第2話
翌日宿を出た2人は東門を出るとそこから壁沿いを南に歩いていき、正面から右手かけて森が見えてきたところで城壁から離れて草原を森を目指して歩いていく。
途中で止まっては草原の土を見るレスリー。
「ここも悪くない土壌だよ。ただ東程広くない。どうしても開発する必要が出てきたときに開発すればいいか。まずは街の東側からだな」
街の南側に広がっている草原を2日ほど歩くと川が見えその向こうにある森が近づいてきた。2人は河原で野営をすると翌朝川を越えて南の森に入っていく。
「魔獣の気配が濃厚ね」
「そうだな。ランクAか、まぁなんとかなるだろう」
そう言って四方八方に風を飛ばすレスリー、そうして森に入ると早速前方で魔獣を関知する。森に入った時から抜刀していた隣のアイリーンに、
「前方左手にランクAが2体だ。他に気配は感じない」
わかったというとそちらに進んでいく2人。アイリーンが前を歩きその後ろをレスリーが歩く。そうして視界に2体とらえたところで2体の立っている地面から複数の土の槍が飛び出して魔獣の足に突き刺さった。そのときには既に魔獣の前まで来ていたアイリーン、剣を振って動きの止まっている2体の魔獣の首を刎ねて倒す。
「この調子でいきましょう」
「そうしよう」
その後も森の中を見ながらゆっくりと進んでいく2人。相変わらずランクAの魔獣が単体、複数体と徘徊しているが相手に見つかる前に全てこちらから攻撃を仕掛けて危なげなく倒していく。
前人未到の森だけあって森の中には道はなく太い木々に包まれた深い森の地面に生えている低木をかき分けながら進んでいく2人。周囲の木の状態を見ながら森の中を進むために2人の歩みは遅いが当人達は気にしていなかった。
「木々は皆しっかりと成長している。ここは木にとってはいい場所なんだろう」
そう言ってから
「周囲に敵影は無い。アイリーン、あの大木に絡まっている蔦を切ってくれるかい?」
わかったわとアイリンがレスリーが指差している大きな木に向かうとそれに纏わりついている蔦を片手剣で切り倒していく。
「こんな感じからしら?」
アイリーンが切り落とした蔦と蔦が無くなった木を見ていい感じじゃないかと話をしていると、
『助かったよ。鬱陶しくて仕方がなかったんだ』
「おっ、久しぶりに話のできる木と出会えたな」
「うん、私にも聞こえる」
アイリーンが蔦を切り落とした大木が2人に話かけてきた。
『ほう。2人とも言葉が理解できるのか』
頷く2人。
「楽になったかい?」
レスリーが聞くと
『おかげさまでな。それにしても人間か。見るのは久しぶりだ』
「やっぱりここには私たちの様な人間は入ってきてないのね」
大木の言葉を聞いたアイリーンが言う。
『ずっと昔、まだこの森がこれほど多くの木が生えていなかった頃に何度か見たことがあるぞ。もうずっとずっと前の話だ』
そう言ってから
『ところでお前さん達はこの森の奥まで行くつもりなのか?』
「そのつもりだ」
『なるほど。では今日はここで夜を過ごすがよかろう。ここは魔獣とやらが近づいてこない場所になっている。比較的安全だ』
確かにこの周囲は魔素が薄く魔獣の影も見えない。2人は大木の根元で野営の準備を始めた。
「この奥にまだまだずっと深い森が続いているんでしょ?」
食事をしながらアイリーンが大木に顔を向けると、
『深いぞ。そして人間の敵も多い。今までは2本足で立つ魔獣ばかりだが奥にいくと4本足の足の速い大きな魔獣もいる。注意して進むとよかろう』
虎か狼か、あるいはクマも知れない。いずれにしても強さに素早さを持った魔獣が待ち構えているということだ。
「なるほど。事前に教えて貰えて助かったよ。ありがとう」
魔素の少ない場所で夜を過ごし翌日大木に挨拶をしてからさらに奥に進んでいく。森の奥に進むとさらに魔獣の密度があがりランクAの魔獣が絶え間なく2人に攻撃をしてくる。休む間もなく次々と襲いかかってくる魔獣を片手剣で倒していくアイリーン。
「1体1体は大したことないんだけど数が多くてうっとしいわね」
片手剣を縦横無尽に振り回して次々とランクAの魔獣を討伐していくアイリーン。
レスリーは戦闘はアイリーンに任せて森の中の様子を見ていたが数が多いとぼやくアイリーンの言葉を聞くと、その場で杖を持っている腕を突き出して竜巻を作ると周辺にいる魔獣達を竜巻に包みこんでその場で動けなくさせる。
「これでいいだろう。あとはよろしく」
そう言って木の様子や下草の様子、土の状態などをじっくりと観察するレスリー。
「これは楽ね。ありがとう」
アイリーンは竜巻に巻き込まれてその場でフラフラとしているの魔獣に近づいては次々とその首を刎ねていった。そうして魔石を取り出した頃にレスリーが近づいてきて地面に穴を掘るとそこに魔獣を放り込んでいく。
そうして敵をレスリーの風水術で足止めしたのをアイリーンが倒すという先方で森の垢を進み、魔素の少ない場所で野営をしながら南に進んで2週間が経った。
この夜も魔素が少ない野営に適した場所を見つけてそこにテントを張って夕食をとりながら、
「まだ半分も進んでないわね?」
「そうだな。1/3位進んだところかな?疲れたかい?」
アイリーンはその言葉には首を振って
「それは大丈夫。片手剣の追加効果もあるしレスリーの癒しの水でスッキリしてるから」
大木が言った通り奥に入るとフォレストタイガーやフォレストウルフなどの4つ足で大きな魔獣が2人に次々と襲いかかってきていた。一方レスリーの風水術とアイリーンの片手剣のコンビネーションも良くなり2人に襲ってくるランクAの魔獣を倒しながら当初の目的通りに森の中の様子を見ながら確実に進んでいく2人。
「それにしても本当に魔獣が多いわね。普通のパーティなら相当苦労しそう」
「魔力が持たないだろうな。それに魔素の薄い場所がわからないと適切な野営の場所もわからず夜もずっと緊張を強いられる。きつい森だよ」
「それでどうなの?この森は?」
「大木も言っていたけど人間が入ってきていないので自然のままに育っている。土の中の養分も豊富にあるし大木も育ちやすい。いい場所だよ。魔獣が生息しているけどこの森はこのまま残した方がいいな」
「魔獣が森から出ないのなら周辺の街も心配しなくてもいいしね」
「そういうことだ」
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