第13話 ローザの誘い

僕がケーキに口を付けた後にお願いがあると言われた。

これがお嬢様のやり方なのだろうか?

やり方がきたない


「……お願いってなんですか?」


「そんなに警戒しないでよ。嫌なら断ってもいいから」


「断ってもいいの?」


「良くはないけど、強制はしたくないわ」


「わかりました」

嫌なことだったら断ろう


「中等部になるとパーティを組むことになるの。4〜5人で1パーティね。多分もう少ししたら先生から聞かされると思うけど」


「そうなんだ」


「それで、私とパーティを組んでくれないかしら?」


「えっと、理由を聞いてもいいかな?」


「それはあなたと一緒にいることが私の成長に一番繋がると思ったからよ」


「まだ会ったばかりだよね?なんでそう思うの?」


「私、人を見る目は一流のつもりよ。あなた力を隠してるでしょ?」

僕の顔が強張る


「そんなに警戒しないでよ。誰にも話すつもりはないし私の憶測だもの。でもその反応を見る限り本当に隠してるみたいね」


「力を隠してるのは僕だけじゃないと思うよ。クラスにも実力を隠してる子他にもいると思うけど?」


「なんでそう思うの?」

しまった。揚げ足をとられた


「サウス先生がスキルの申告は強制じゃないって言ってたからね、隠してる子もいるんじゃないかって思っただけだよ」


「ふーん、エルクって本当に6歳なの?」

疑われてる


「6歳だよ。もうすぐ7歳だけど」


「そう…なのね」


「それでパーティの件だけど、組んでなにをするの?」

僕は話題を戻すことにする


「ダンジョンに潜ったり、冒険者ギルドで依頼を受けたりいろいろよ。それにパーティ対抗戦もあるわ」

冒険者ギルドで思い出した。僕は登録したんだった


「学校でも依頼を受けるの?」


「受けるわよ。学校の授業として受けるんじゃなくて、冒険者としての実績も学校の評価に加算されるのよ」


「へー、そうなんだ」


「冒険者に興味があるの?」


「僕を学校に推薦した人が冒険者ギルドの人でね、入学前に登録だけされたんだよ」


「え!エルクって冒険者なの?」


「まだ一度も依頼受けてないけどね」


「6歳で試験に受かったって事でしょ?」

試験?そんなのやってないけどな


「試験があるの?なんか紙に名前書いた記憶しかないけど……」


「えっと、推薦した人って誰なの?聞いて良いのかしら?」

別に口止めはされてないからいいか


「カッシュさんって人だよ」


「本当に?あのカッシュ様?」

カッシュ様?え、そんなに偉い人なの?


「カッシュさんって偉い人なの?」


「カッシュ様の事知らないの?」


「冒険者を引退してギルドで事務員やってるんだよね。元Aランクだって言ってたよ」


「間違ってはないけど、多分勘違いしてるわ。カッシュ様は後進の育成の為に最前線から身を引いただけで、今でも一流の冒険者よ」


「そうなんだ。知らなかった」

あれ、でも僕の魔法を破れなくて自滅してたような…。

そうだ、あの時は手加減するって言ってたね


「カッシュ様が推薦したから冒険者の試験が免除されたんだね。スゴイ!」


「そうなのかな」

正直、知らない所で起きた事だから実感が湧かない


「やっぱり私の見る目に狂いはなかったみたいね。それでどうかしら?パーティ組んでくれない?」

特に断る理由は無いけど、どうしようかな…


「他のメンバーは決まってるの?」


「まだよ、何人か候補はあるけど」


「誰か聞いてもいいかな?名前聞いてもわからないかも知れないけど」


「今考えているのは、アメリとフレイかな」


「ごめん、わからない」


「明日、どの子か教えるわ」


「ありがとう。それで、その2人はなんで選んだの?」


「エルクが一緒に組んでくれると仮定して、相性っていうかバランスかな。アメリは前衛が得意なの。剣の腕がスゴイのよ。魔法は使えないけど剣技のスキルを持ってるわ。フレイは火魔法と水魔法が使えるわ。私とエルクは回復と支援も出来るからメインの攻撃魔法使いとして良いと思うの」

色々と考えているみたいだ


「そうなんだね」


「エルクは測定を見てて気になる子はいなかったの?」


「うーん、特には。あ、ダイス君は体力も魔力も上位だったね」

誰が誰なのかよくわかってないからね。ダイス君くらいしか印象に残ってない


「あー、彼ね。そういえば一緒に話してたわね。能力は高いと私も思うけど、何か隠してる気がするのよね。それに身分が違いすぎて近寄り難いわ」


「ダイス君ってそんなに身分が高いの?」


「知らなかったの?だから普通に話してたのね。彼はこの国の王子よ」


「え!?」


「村から来たばかりだし、しょうがないのかな。初等部にも通ってないしね」

色々ともっと常識を学んだ方が良さそうだ


「そうだ!パーティに入ってくれるなら私がエルクに勉強を教えてあげるわ。王都の事とかも教えてあげる」

それは素直にありがたい。別に断る理由もないしいいかな。


「仮でいいなら、パーティ組んでもいいよ。何回かパーティで行動して良さそうなら正式に組むってことなら」


「ありがとう。これからよろしくね」


「よろしく」


「それじゃあ明日、アメリとフレイも誘ってみて、2人とも組んでくれるなら、学校が終わってから冒険者ギルドに行きましょう」


「わかった」


「それじゃあ、また明日ね」


「うん、ご馳走様。おいしかったよ」

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