第6話
報告が終わるといつもの様に雑談だ。3人はやはり伝説ではなくて存在していたドラゴンについての質問がメインとなった。大きさはどれくらいだったかとか、卵は見たのかなど。
「卵は見てないな。お腹の中で温めているって言ってたからな」
「なるほど。そしてそこで孵化して子供が空を飛べる様になるまでその岩山の洞窟で過ごしているんだな」
その通り、そう話していたとレスリー。
「それにしてもドラゴンが存在していてその産卵から教育の場がうちの国内にあったとはな。いずれにしても中央部は手をつけない。自然を残したままにするよ」
「頼む」「頼むわよ」
リックの言葉に2人でお願いをすると、
「ところでしばらく休んだらまた旅に出る予定なのかい?」
マイヤーが聞いてきた。彼はリックとレスリーの調査結果を地図にまとめている。今回でほぼ国内の主要箇所は見てきたはずだと理解しているので次はどうするのかと聞く。
「しばらく休んでからまたエルフの森を抜けようかと思っている。あの森がどうなっているのかとエルフの神木の様子も見てみたいからな」
ソファに座っているレスリーが答えると隣に座ってジュースを飲んでいるアイリーンも頷いている。
「なるほど。となるとドーソンの街経由で南下する感じかな?」
「そうなる。ただもう貴族の家には挨拶には行かずにそのまま森に入っていくつもりなんだよ。公爵に伝えることはもう伝えている。まずはそれをしっかりとしてもらった方がいいだろう。次々と提案をしても人手も足りなくなるし迷惑を掛けるだけの気がするんでね」
「そうだな。とりあえずドーソンのジェームズ公爵には今の開発に注力してもらった方がいいだろう」
「リックのお墨付きが得られてよかったよ」
「俺はいつも2人の行動を支持してるぞ」
「ありがとう。それについては分かっているし感謝している」
そうしてレスリーとアイリーンは城をあとにして王都郊外の自宅に戻っていった。騎士に付き添われて2人が部屋から出ていくと部屋に残った3人。しばらくの沈黙の後で
「俺は言葉がないよ」
リックが言うと隣に座っているマリアも、
「アイリーンもレスリーも凄いという言葉じゃあ表現できない程ね。あの2人は国の宝よ」
「マリアの言う通りだ。あの2人のおかげでこの国がどれだけ助かっているか。そしてこれから国をどう言う風に運営していくのが良いのか2人は常に指標を出してくれている」
そうだよなとマイヤーの言葉に頷くリック。
自宅に戻った2人。翌日からは自宅で過ごしながら周辺の森を探索する日々をしばらく続けてから再び旅に出ていった。今度はドーソンの街からエルフの森に顔を出す旅だ。
ドーソンの街の南にある深い森の中を歩いていくが、ドラゴンの証のせいもありほとんど魔獣に絡まれることもなく進んでいき再びエルフの森につくと彼らから熱い歓待を受けた。森に着いた時には村の長のティモナ始め多くのエルフから2人が纏っているオーラについて驚かれ、2人はティモナにだけはドラゴンの話をする。
「なるほど、それで納得じゃ。しかし短時間で龍族と友になるまでわかりあえるとはな。いやはや大したものじゃ」
そしてエルフの神木に挨拶した時には
『また能力を身につけた様だな。それならこの森も草原の様に歩けるだろう』
神木の言葉にその通りだと答え、目の前の大きな木を見て
「枝もしっかり伸びているし付いている葉も大きくで濃い緑だ、しっかりと養分が行き渡っている様で安心したよ」
『お主らのおかけだ』
2人はそのままエルフの村に1ヶ月程留まってはあちこちを散策し聞かれるままに木々や土の状態を説明し、アドバイスを与えていった。
レスリーの風水術もドラゴンの証を得て以来またスキルアップしていた様で前回は気がつかなった点についても今回はしっかりとエルフに説明をしていく。
そしてアイリーンは村にいる間エルフから弓を教わり、お礼に剣術をエルフ達に教えていった。弓術が得意なエルフだが近接攻撃については苦手な者が多く、アイリーンは丁寧に彼らに剣の使い方や体の使い方を指導していった。
1ヶ月ちょっと村に留まった2人はまた来ますとエルフの民にお礼を言って彼らの森を後にして再び深い森をホロまで抜けていく。
そしてホロからレスリー街道を歩いてアイリーン村、ウッドタウン経由でアルフォードの街に行きギルドやオズの雑貨屋に顔を出して挨拶をしてから王都に戻ってきた。今回は1年程の旅となっていた。
その後もアイマスに行ったり時には北の方に行ったりと年の半分以上をアイリーンと2人で旅を続けるレスリー。そうして新しい発見があると王都に戻った時にリックらに報告をしていた。
「レスリーとアイリーンが提案してくれた開発は全て順調でね。食料の生産量は以前より40%以上増えているんだ。それに北の鉄鉱石も本格的な採掘が始まって相当量の鉄が生産される様になってこちらも順調に来ている」
王城の部屋でマイヤーの話を聞いている2人。
「良かったじゃない。国が豊かになれば貧しい人たちが減るしね」
「その通りだよ、アイリーン。生活が豊かになれば犯罪も減るし皆余裕ができる。この国は良い方向に向かっているよ」
アイリーンとリックとのやりとりを聞いているレスリー。リックが国王になってから確かにこの国はさらに良くなったと感じていた。以前も悪くないと思っていたが最近のこの国の成長は素晴らしい。自然と共生しながら人々の暮らしが向上している。流石にリックだと感心していた。
「これもレスリーとアイリーンのおかげだよ」
「いや、以前も言ったけど俺達は気がついたことを言うだけだ。それを実行する方がずっと大変だ。リックやマイヤーやマリアは皆立派だと思うよ」
「そうそう。言っても何もしてくれなかったら意味がないしね」
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