そして王城にて
第?話
レスリーとアイリーンはその後もあちこちを歩き回る生活を続けていた。彼らが国の中を歩き回っている時、リックは何度目かの国王の誕生日の際に貴族と群衆の前で演説をする。
「この国が食料も潤沢にあり民の生活も良くなってきておるのは過去から余の為に国中を歩き回っては国の為になる提案をし続けている2人の男女の冒険者に寄るところが大きい。彼らは私利私欲に走らず純粋に国の為、民の為に日々この王国内を移動しては様々な提案をしてくれる。それによって開発された農地や鉱山、修理された道や河川、今までに数えきれないほどの偉業を成し遂げてきた彼らの名はレスリーとアイリーンという」
国王陛下の話をじっと聞いている貴族と民衆。
「彼らは今も人がいない山の中や深い森の中を歩いては何か国の為に良くなることがないかと探してくれておる。レスリーは風水術士という自然が読める職業だ。自然と蔑ろにするものは必ずや自然からしっぺ返しを喰らうという。自然と共存しながら国が繁栄する方法を探しては世に提言してくれる立派な男だ。余もこの考え方に全面的に同意しておる。そしてこの国をより良い国にする為の道標となってくれるという意味を込めて余はこれよりレスリーのことを老師と呼ぶことにする」
国王の演説の中でリックがレスリーを老師と呼ぶことにすると言った話はあっという間に国中に広がっていった。そして同時にレスリーとその奥方のアイリーンの今までの偉業が書き物として王家より発行され、それは国中で読まれることとなった。
王都郊外に住み、年の半分近くを旅に出ているレスリーとアイリーン。2人とも30代の半ばにさしかかっていた。常に出歩いている事もあり2人とも健康でそして以前と全く変わっていない様に見える。雰囲気は落ち着いてはおりそれがドラゴンのオーラと相まって重厚な雰囲気を醸し出していた。
リムリック国王は既に国王としての威厳も身につけ、宰相のマイヤーと組んでは国内の課題に積極的に取り組んでいた。
以前は地方をウロウロして王都に戻ると王城に報告をしていた2人だが最近は年に数度しか王城に顔を出していない。リムリック2世が多忙だろうというのは表向きの理由で本当は王都に顔を出すと有名な2人はすぐに住民の注目を浴びてしまうからだ。
「郊外に住んでいて良かったわね」
「全くだよ。これが王都に家があったらと思うと考えるだけでぞっとする」
2人とも有名になんかなりたくないし2人で好きに暮らしていたいと思っていたからあえて王都にも行かずに自宅で日々を過ごしていた。
ある日2人の家の前に馬に乗った騎士が2名やってきた。家の前で馬から降りると玄関に出た2人に丁重に挨拶をして、
「国王陛下がお呼びです。明日の午後2時にお城に来てくれとのことです」
そう言うと再び馬に乗って去っていった騎士達を見ながら
「何かしら?」
「しばらく顔を出してないから来いって話だろう」
「仕事が落ち着いたのかな?であれば行かないとね」
「というか国王陛下の呼び出しを断れる訳がないだろう?」
「それもそうか」
そうして翌日冒険者のいつもの格好で自宅を出ると徒歩で王都に向かう。時間を指定されるのは珍しいので早めに家を出た2人。王都への入城の門もいつの頃からか2人は別の入り口となり、門で待つ事もなく入城できる様になっていた。
聞くと王家からお達しが出ているからだという。2人は最上級の賓客として扱えと王家から指示を受けているらしい。
王都に入ると2人を見かけた市民や冒険者仲間が声をかけてくる。それに応えながら商業区を歩いて奥にある貴族区に近づくと彼らが着く前にゲートが開いて騎士が敬礼をしている中を城を目指す。
そうして顔パスで城の中に入ると騎士が先導する後に続いて王城を歩きいつもの部屋ではない部屋に案内される。そこはいつも国王陛下のリックと会う部屋と同じくらいに豪華な部屋だった。
「こちらでお待ちください」
そう言って部屋を出ていった騎士。
「いつもの部屋で打ち合わせをしているのね」
「きっとそうだろう。今日は俺達が早めに来たからな」
レスリーとアイリーンは2人だけになると部屋をぐるっと見渡し、そして部屋に大きな窓があるのに気づく。ソファに座らずにそのまま窓の方に歩いていく2人。
部屋の窓辺に近づいてバルコニーへと続くガラスがはめ込まれている大きな扉を開けると外から室内に心地よい風が部屋に入ってきた。扉を開けて2人でバルコニーに出るとそこからは王都の街の城壁の外に見える畑や草原、そして遠くの山々が視界にはいってきた。
そうしてしばらくバルコニーから窓の外の景色を見ていた二人の背後から声が聞こえた。
「老師、奥様、そろそろ国王陛下との謁見の時間でございます」
【完】
数十年ぶりに誕生した風水術士、その能力は半端なかった 花屋敷 @Semboku
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