ドッペルゲンガー製造実験計画書③-2
その人物は、強化硝子の鍵付き戸棚に仕舞われていた計画案の一束を引き抜いた。
『脳内癒着させた情動操作用極小チップの無効化実験計画案 実験立案者:桃浦 菫』
退屈そうにページを繰って、一度閉じた。それから裏表紙を一枚めくったそこに、走り書きがあった。
おそらくこの計画案を作成した者によるメモだろう。
本来は几帳面なのだろう、角張ったメモの文字。だが、まるで人目をかいくぐって急ぎ書き足したように少し崩れていた。
『本研究所及び協力企業その他のいかなる人物等に対してであっても,この計画案を口外しないことを誓います.
非人道的な人体実験による悲劇を繰り返さぬよう,ご助力のほどお願い申し上げます』
その人物はメモに一瞬視線を走らせた後、嘆息した。
この計画書を作成したスミレはまさに今、それを手にしている人物に対して諭しているのだ。
これ以上、実験を長引かせても旨みはないと。
ぞんざいに通信機を取り上げた。
「――ドッペルゲンガー製造計画はこれで終わりだ。情報統制を急げ」
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