インテリアを増やす目的ならば、喫茶店の壁に釘を打ち付けることは可能です

「ミエル陛下、お願いがあります」


「何?」


「喫茶店の仕様変更をお願いしたいです。

 無茶を承知でお願いします」


「何を、どうしたいの?」


「壁に、水道管を固定したいです」


「それなら、固定具をつけて、それに釘を打てばいいじゃない」


「しかし、喫茶店内壁の鋼の性能から考えると、無理だと思われるのですが・・・」


「大丈夫よ。

 壁にインテリアを増やす目的ならば、穴を開けることも可能という仕様にしているわ」


「何それ!?

 やっぱ、仕様って、すげぇ!」


「ただし、シェルター内に穴を開けるのは不可能よ」


「ミエルさん。

 事前に未来を予測した、最高の仕様です」


「1つ、聞いていい?

 なんで壁に水道管を固定するの?

 店内にも水道を引きたいの?」


「インテリアです」


「・・・はぁ。

 もう、どうでもいいわ。

 好きにしなさい」






*****






「あれだけ硬かった壁に、釘が刺さる!」


 実際に試してみると、本当に壁に穴が空いた。

 試験的に、釘を引き抜いてみる。

 すると、穴は瞬く間もなく消滅した。

 本当に。

 びっくり天界マジックである。


 ヒヨリちゃんにラダーを支えてもらいながら。

 壁への水道管、及びガス灯Bの固定が完了。


・ガス灯Ax4

・ガス灯Bx4


 ガス灯Bは左右の壁に2つづつ固定した。

 ちょうど、左右端の2人掛け席が照らされる位置に。

 一方のガス灯Aはお店の中央、2人掛けテーブル席の間にそれぞれ1台づつ。

 さらには、バーテーブルの後ろに2台配置。

 各位、ロウソクを取り付ければ。


「照明器具、&、壁装飾、完成です!」






*****






 ここまでの作業で日が落ちたので。

 早速、点灯式を開催します:


・ロウソクの赤橙色の光が家具に当たると、また違った味を出してくれます

・明るすぎない、落ち着いた雰囲気の照明で、穏やかな時間を過ごしてもらえそうです


 米焼酎と氷をグラスに入れて。

 俺、ミエルさん、ヒヨリちゃん。

 紫のドラゴンソファー席に、茶革鉄骨ソファーをくっつけて3人席にして。


「喫茶店完成を祝しまして。

 乾杯!」


 各位、ちびちびと酒を飲みながら。

 おつまみとして用意したエビカツサンドを食べ。


 ここで改めて。

 店内を見回します。


「薄暗い照明のおかげで、すごく幻想的な感じがします。

 壁の配管もオシャレだと思います」


「ヒヨリちゃん、ありがとう。

 ミエルさんからも、コメントありますか?」


「いいんじゃない?

 最低でも、天界の真っ白な部屋に比べたら。

 でも。

 金銀装飾の豪華な内装より。

 私は、こっちの方が落ち着くわ」


「ありがとうございます」


 水道管を利用した『擬似ガス灯』と『壁配管』。

 まるでここが『工場』であるかのような感覚を覚えます。

 金属部品の製造を行う場所で、食事を提供する。

 そんなミスマッチが、俺には突き刺さるわけであって。

 これは、かの有名な赤色の配管工も、マンマミーアだと思われる。


 擬似ガス灯内のろうそく。

 その炎がゆらめく様。

 ずっとながめられる。

 焼酎、永遠飲める。


 ・・・。


 ここで。

 ミエルさんは、焼酎ロックを飲み干すと、質問を投げた。


「それで、勝てそうなの?」


「決戦は明後日です。

 みんなの力を借りたので。

 なんとしても勝ちたいと思っています」


「でも、夜中にバーを営業するって言っても。

 ガンダルとポリンクの間の何も存在しない道の上で。

 夜間の来客なんてあるのかしら」


「そうですね。

 なので、営業場所を変えます。

 今回は、ガンダルの、ポリンク側、東の門の前に店を開き。

 ガンダルからの来客を狙います。

 ガンダルは世界有数の賑わいを持つ都市です。

 お金に余裕のある顧客は多いと考えます。

 場所を変更して、勝負に出ます」


「賭けに、勝てるといいわね」


「明日から喫茶店を、ガンダルに展開します。

 そして、大きな宣伝用の看板を設置して。

 明後日からの開店をアピールします。

 さらには、ガンダル内で宣伝活動を行う予定です。

 宣伝ポスターも、すでに作っています。

 これをギルドに掲示させてもらう約束もかわしています」


「宣伝って大事ですからねー」


「そこで、お二人にお願いがあります。

 えーーーーーー・・・・。

 そのですね・・・」


 2人が俺を見つめていることを確認したのち。


「明日、2人には、宣伝を手伝ってもらいたいのです」

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