第15話

 今日は聖女の務めとして孤児院に慰問に来ている。


 私は子供達の健康状態のチェックを、護衛として付いて来た神殿の神兵は子供達の遊び相手をしている。


 健康状態は概ね心配は無さそうだが、全体的に子供達が痩せ過ぎている印象がある。この孤児院は神殿が経営しているので滅多なことはないと思うが、ちょっと気になったので院長を勤めている神父さんと、副院長を勤めているシスターさんに話を聞いてみることにした。


 ちなみにこのお二人はでっぷりと太っている。


「子供達が痩せ過ぎているように見受けられます。食べ盛りのはずなのに食が細いのでしょうか? 何か心当たりはございませんか?」


「さ、さぁ...私どもは三食きっちりと食べさせておりますので、とんと見当が...」


「そ、そうですわ...毎日きちんと出しておりますわよ。聖女様の気のせいではございませんこと?」

 

 やたら汗を掻きながら説明する二人。とても怪しい。何か隠しているな? 私はすかさず心の声を拾ってみた。


『ま、マズい! 食費をちょろまかして懐に入れてることを疑われてる!? 確かに食事の質は落としたし量も減らしたけど、食事を抜いたりはしてない! なんとか誤魔化してさっさと帰って貰わないと! 今夜は出荷だってあるのに!』


『ま、マズいわ! 出荷の際、暴れたりしないように、日頃から食事を減らしてガキどもの体力を落としていたのが仇になったわね! なんとしても誤魔化さないと! 今夜は大口の顧客が来るんだから!』


 なるほど、そういうことか。孤児院のお金を着服して自分達の懐に入れ、その皺寄せを子供達に押し付けたと。最低だなコイツら。


 それより気になったのは出荷って言葉だ。まるで家畜か何かを卸すみたいな言い方、そして今夜って...まさか!


「...院長先生方、つかぬことをお聞きしますが、ここ最近子供達の養子縁組が決まったりしましたか?」


「い、いえ、こ、ここの所は特にありませんです。はい...」


「え、えぇ、良いご縁があればありがたいのですが...」


「そうですか。もしかしたら紹介できるかも知れません。子供達のリストをお預かりしても構いませんか?」


「えぇ、もちろんですとも!」


「子供達のためにも何卒よろしくお願い致します!」


 子供達のためね...自分達のためじゃないの? どの口がそんなこと言えるんだか...子供達を食い物にしたことを後悔させてやる! 覚悟しろ!

  

 私は護衛の神兵を呼んで耳打ちした。そして神殿に帰って教皇様に報告し、作戦の許可を取って夜になるのを待った。

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