第四章 河童の河太郎


夜になり、白いワンピースに、サンダルを履いた夏海は、見世物小屋に来ていた。


小屋の前には、沢山の人が並んでいる。


小屋の入口で、受付をしていた白狐は、夏海の姿を見つけ、番台の上から、ヒョイと飛び降り、夏海の側に行く。


「夏海、こっち!」


夏海の手を引き、小屋の中に入れ、白狐は、舞台の前の席のど真ん中に、彼女を座らせる。


「えっ?いいの?」


「特別席だよ。」


片目を閉じ、白狐は、言うと、再び、番台へと向かう。


夏海は、ドキドキする気持ちで、ショーの始まりを待っていた。



ショーが始まった。


火を吐く男。一本足の傘。犬を操る女…。


『 凄い!凄いわ!』


感動して、ずっと拍手をしている夏海。


「さぁー、続きましては、蛇を操る女、蛇美ちゃんだよー!」


マイク放送が響き渡り、舞台袖から、蛇美が大蛇を首に巻き、出てきた。


軽く会釈をした蛇美は、夏海の姿を見つけ、眉を寄せたが、すぐに微笑み、こう言った。


「今宵は、ここにいらっしゃるお客様に、少しお手伝いして頂きましょう。」


グルリと客席を見渡し、パッと夏海に視線を向けると、蛇美は、にっこりと笑う。


「そこの可愛い、お嬢さん。さぁ、舞台の上へ。」


「えっ?あたし…?」


自分を指差し、驚いた顔をした夏海に、手を伸ばし、蛇美は、優しく頷く。

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