第2話

 翌日も森の中を進んでいくがレスリーが気になる場所があると止まってはそこでしばらく時間を使ってまた進むというのんびりとした移動だった。途中で出会う魔獣は4人、ときには5人で討伐し、森の中にあるちょっとした広場の様な場所ではレスリーが木々を飛ばしてそれを受け止めたり、木刀で弾いたりする訓練をアイリーンとリックが交互にする。


「これはいい鍛錬になるな。四方八方から来るのを交わすか、それとも叩き落とすか瞬時に判断しないといけない」


 タオルで汗を拭きながらリック言う。その視線の先ではアイリーンが同じ様にレスリーが飛ばしてくる小枝を木刀で次から次に弾き飛ばしている。


「よくなってるじゃないの、アイリーン」


「ええ。自分でも体と剣がスムーズに動けてるのがわかる」


 小枝は2つ、3つと不規則に複数がアイリーンを目指して飛んでいくがそれらを見事に弾き、そして交わしていく。


 そしてアイリーンの鍛錬が終わるとその場で休憩をする5人。


「レスリーが飛ばしてくる小枝っていやらしいのよね、真っ直ぐ来ないのもあるしさ」


「それはそれで俺の訓練になってるからさ。でもそう言いながら全ての小枝を綺麗に弾き飛ばしてたじゃないか」


「この訓練って剣や盾以外に体の使い方にもすごくいい訓練になるよ。毎日続けてくれ」


「おっけーだ」


 マイヤーとマリアは他の3人の訓練中は周囲を警戒しながらも鍛錬を見ていた。マリアは主にアイリーンとリックに視線を送っており、マイヤーは主にレスリーに視線を送っていた。


「アイリーンもリックもこの訓練を続けたらまた強くなれそうね」


 その言葉にそうなんだよ頷く2人、マイヤーはレスリーに


「それにしてもレスリーは風水術をうまく使いこなしてるな」


「以前よりは慣れてきたというか、少しずつスキルが上がってる感じかな。リックとアイリーン相手のこの訓練、俺にとっても良い訓練になってるんだよ」



 魔獣を倒し、木々や川、沼の様子を見、鍛錬をしながら森の中を歩いて14日目に森から街道に出てきた。ラウダーの周辺は既に見ているからと久しぶりに街道に出てきた一行。ここからラウダーの街はすぐだ。


 そうして翌日ラウダーの街に入ったパーティはそのままギルドに顔を出す。


「よぉ、レスリー久しぶり」


「元気にしてたのか?」


 ギルドに入るとレスリーを知っている冒険者たちから声がかかる。それに軽く手をあげて答えるレスリー。リックがカウンターで受付を通してギルマスに面談を求め、そのまま全員でギルドの奥にあるギルマスの執務室に入っていった。


 ギルマスのフランツは緊張していた。事前にアイマスのギルマスからリックら一行がラウダーに寄ってから辺境領のアルフォードを目指して向かう旨の連絡が来ていた。将来の国王陛下にどう接するか緊張していたフランツは部屋に一行が入ってきてその中にレスリーを見つけると思わず、


「久しぶりだな、レスリー」


「久しぶり。色々あってリックのパーティと一緒に行動している」


 レスリーがそういうとリックがギルマスに手を伸ばし


「アイマス所属の冒険者のリック。レスリーと知り合って一緒に行動している。こちらの3人は元々同じパーティのメンバーだ。ここには2、3日しかいないけどよろしく」


 フランツは差し出された手を握り返すと他のメンバーをギルマスに紹介していく。紹介されたマリア、マイヤー、アイリーンがよろしくとギルマスに挨拶する。その紹介の仕方もいわゆる普通の冒険者と全く同じだ。


「ラウダーのギルドマスターをしているフランツだ。ゆっくりしていってくれ」


 もっと格式ばった挨拶をしてくるのかと構えていたらいわゆる冒険者の挨拶だったので拍子抜けすると同時にレポートに書いてあった通りにフランクに接して良いというのを思い出した。肩の力が抜けたギルマス、


 とは言え流石に初対面のリックに話かけるのは緊張するので


「レスリー、風水術の修行はどうだい?」


「なんとかね。毎日が勉強だよ」


「なるほど。それでこれから辺境領に行くんだって?」


「ああ、以前も言った通りに国中を廻ろうと思ってね。ここにいるメンバーと一緒に行動することにしたんだよ」


 レスリーがそういうとリックが、


「レスリーの風水術は素晴らしいよ。もちろん戦闘能力も高い。国中を巡って行くには彼の能力は絶対い必要だからね」


 アイマスのギルドから出ているレポートの通りだとフランツは話を聞きながら思っていた。そのレポートには時期国王となるリックがレスリーの能力を高く評価しており将来の国政に欠かせない人物だと考えていると。


 もちろん、当のレスリーはそこまで買ってくれているとは思っていなかったが。

 リックの話をきいたギルマスは全員の顔を見ると、


「リックもみんなもこの街でしっかりと疲れを取ってから向かってくれよな」


 そうしてギルマスとの挨拶が終わリックらが部屋を出て行くと思わずソファに座っていた足を伸ばして大きな息を吐いた。



「よう久しぶり」


 ギルマスの部屋を出て受付に戻るとこの街のAランクの冒険者のレオポルトがレスリーに声をかけてきた。


「久しぶり、ちょうどよかった。紹介するよ」


 そう言ってレオポルトと一緒にいたメンバーのケルビン、スージー、ミユをリックらに紹介し、


「んでこっちはアイマスのAランクパーティのリックとマリア、マイヤーとアイリーンだ」


 お互いに挨拶を交わすと皆で酒場のテーブルに座る。どちらもAランクのパーティでお互いの街の情報交換をしてから、ケルビンが


「それにしてもレスリーがパーティに入るなんてな。ずっとソロで国を巡るのかと思ってたぜ」


 そういうとリックが、


「こっちもダンジョンには飽きたタイミングだったんでね。そろそろ違う街に修行に行こうかとメンバーと話してたときにレスリーと会ってさ。彼が国中をうろうろする予定だっていうんでじゃあ一緒に行こうって話になったんだよ」


 リックの話を聞いてレオポルトがそれだったら俺達が先にパーティに誘っときゃよかったなと笑いながら言ったあとで真面目な顔になって


「まぁレスリーがいりゃあ戦闘力は間違いなく上がるからな。この街でもソロでランクAをバンバン倒しまくってたし」


 その言葉に頷くレオポルトのパーティメンバーとリックのメンバー。ケルビンも


「こいつが初めてこの街に来てギルドの鍛錬場でいきなり地面から土の槍を突き出してきた時には皆びっくりしたもんさ。それ以来誰も風水術士のレスリーには手をださなかった。ありゃインパクトあったぜ」


 ラウダーのAランク冒険者達が話をしているのを聞きながらリックはレスリーが本当にいい奴なんだと自分の見る目が間違っていなかったことに満足していた。同じ様に聞いていたマイヤーもレスリーをパーティに入れてよかったと思っていた。この街の冒険者が彼のことを悪く言わない。むしろ好意的な奴が多い。


「まぁ成り行きでリックのパーティに入ったって感じだ。こっちがアイマスからアルフォードに行くつもりだって言ったらリックらも同じことを考えていたみたいだったし」


「で、いつ南に行くんだい?」


 その質問にはリックが


「2、3日したら行こうかと思ってる。レスリーと行くから森の中を歩きながらのんびりと移動するつもりさ」


「なるほど」


 納得するレオポルト達。その後はギルドが紹介してくれた宿に部屋を取った5人。マリアの知り合いもこの街にいなくもないが、2、3日だけの滞在だしいいだろうというリックの言葉で屋敷や一軒家ではなく宿に部屋を取った。



 そうして3日目の朝、一行はギルマスに挨拶をしてからラウダーの街を出て一路南のアルフォードを目指して歩きだした。

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