第22話

「良い考えって?」


「これよっ!」


 リズに問われたルナが何か取り出したらしい。私は扉を少しだけ開けて中を覗いてみる。

 

「私達のバイブルとも言うべきこの小説『悪役令嬢なんか怖くない!』にちゃんと解決法が書いてあったわ!」


 あの小説ってそんなタイトルだったんだ。どうでもいいから覚えてなかったよ。ってか、私が悪役令嬢だっていう設定はまだ残ってたんだね。すっかり忘れてたよ。


「どんな方法ですの? 言い辛いですがルナ様は悉く失敗して、ストーリー通りにはなっておりませんよね?」


 ミラが冷静にツッコミを入れる。


「今まではね! 憎ったらしいことにあの女、ヤケに勘が鋭いのよ!『階段落ち』も『噴水流し』も上手く行かなかったわ! でもね、これからはそうじゃない! あんた達が協力してくれればきっと上手く行くわ!」


「「 協力って? 」」


「いい? 今までの私はあの女に濡れ衣を着せるために、あの女のアリバイが無い所で事に及んでいたんだけど、それが間違いだったのよ! あの女にアリバイがあっても良かったの! だってこの本にもちゃんと書いてあるもの! 悪役令嬢は自分では手を下さず、手先にやらせるって!」


「えっとつまり...何が言いたいの?」


「つまり! あんた達が悪役令嬢の手先になって、私を虐めていたってことにすればいいのよ! リズの場合だったら『お姉様に脅されて仕方なく』ミラの場合だったら『将来、お義姉様になる人に命令されて仕方なく』という体を装うのよ! どうよ!? これで完璧じゃない!?」


「な、なるほど...」


「良いかも知れませんね...」


 リズとミラの二人がすっかり丸め込まれたか...これはちょっと厄介だな...ルナのクセに中々やるじゃないか...ルナのクセに!


「そうと決まれば早速『教科書破り』から行くわよ!」


「「 お、お~...」」


 その後三人は、ルナの教科書を三人がかりで切り裂き始めた。カッター片手に黙々と教科書を切り裂く姿は、異様な感じがしてかなり怖かった。すると、


「ねぇ、どうせだったらルナの机とか椅子も傷付けちゃわない? その方がリアルさも増すんじゃないかしら!」


「それいいわね! 採用!」


 リズの提案をルナが快諾した。これはチャンスだ! 教科書は私物だからどう扱っても罪に問われないだろうが...それでも精神鑑定を受けるかもだけど...学校の備品を傷付けたら器物破損の現行犯だ。私はすぐさま職員室に駆け戻って先生に知らせた。


 その結果、三人娘は揃って停学になったとさ。


 ざまぁ!

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