第49話 子猫探し

僕は依頼人の女の子の家に急いで向かう


到着すると既に女の子から話は聞き終わっており、家の前でローザ達が待っていた。


「ごめん、遅くなっちゃって」

かなり待たせてしまった


「随分と掛かったわね。なんの話をしていたの?」


「えーと……前の依頼失敗した件について話をしていたんだよ。遺跡調査のやつ」


「そう、まあいいわ。女の子から聞いた話は現地に向かいながら説明するわ」


「ありがとう、お願いね」


「エルク、なんだか香ばしいいい香りがするんだが?」

アメリに言われる。多分焼きそばの匂いだ。


「話の流れで料理してたからね」


ぐぅーー。

アメリのお腹が鳴る


「なんだか腹が減ってきた」


「まだお昼には大分あるわよ?」

確かに昼食にはかなり早い。

そう思うと、ギルドの3人は朝からガッツリと食べてたなぁ……


「エルクのせいだ。食欲をそそる匂いをさせてるエルクがいけない」

アメリは空腹を僕のせいにする。確かに焼けたソースの香りを嗅がせたのは間違ってはないけど……


「こんなので良ければあるよ」


僕はアメリにサンドイッチを渡す。

おにぎりとサンドイッチはアイテムボックスの中に大量にストックしてある。僕が食べたい時に食べれるようにだ。

この世界で米を見てないので、おにぎりは僕専用だけど。


「おお、ありがとう。……うまい!」

とりあえず、これで少しは腹が満たされるだろう


「……2人も食べる?」

サンドイッチを食べるアメリをじっと見ていたので聞く


「私はいらないわ」「ありがとう」


「え?」

フレイは欲しいようだ。ローザはフレイが食べることに驚いる。


僕はフレイにもサンドイッチを渡す。


「……僕も食べようかな。昼食食べるの遅くなるかもしれないしローザも食べたら?」

ローザがサンドイッチを見ているので僕はもう一度確認する。お嬢様だし食事の時間以外に食べるのははしたないとでも思っているのかもしれない。


「……そうね。それなら頂くわ」

やっぱり食べたかったようだ。


僕はローザにもサンドイッチを渡して、僕も食べる。

足りないようだったのでアメリにはもう1つ渡した。


お腹の膨れた僕達は子猫探しを始める


ローザから聞いた話によると、元々女の子は家の中で子猫を飼っていたらしい。

ずっと家の中だというのも可哀想だと思った女の子は親に内緒で少し離れた公園に連れ出したそうだ。

そしてその公園で目を離した隙にいなくなったと……


いなくなったのは3日前で、それから女の子と母親で毎日探しているけどまだ見つかっていない。


今はその公園に向かっている


「子猫の特徴は?」

僕はローザに聞く


「黒と白のメス猫よ。名前はルナ。生まれてから8ヶ月くらいだって言ってたから、子猫といっても大分大きくて動き回れると思うわ。こんな猫よ」

ローザは僕に猫の絵を見せる。


「これは女の子が描いたの?」


「私が描いたのよ。うまく描けてるでしょう?」

僕はフレイとアメリを見る。

2人は視線を逸らした


「そ、そうだね。特徴がわかったよ」

ローザに絵心は無いようだ。白黒の4本足の何かである事しかわからない。


僕はフレイとアメリにコソッと聞く

「ローザは自分の絵が本当に上手だと思ってるの?」


「本気で思ってるわ。だから私達も真実を言えてないの」

フレイが答える


「みんなでコソコソと何話してるのよ?もうすぐ公園に着くわよ」

ローザが僕達を呼ぶ


「はーい。すぐ行くよ」


僕達は公園に着く


「まずは公園の中を手分けして探しましょう」

ローザの指示によって僕達は手分けして子猫を探す


「ルナちゃーん、出ておいで」


僕は名前を呼びながらしばらく探すけど、見つからない


「この公園にはいないようね。いるなら飼い主の女の子が既に見つけてるだろうし」

ローザはもう公園にはいないと結論付ける

僕も同意見だ。公園にいるならばら3日間毎日探しているのだから見つかってもおかしくない。


「近くに猫の餌場があるんじゃないかな?野良猫に餌をあげてる人とか」

フレイの言う通りかもしれない。3日前にいなくなったのだから何も食べていなければかなり空腹だろう。餌を求めて動き回っている可能性は高い


「そうね、近所の人に聞いてみましょうか」


近所の人に聞いてまわった所、猫の溜まり場がある事がわかった。

その人曰く、白黒の猫も昨日いたそうだ


僕達は教えてもらった溜まり場に行く。

そこには数匹猫が寝転がっていた。日当たりが良くて、風もあるので、猫にとって過ごしやすい場所なのかもしれない。

近くには近所の人が置いていったであろうご飯の容器がある。

僕達が近寄ると警戒するが、ご飯の容器に餌を入れたら寄ってきた。

お目当ての迷子猫はいないな。


白黒の猫の目撃情報もあるので、ここでしばらく待っていれば見つかる可能性は高そうだ。


僕達は野良猫と戯れながら時間を潰す


しかし、新しい猫はやってはくるけど、特徴と一致する猫は現れない。白黒の大人の猫はいたので、近所の人が見た猫はこの猫かもしれない。


探せるのは明日までだし、餌場にいないのであれば早く見つけてあげないと危ないかもしれない。

僕は最終手段に出ることにする。


猫といえばコレだ

僕は創造でマタタビを創り、粉末状にする


「エルク、何やってるんだ?」

アメリに聞かれる


「これは猫が寄ってくる実なんだよ。ほら、釣られて寄ってきた」

近くにいた猫がワラワラと僕の方に寄ってくる


粉末にしたマタタビを2つに分けて1つは水に溶かして、もう1つは紙に包む。


3人は興味深そうにマタタビを見ている


「2手に分かれようと思うんだけど、ここで猫が来るのを待っている人と街を練り歩く人。僕はここで待ってるからもう1人誰かここにいて欲しい」


「私がここにいる」

アメリが答えた。


「フレイと街を歩くのはいいけど、それで見つかるの?」


「これを体に付けて歩けば、猫の方から寄ってくると思う」

僕は水に溶かしたマタタビを2人に渡す


「そのようね」

僕の周りで寝転がりながらクネクネしている猫を見て、ローザは答える


「それじゃあ行ってくるわね。1時間くらいしたら戻ってくるわ」

マタタビ水を付けたローザとフレイが溜まり場から出て行く。数匹の猫が2人について行った。

マタタビの効果はすごいな


「私達はどうするんだ?」

アメリに聞かれる


「こっちはこれに火をつけるんだよ」

僕は紙に包んだマタタビに火を付けて筒に入れた。


煙がモクモクと上がり、すぐに猫が集まってきた。

猫は骨抜きになったようになっている


効果が強すぎたかもしれない。

僕は一度火を消して、マタタビの量を減らすことにする。


今度は煙が周りに漂うくらいになった。


「このまま待って、集まってきた猫の中に、特徴に合う猫がいないか確認しようか?」


「あ、ああ」

アメリは猫の惨状に呆然としている


結果、少し待っただけで特徴と一致する子猫が寄ってきた。

これなら、2人に練り歩いてもらう必要はなかったな


迷子猫を捕まえて、ローザとフレイが戻ってくるのを待つ


僕達の周りには30匹くらいの猫が骨抜きになっていた。


僕はマタタビの火を消して、風魔法で煙を霧散させた

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