第3話

 翌日は村を出ると南の山裾に向かう一行。山裾に向かいながら


「これでこの南の斜面でお茶の栽培ができるとなるとこの村は一気に潤うだろうな」


「そしてこの村を訪れる商人が触れると街道沿いの村も発展するだろう」


 リックとマイヤーは歩きながらそんな話をしている。レスリーは途中の草原の様子を見ながら歩いていき、村を出て30分ほどで山裾に着いた。そこは低木が生えている場所で高い木々はこのあたりにはない。


「なるほど、あの大木が言った通りだ。この斜面は土壌がすごく良い。日当たりも良いしこれならお茶も育てられるし果樹の木を植えても大丈夫だ」


「どうする?せっかくきたからレスリーの言う範囲で邪魔な木を削っておこうか」


 じっと周囲を見ていたレスリーはリックに顔を向けると


「大丈夫だ。邪魔になる木を倒しておこう」


 そう言って切るべきエリアの周囲を土の壁を作って区分する。


「この内側なら大丈夫だよ。倒した木は土の壁の外側に立てて簡易の柵にしたら良いだろう」

 

 そうして作業が始まった。マリアが全員に強化魔法をかけるとリックとアイリーンは剣で木々を倒していく。マイヤーも精霊魔法で木に傷をつけてから倒していく、レスリーは風の刃で次々と低木を切りその低木を風に乗せて周囲に運んではそこに低木を刺して簡易の柵を作っていく。


 丸1日かけると2/3ほどのエリアの木が無くなった。


 そうして村に戻ると村長に事情を説明すると翌日は村人が総出で南の斜面にやってきて全員で残りの低木を切り落とす。そうして切られた低木をレスリーが風水術で運んで周囲に低木を植えて柵の様にしていくのを感心した目で見ている。


 全ての木々がなくなると杖を前に突き出して柵の中の土を整地していくレスリー。こうなると他のメンバーはやることがなくなる。みるみるうちに柵の中が綺麗に整地されると、


「この柵の中だとお茶でも果実の樹でもどちらを植えても上手くいくでしょう。どうしますか?」


 昨日村長に話をしていたせいか村人の方針は決まっていた様で半分を果樹園にそして半分をお茶畑にしたいという。


 レスリーはまずお茶畑を作る。少し土を盛り上げていき綺麗に作り上げると村人が持っていたお茶の茶樹を丁寧に植えていく。


 その作業は村人に任せて今度は果樹園のエリアに行くと地面にいくつも印をつけていくレスリー。そうして


「この印をつけたところ以外に果樹を植えない様に。たくさん植えるとお互いの果樹が養分を取り合って美味しい実ができなくなります。この印をつけたところに植えると丁度いい感じになりますから」


 なるほどと感心する村人。そうして村人が持っている種やレスリーが持ってきた果樹の苗をそこに植えていった。アイリーンも同じ様に果樹の苗を印をつけた場所に植えていく。


「レスリーとアイリーンは果樹の苗を持っていたのか」


 袋から取り出した苗を見てびっくりするリック。


「アルフォードでもしかしたらと思ってアイリーンと2人で街を歩いた時に買ってたんだよ。役に立ってよかったよ」


 隣でアイリーンもしてやったりの表情だ。そうして果樹の苗を植え終わると全体を見て


「昨日のタケノコの竹林、そしてこの果樹園、茶畑、どちらも魔素が非常に薄い場所なので魔獣はまずやってこないと思う。ここなら安心して育てられますよ」


 その言葉に礼を言う村人達。夕刻に村に戻ると村人から改めてお礼を言われ夕食には採れたてのタケノコ料理を振る舞ってくれた。


「これで村が潤えば人も増えて賑やかになります。本当にありがとうございました」


 村長に礼を言われると


「これで村が賑やかになるといいですね」


 マリアが言うと他のメンバーもそうそうと頷いた。



 そうして翌日メンバーは最後のエリアである村の西に出向いていく。ここは大木からの情報もないので手探りだ。


 村を出て川を渡ろうにも橋がなかったので浅い川の中に足を入れて川を渡ると草原の先に森が見えてきた。森の中に足を踏み入れると鬱蒼とした森で高い木々が大きな枝を広げており薄暗い。


「少し魔素が濃くなってきている」


 レスリーがそう言って渦巻を四方に飛ばして森の中を進んでいくと


「前方に魔獣2体、ランクはBだ」


 そうして見えてきた魔獣をアイリーンが片手剣で一閃すると同時に2体の首を刎ねた。


「凄いな」


 思わず声を出すマイヤー。


「切れ味が違うのよ。2体でもすっと切れる感じ。この片手剣想像以上よ」


「よかったじゃないか」


「リック、ありがとうね」


 もともと剣の才能があるアイリーン、それが装備と武器で強化されるとさらに能力が上がっているのがよく分かる。その後も森の中を歩きながら遭遇するランクBの魔獣を倒しながら探索をしていく。


「ここはこのままにしておいた方が良さそうだ。幸いに魔獣はランクBばかりでこの森から出る事はないだろう。村の人にはこの森には近づかない様に言っておけば大丈夫だろう」


 そうして夕刻に村に戻ってきたメンバーは村長に西の村の状況を説明する。


「わかりました。西に流れている川の向こうの森には行かない様に徹底させましょう。それにしてもあなた方が来て見て回ってくれたおかげで我々も生きていく希望が持てました。本当にありがとうございました」


 村長からもう一度お礼を言われそうして村人の歓待を受けたメンバーは旅館でゆっくりと体を休めた翌日、村人総出の見送りの中最南端の村を後にした。


「2年もしたらこの村も有名になるんじゃないか?」


「そうなるだろう。タケノコとお茶や果実、商人が買い付けて宣伝してくれたら村も発展しそうだ」


 街道を歩きながらそんな話をし、街道付近の森や草原を探索しながら1ヶ月経って無事にアルフォードの街に戻ってきた。

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