第16話

 その日の深夜、私は神兵達を引き連れて再び孤児院を訪れた。


 ドアをノックすると院長が現れて、


「早かったですね! おい! ガキどもをさっさと連れて来い! お客様がお待ちかねだ!」


 と、こちらを確認もせず、後ろに向かって叫んだ。


「あら? お約束なんてしてたかしら?」


 私がそう言うと、院長はようやくこちらが誰か気付いたようだ。途端に顔から汗が吹き出す。


「せ、聖女様!? な、なんでここに!? こ、こんな時間に!?」


 焦りまくる院長の後ろから、副院長が子供を3人連れて現れた。そして私を見てその場に立ち尽くした。


 私はアワアワしている院長と石像のように固まった副院長を尻目に、子供達へと近付いた。3人とも10歳くらいの可愛らしい女の子だ。


「今晩わ。あなた達、こんな遅い時間にどうしたの?」


 すると女の子の内の一人がおずおずと話し出す。


「私達の里親が決まったって院長先生が...」


「こんな時間に? 急に決まったの?」


「ううん、前から決まってた...」


「そう...あなた達のお名前を教えてくれるかな?」


「私はミナ、この子はナナ、この子はサナ」


「ありがとう」


 私は昼間貰った子供達のリストと照らし合わせる。そして院長を問い詰める。


「院長先生、これはどういうことでしょうか? 昼間伺った時、ここ最近は養子縁組の話は無かったと確かに仰っていましたよね?」


「そ、それがあのぅ...きゅ、急に決まりまして...」


 院長は顔から滝のような汗を流している。


「でもこの子達は前から決まっていたと言ってますが?」


「そ、それは...」


「それにこの子達の名前、3人ともリストにありませんね?」


「うぅ...」


 院長が何も言えなくなった時、


「聖女様...」


 神兵の一人がそっと耳打ちして来た。それを聞いた私もそっと頷く。


「院長先生、たった今そこで人身売買組織の馬車を摘発したそうです。あなた方、子供達を売ってましたね?」


 院長と副院長が同時に崩れ落ちた。そして神兵にしょっぴかれて行った。


 ざまぁ!


 後で調べた所によると、この2人はなんと10年以上に渡って、延べ何10人もの子供達を人身売買し、その金を懐に入れていたことが判明した。


 悪質だと言うことで、この2人は資産を全て没収の上、死ぬまで鉱山労働することを命じられた。そこで働いた給与は、全額孤児院に寄付されることになった。


 処刑されてもおかしくなかったが、簡単に処刑するよりも長い間苦しみを与え続ける罰の方を選んだらしい。


 因果応報だと思った。

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