第113話 ハウス栽培

 会議をした翌日。

 雪が降りしきる中、俺達は農地に繋がるポータルの前に立つ。

 これから冬でも農業が続けられるように、とある物を作りに行くのだ。


「グルル。で、何故私を誘うのだ」


 とデュパはいつものように文句を言ってくる。

 いやさ、お前の仕事は順調じゃん。

 時間はいくらでも作れるだろ?


「デュパ君、仕事という概念を変えねばなりません。もう君は部下を導く立場なのです。上司が率先して仕事をするのは良い職場とは言えないんだぞ」

「私は魚を触っているのが好きなのだ。別に良いではないか」


「ははは、まぁいいじゃないの。養殖は冬でも出来るんだからさ。困ってる仲間を助けるのも村民としての義務だろ?」

「グルル。それは確かにな。ならば付き合おう」


 それでは改めて。

 デュパと妻達と共にポータルを潜る。

 すると一瞬で農地に到着した。


「村長、待ってたよ!」


 ラミアおばちゃんことディースが出迎えてくれた。

 彼女の後ろには数百人の農業担当の村民も控えている。

 みんな先にポータル出勤してくれたみたいだな。

 肩に雪が積もっている村民もいる。

 いつから待っていたのだろうか?


「ついさっき来たばかりさ」

「ならいいんだが。それじゃ早速始めようか。材料を用意する。ディースは割り振りを決めてくれ」


 今回用意するのは大量の竹、大きめな貯水槽、モース硬度変更を利用し産み出した石英だ。

 他には石灰石と大量の灰だな。


 何をするのかは事前に伝えている。

 ディースは村民達にテキパキと指示をする。

 

「半分は竹の節を抜いてから繋げるんだ! 残りは石英を砕いておくれ!」

「はいよ!」

「任せときな!」


 村民達は勇んで作業に取りかかる。

 ここは任せて大丈夫そうだな。

 

「私達は何をしますか?」

「リリと一緒にガラスの製造を頼むよ。炉は作っておくからさ」


 まぁ炉って言っても石壁を利用しただけの簡素なものだけどね。

 リディア達は俺の依頼を受けガラス作りに取りかかる。


 俺はデュパを連れて貯水槽を作ることにした。

 

「グルル、要は温水暖房と同じことをするのだな?」

「そういうこと。それじゃ俺は水路を繋げてくるから頑張ってくれよ」


 貯水槽の中にはギッチリ土が入ってるからな。

 綺麗に掘っておいてくれよ。

 

 村民達、リディア達の仕事は順調に進み昼休みの時間の前にはほとんどの作業が終わってしまった。

 貯水槽はまだ半分といったところだな。


「グルル、仕方ないだろ。土が凍っているのだ。腕力は村に住むようになって強くなったようだが限界はあるぞ」

「だな。一度休憩にしよう。午後には一気に仕事を終わらせる」


 ポータルが出来たおかげで村民達は昼休みは村に気軽に戻れるようになった。

 ぞろぞろとポータルを潜り、家に戻ったり食堂に向かい各々昼食をとるのだ。


「村長、あんたも行くかい?」

「いや、俺達はここで待ってるよ。弁当も持ってきたしさ。作業小屋を借りるよ」


 ディースと一旦別れて、俺達は農具などをしまう小屋に向かう。

 一応休憩所の機能もあるので釜戸に火をつける。

 寒いので芋煮を作ることにした。

 材料は里芋に近い芋と猪肉、キノコにコンニャクだ。

 味付けは醤油と酒だ。日本では地域によって味付けに差があるようだが、俺はこの味付けが一番好きだな。


 気温は寒いがこういった日の芋煮は余計に美味く感じるな。


「ふー、美味しいです」

「素朴で優しい味ですね」

「お代わりを頂きます」

「シャニねえ、それ6杯目だよね?」


 お腹が満足したところでリディア達はココアを淹れて昼休みが終わるまで話すことにしたようだ。

 キャアキャアと楽しげに会話をしているのだが、基本的な内容は俺とのエッチについてだ。


「ライトったらすごかったんだよ。私の腰を持ってね。いっぱいペロペロされちゃった。もう頭が真っ白になっちゃって」

「分かるー。あれされたらすぐに負けちゃうよね」

「ライト様のってなんであんなに美味しいのでしょう?」

「一日に一回は飲みたいものです」


 何をペロペロされたのか、何を飲みたいのかは想像して頂きたい。


「グルル、お前はこの世界に来る前は男娼だったのか?」

「ははは、違うよ。ただのエロいサラリーマンだ。ほら、少し早いが先に仕事に戻ろうぜ」


 まだ貯水槽が出来上がってないからな。

 二人で貯水槽の中の土を掘り出すことにした。


 そしてようやく土を全て除去する頃、村民達が午後の仕事に戻ってきた。


「よし! 午後もキリキリ働くんだよ!」

「「「おー!」」」


 ディースの指示で村民達は仕事に取りかかる。

 それでは俺も次の作業に移ろう。

 これは俺にしか出来ないことだからな。

 

 畑の上に立ち、10×20m程の囲いを作る。

 壁の素材は竹でいい。

 万が一倒壊したとしても被害を最小限に抑えられるからだ。


「よーし、これでいいぞー。みんな頼めるか?」

「はーい!」


 村民達は壁に登り竹の棒を組んでいく。

 これは屋根代わりだな。

 その間にリディア達が作ったガラスをはめていくのだ。


 要はビニールハウスだな。

 生憎ビニールは作れないのでガラスで代用してるけど。この場合は温室って言うべきかな?

 今回建てた温室は全部で10棟。

 今後も増やしていくが今回はこんなものだろう。


 最後に貯水槽に溜まった水をいつものように摩擦熱で沸かす。

 するとお湯が竹筒を通り、温室内部の温度を上昇させていく。

 冬でも晴れる日はあるし、日光は取り込めるはずだ。

 そして温室内の温度は上がり続け、額に汗をかく村民が出てくるほど温まった。


「すごいね、これなら作物も育つはずだよ!」

「あぁ。でもまだ温室は少ないからな。しばらくは数を増やしていくさ」


 試しにミンゴとナババを植えてから今日の仕事を終える。

 そしてその翌日、温室を訪ねると中には丸々と育ったミンゴとナババが実をつけていた。


 ふふ、これなら冬の間でも農業は出来そうだな。


 こうして新たに発生した食糧問題は解決するのだった。



◇◆◇



☆次の大規模襲撃スタンピードまで残り85日。


☆総配偶者満足度:1,064,002/10,000,000


☆総村民満足:6,560,682/100,000,000

・総村民数:3,042人


☆現在のラベレ村

・各敷地はオリハルコンの壁で囲み、ポータルでの移動が可能となっている。

・居住区:500,000㎡

・農地:500,000㎡

・養殖場:500,000㎡

・牧草地:500,000㎡

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