使えないだろ」とも言われた。
確かにそうだった。
バレないようにアイテムボックスを使うにしても限度があるから、考えて使わないと。
僕は必要な物に食料って書いたけど、ダイスくんのメモには、食料のカテゴリとして保存食(パン、干し肉等)・水と書かれていた。
何も考えずに創造で創った物をアイテムボックスから出そうとしていた僕は考える前提から間違えていたようだ。
「えっと、ごめんね」
僕は謝る
「気にすんな。それより必要な物まとめようぜ」
それぞれが書いてきたメモを見ながら、必要なものと不要なものを分けていく
「多分だが、何を準備をしたかも先生は評価の基準として見ていると思うんだ。だから、量と質どちらもちょうどいいところを見極める必要があるよな?」
ダイスくんは言う
「そうかもしれないね。わざわざ経費をあげるように言ってたし……。いつもなら必要な物は学院側で用意してくれそうだもん」
ラクネも同意見のようだ
「出来るだけ経費を抑えた方がいいってこと?」
僕は2人に聞く
「抑えるのに越した事はないと思うが、難しいな。例えば食事だけど、5日分キッチリと用意するのか、なにかあった時のために少し多めに用意するのかどっちが高評価をもらえるのかわからんな」
「少し多めの方がいいんじゃないの?その分安い食事にするとか?」
僕は思ったことを言う
「普通に考えるならそれでいいと思うんだが、今回は商人を護衛するって想定だろ?訓練の時、馬車に商品が乗ってるのかはわからないが、多めに食事を用意するってことは荷物を増やすってことだからな。出来るだけ荷物は少なくした方がいいと思う」
ダイスくんが言った事に僕は感心する。
「そこまで考えないといけないんだね。そうなると難しいね」
「そんなわけだから、エルクの書いてきた暇つぶし道具は経費としては却下だな。まあ、経費には含めずにアイテムボックスに入れておいてコソッとやる分にはいいと思うが料理はバレるからやめとけ」
「うん、そうするよ」
何か他に考えないといけないな
「あと、1番迷うのはテントだな」
テント?
「なんでテントに迷うの?」
「反省室でもラクネと俺達が一緒の部屋は駄目だって言ってただろ?」
確かに言っていた。フレイの別荘に行った時に、僕は異性として認識されていない事が発覚しているけど……
「そうだね。だったらテント2つ持っていくしかないよね?」
「そうなるんだが、2つ持っていったとしてラクネがテントを1人で使うことになるだろ?それはそれでいいのかとな」
別に1人で1つ使ってもいいんじゃないの?僕達も片方が見張りに出ていたらテント独り占めするわけだし……
「私なら1人でも大丈夫だよ」
「訓練だから大丈夫だろうけど、本当に俺達が護衛任務をするってなったらそうはしないだろう?」
2人が僕の思っている事とは違う観点で話をしているのはわかるけど、それがわからない。
「えっと、ごめんね。なにが問題なの?」
「いや、俺の説明不足だ。今は学生の訓練だから男女分けた方がいいと思うだろ?だが、俺達が冒険者として長年パーティを組んでいたとしたら分けるか?」
「分けないね」
そこは長年の信頼関係があるから、荷物をその為に増やしたりはしないと思う
「だろ?訓練として考えるか、本番として考えるかで答えは変わってくる。それに女の子を野営のテントに1人にするのもどうかと思ってな。護衛対象の商人が実は悪い人だったみたいなこともなくはない話だからな」
「そっか、そうだね。でもそう考えると見張りが1人ってのも危ないんじゃないの?」
「そうなんだよ。3人チームで見張りの事を考えるとどうしてもな。そこは割り切って考えるしかないか?」
「一旦保留にして、とりあえず他のもの買いながら考える?」
「そうだな。そうするか……」
放課後になったので僕達は朝決めたメモを見ながら買い物をしに行く。
今いるのは冒険者ギルドである。
冒険者ギルドで買い物をするのではもちろんない
調査に来たのだ
僕達は貼ってある依頼を見る
「これなんて訓練に近いんじゃない?」
「そうだね。こっちにも似た依頼があるよ」
「2つともそんなに差はないしこのくらいなんだな」
僕達が調べに来たのは護衛依頼の報酬である。
訓練に近い依頼の報酬を見て、経費をどのくらいに抑えるべきかを調べに来た。
報酬は大体金貨2枚程と思われる。
経費が報酬を上回るのは論外だろう。その上で1人1日あたり銀貨10枚は稼ぎたいと思う。そうなると10枚×3人×5日で銀貨150枚である。
経費で使えるのは大銀貨1枚分だね
テントなど再利用出来る物の分は超えてもいいかもしれない。使い捨てではないのだから
僕達は決めた予算に沿って買い物を進める
結局、食料は5日分買う事にした。
理由は行きと帰りの分を用意するけど、行きで必要以上に食料を消費してしまった場合は村で調達すればいいという判断だ。
なら、帰りの食料は初めから村で買えばいいと思ったけど、食料が貴重な村で買うより王都で買った方が安く済むので、帰りの分も王都で揃える。
パンと干し肉をメインにチーズや卵など保存の効く物を買っていく。45食分だ。結構な量になった。
卵って常温でも結構保つらしい。
知らなかった
水は水筒だけ用意して、水魔法で中身は用意する事にした。
後は焼き菓子。これは経費には入れないけど持っていく
甘味は必要だ
テントは迷ったけと2つにした。
1つでも間違いが起こる事はないけと、着替えとかの為にプライベートスペースは必要だと判断した
1人で見張りをする為には、依頼主用テント・僕とダイスくん用・ラクネ用の3つのテントを出来るだけ近くに固めて設置することになるし、ラクネのテントに不埒者が近づけば気づくだろう。
基本的に依頼主を護ることを優先するから、実際にはそこまで気にする事は出来ないかもしれないけど……
それと鈴とロープの案がまさかの採用になった。
実際には鈴と糸に変わったけど。
学生1人で見張りをするのは実際のところ難しいから、何か他の方法で補うのはいいんじゃないかと好評であった
昨日考えた事の全てが無駄でなくて良かったと思う
全部で銀貨75枚分で、予定より25枚超えたけどテントを2つ買ったしいいところだと思う
買った物は一旦預かり、アイテムボックスに入れておく。
アイテムボックスの事は隠さないといけないけど、ラクネとダイスくんは知っているのだから、2人に協力してもらってうまく使おう。
使える物は使わないともったいない
翌日、僕達は買ったものと掛かった金額を紙にまとめて担任の先生に経費として提出した。
先生は特に何も言わずに紙に書かれた額の硬貨をくれた。
結構悩んだけど、これが評価に関わってくるのかは先生からは読み取れなかった
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