第2話
そうしてレスリーは森で出会ったリックのパーティと一緒に森の中を進みながら周囲の探索を続けていくこととなった。
常に小さな渦巻きを四方八方に飛ばしているレスリー。
「左前方500メートルに魔獣が2体いる」
そう告げるとすぐにパーティメンバーが戦闘態勢に入って魔獣を討伐していく。彼らの手際は良くてナイトのリックが挑発をして魔獣のターゲットになるとその周囲から戦士と精霊士が物理、魔法の両方で倒していくが無駄がなく討伐の時間が短い。相当の手慣れだと見ているレスリー。
「レスリーの気配感知があると大助かりだよ」
「ほんとね」
リックとマリアの言葉に軽く手を挙げて応えるレスリー。
そうして森の中を進み、時折レスリーが立ち止まっては木に寄生している蔦や蔓を片手剣で切り、森の中に川があるとその水を手に掬って水の状態を見たりする。
「ゆっくりと観察してくれて構わないから」
「ありがとう」
レスリーが立ち止まっている間、他のメンバーはその近くに座って休憩をしていた。
蔦や蔓を切るのはリックやアイリーンも手伝うが、土を見たり水を見たりする時はレスリー以外の4人にはすることがなくて座りながら見るともなくレスリーを見ている。
「風水術士か。いままでの冒険者の概念を覆すジョブだな」
少し離れた場所でしゃがみ込んでいるレスリーに顔を向けながらリックが言うと、マイヤーが頷き
「昔は自然と対話ができる人が多くいた。そんな人たちは風水術士となって国中を歩き回っては自然を取り戻す仕事をしていたと読んだ文献には書いてあった」
「自然を取り戻す仕事って?」
アイリーンが澄んだ綺麗な黒い目をマイヤーに向けると、
「汚れている川を綺麗にしたり、今レスリーがしている様に何百年も生き続けている大木に寄生している他の植物を切り倒して大木の寿命を伸ばしたり、土壌を改良して作物が育ちやすくしたりということだよ」
「流石に物知りね」
マリアが感心して言う。
「自然と対話できるから自然の力を借りて魔獣を討伐できるんだな」
「その通りだ。おそらくレスリーはまだ俺達に見せていないが色んなスキルを持っていると思う。そしてソロでランクSを倒せるなんてよっぽど風水術を極めていないとできないはずだ。ただの風水術士じゃ無理だろう。彼は相当出来ると思うよ」
マイヤーの言葉に頷く3人。
しばらくして待たせて悪かったとレスリーが近づいてくると再び森の中を進んでいく5人。前方にランクAが4体いるとレスリーが言うと即座にマイヤーが
「レスリー、風水術でやってみてくれるかい?フォローはするからさ」
「わかった」
自分の力量を試されているなと感じたレスリーは他の4人の前に出るとランクAが4体いる方に近づいていく。
レスリーに気づいた魔獣4体が体をこちらに向けた時、魔獣がいる地面から土の槍が数十本飛び出してあっという間に4体の魔獣を串刺しにして絶命させた。呆然とそれを見ていた4人。
「何あれ、凄い」
「想像以上だ」
「ランクA4体を瞬殺か」
「無敵じゃない」
4人が口々に言う中、レスリーは倒した魔獣から魔石を取り出すと地面を凹ませてそこに魔獣を入れて土を被せた。そうしてから4人に振り返ると、
「地上だと土や岩や風、それに倒木や木の葉や枝と使える武器は多いからな」
「しかも魔法じゃないから魔力は使わないんだよな」
「マイヤーの言う通り。風水術って自然界にある力を借りているだけさ。こっちは元々魔力が多くないから助かるよ」
その後も森の中を探索している。日が暮れかける前に野営の場所を探していると
「この場所がいいと思う」
レスリーが言う。そこは森の中にある大きな大木の根元で野営の場所としては悪くないが
「どうしてここがいいんだい?岩場の近くとかでもいいんじゃないのか?」
リックがレスリーに聞くと、
「この辺りは魔物が来ない場所みたいだ」
「えっ!どうしてわかるの、そんなこと」
前を歩いているアイリーンが振り返って聞いてくる。他の3人も同様に振り返ると最後尾を歩いていたレスリーを見る。
「魔素って知ってだろう? 魔素が濃い場所は魔獣がいて、その魔素濃ければ濃いほどそこにいる魔獣が強くなるって」
レスリーの言葉に頷く4人。
「この森はもちろん魔素がある。だから魔獣がいるんだけど、どう言うわけかこの大木の周辺だけは極端に魔素が薄いんだ」
「レスリー、魔素まで見えてるの?」
「見えているわけじゃない。なんと言うか感覚? あっ薄いって何故かわかるんだ」
そうして立っている大きな大木を見上げて
「この大木から出ている精気が強いからかもしれないな」
リックを始めパーティメンバーはレスリーと出会ってから驚かされてばかりだ。一体目の前にいるこの男はどんな能力を持っているのだろうか。
「この大木はレスリーと会話ができるの?」
野営の場所を決めて夕食の準備をしている時にマリアが聞いてきた。
「いや、会話はできない。できないけど強い精気が溢れ出ているのは感じられる。強い木だよ」
そうして魔獣の攻撃のリスクが減るならとレスリーが勧めた場所で野営をするメンバー。いくら魔素が薄いといっても夜は交代で見張りに立つ。そうしてリックとマイヤーの二人が見張りをしている時に、
「レスリーの能力には毎日驚かされるな」
「ああ。魔素の濃度まで読み切れる奴なんて聞いたことがないぞ」
マイヤーはそう言うと続けて、
「風水術士というくくりの中で評価をしてはいけない人物かもしれん。底が見えない」
リックも
「まったくだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます