第32話 二回目の満月
――ピコーンッ
【村民満足度が上がりました。現在の村民満足度は40/50です】
おぉ、今日も村民満足度が上がったぞ。
最近良く上がるな。アーニャが来てから満足度が毎日のように上がる。
特に彼女が喜ぶことはしていないと思うのだが。
今しがたエルフ達と一緒に敷地内に櫓を作ってみた。
竹壁を利用した竹を組み、小屋の屋根より高く、そして見晴らしもいい。
現在弓を使えるエルフはリディアを含め四人なので櫓も四つ作った。
これで全方位の襲撃をカバー出来る。
それとは別に食堂なんかも作ってみた。
先日助けたエルフが石窯を作る職人さんだったのだ。
「わー、すごいですね!」
「お見事です、ライト様」
リディアとアーニャが戻ってきた。
なんか楽しそうに笑ってるな。
良いことでもあったのだろうか?
「お帰り。リディアも後で仕上がりを見てくれ」
「はい!」
「では私は洗濯物を干してきますね」
実はアーニャのために物干し竿も作っておいた。
櫓同士に竹を差しただけなんだけどね。
それでも全員分の洗濯物が一度に干せる。
その後、皆で昼食となるが、何故かアーニャがソワソワしていた。
俺にチラチラと視線を送るんだが、一体どうした?
「パンくずでもついてるのか?」
「い、いえ、失礼しました! 食べ終わった食器を片付けてきますね!」
とアーニャは手慣れた様子で空いた食器を回収する。
シュルシュルと蛇の尻尾を這わせ、食堂から出ていった。
「どうしたんだ?」
「ふふ、分かりません」
とリディアは言うが、きっと何かを知ってるんだろうな。
まぁ、こういった時は深くは追及すまい。
片付けを終えたアーニャが戻り、村民全員が食堂でまったりする。
だがあまり俺達に時間はない。
そう、明日の夜は満月なのだ。
――ガタッ
俺は立ち上がり、皆に話し始める。
「そのまま聞いてくれ。分かっているとは思うが明日は満月だ。異形の大群が襲ってくるだろう。新しい拠点を見つけることは出来たが、先日の雨のせいで地面はまだぬかるんでいる」
ここはアーニャが教えてくれた比較的地盤の強い土地ではある。
窪地に比べ大分地面は乾いてきたが、それでも完全な状態とは言い難い。
こちらの人数が増えたとはいえ、今まで通りの戦い方では壁を突破されてしまうかもしれない。
だから戦い方を変える。
ただの守りではなく、【攻めの守り】に切り替える。
「まだ一日時間がある。今夜の襲撃が終わり次第皆に手伝ってもらいたいことがある」
「もちろんです。ライト様、何をすればいいのですか?」
アーニャは俺にお茶のお代わりを淹れつつ聞いてきた。
俺が考えていることを説明する。
「竹を利用した罠を仕掛ける。まずはパンジスティックだ」
パンジスティックとは竹の先端を尖らせたものだ。
地面に生えた竹を使ったお手軽トラップ。
単純な罠ではあるが、敵の移動を制限出来るだけではなく、もしパンジスティックを踏み抜いたとしたら足の甲に穴が空くだろうし、もし転んだとしたら……。
「串刺しですね……」
「そういうこと。だがパンジスティックはあくまでカモフラージュだ。ちょっと外に出てくれ。見てもらいたいものがあるんだ」
リディア達が洗濯に行っている間に作ったものがある。
太めの竹を裂いてから穴を開け、今度は細い尖らせた竹を埋め込んだものだ。
――ギリギリ……
それをしならせながらパンジスティックの間に差し込む。
「そ、それは?」
「危ないから離れててくれ。この罠に足をかけたとする……」
拾った枝で仕掛けた罠に触れてみる。
竹は大きな二つの特徴がある。
大きく曲げても折れない靱性を持ち、さらに力を除くと元に戻る弾性を備えている。
つまり支えを失った竹は……。
――ビュンッ!
棘は異形の首から上に当たるように調整してある。
これはブービートラップだ。
ゲリラ戦でよく使われる火薬を用いないトラップだな。
「この罠を可能な限り仕掛ける。今夜は徹夜になるぞ。今の内に休んでおくんだ」
「はい! ふふ、ライトさんってやっぱりすごいです。壁を作れるだけじゃなくて何でも出来るんですね」
ははは、何でもは出来ないよ。
これだって戦争映画とかで見た知識だしね。
だがこの二つのトラップがあれば戦闘を優位に進められるはずだ。
「あ、あの……。私は罠作り以外で何か出来ることはあるでしょうか?」
と自信なさげにアーニャが言う。
彼女は魔法が使えるわけではなく、弓も使えない。
使えたとしても蛇の下半身を持っているので、梯子を昇るのは一苦労だろう。
だが彼女は充分に戦力となる。
以前アーニャのステータスを調べてみたが、その力には驚かされた。
名前:アーニャ
年齢:???
種族:ラミア(村民)
力:22 魔力:0
能力:無し
村民満足度:40/50
エルフのように弓は使えず魔法も使えない。
だが力の値が高いのだ。
俺の力は25だからそれほど差が無いのだ。
ラミアは蛇の筋肉を持つ。
筋肉の塊のような尾の一撃や、人より明らかに速い助走をつけた一撃ならば、竹槍であっても必殺の一撃となるだろう。
おそらく数値以上の力を持っているはずだ。
「アーニャは拠点の中から異形を突きまくってくれ。もし壁が突破されたらその立派な尻尾で異形をひっぱたいてやれ。それで俺を守ってくれよな?」
「え? は、はい! ライト様は私が守ります!」
「あーん、それ、私の役目なのにー」
なんてリディアは言うがどことなく嬉しそうだ。
そして今夜の襲撃を終え、俺達は数百のブービートラップを仕掛ける。
そしてまた夜が来て……。
「満月だな……」
夜空を赤く不気味に染め上げる満月が昇る。
間も無く異形の大群が襲ってくる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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