この世界では、砂糖は比較的高価です

 舞台は再びガンダルへ。

 ミエルさん、いつもお世話になります。

 坂を登り、目的の装丁そうてい屋に到着。

 要件は、1つだけだ。


「店主さん、すみません。

 質問、1つだけいいですか?」


「なんだい」


「この装丁ブックカバー、どこで購入されているんですか?」


「ポリンク」






*****






「ポリンクは芸術の街。

 芸術といえば、『絵画』さ」


 店主、アモリさんから、そのような言葉が添えられた。

 これで、ポリンクを目指す理由が、また1つ増えたのである。

 しかし、現在金欠のため。

 喫茶店を1シーズン営業したのちでの出発、ということにした。


 そして、俺は、今、厨房。

 議題は、2つある。

 どちらにも共通していることは、『ヒヨリ師匠』という言葉だ。

 では、早速始めよう。


・玉ねぎみじん切り、モモ肉を小さく切る

・これをオリーブオイルを引いたフライパンで炒め

・そこに、ご飯とケチャップ投入し、炒め

・塩胡椒少々で、炒め、ケチャップライス完成

・これを、お皿に盛り付けておきます

・フライパンにバターを入れて溶かし

・卵2個投入し、かき混ぜ

・固まり切る前に火を止めて、フワトロ具合を調整

・完成したフワトロ卵焼きをケチャップライスに乗せて

・ケチャップで『ROOT』と描いたら


「オムライスです!」






*****






 流れは、わかりました。

 ヒヨリ師匠も、めてくれました。

 でも、やはり、『フワトロ』かつ『綺麗な形』というのは。

 一筋縄では、行かなかったのです。


・課題:形状の美しい、フワトロ卵焼きを作れるようになる


「1週間、練習します」


 オムライスのメニュー追加は、次回に持ち越しになりました。

 さて、ここから、2つ目の議題に入ろう。


「そろそろ、『甘味』に、手を出したいんだよね」


 その瞬間、ヒヨリちゃんの口からヨダレが垂れました。

 俺は、それを『肯定の意志』と捉えます


「まずは、堅実なところからスタートして。

 理想形まで到達する。

 これから、俺のプランを説明するね」


 以下が、タドルプランです:


・ホイップサンド

・ホイップフルーツサンド

・フレンチトースト(+はちみつ、ホイップ)

・パンケーキ(+はちみつ、ホイップ)

・クッキー


「なんか、意外と、単純ですね」


「本来は、チーズケーキとか、レアチーズタルトとか食べ、出したいけど。

 手間がかかりすぎるからね」


「でも、これなら、私、全部作れますよ」


「そこで、師匠。

 まずは、最初のステップから、ご教授、お願いしたいのです」


「最初のステップ?」


「最初に作りたいのは、ホイップクリームです」






*****






「卵の白身をかき混ぜるんだっけ?」


「それは『メレンゲ』ですね。

 ホイップクリームとは、全然、別のものです。

 ホイップクリームは、『生クリーム』をかき混ぜたものです」


「生クリーム。

 よく聞くけど、実体は、何者だっけ?」


「牛乳です。

 牛乳から、乳脂肪分以外の成分を除去したものが『生クリーム』です。

 さらに、めっちゃ除去して固めると、『バター』になります」


「どうやって、除去するのかな?」


「わかりません。

 スーパーに、『生クリーム』という形態で置かれてますから」


「たぶん、ガンダルでは、生クリーム、売ってなかったかも。

 ハミルトンでも、見なかったなぁ」


「でも、バターが作れるってことは、生クリームも作れるってことです。

 諦めるのは、まだ早いです。

 バターが、ガンダルにおろされている。

 ということは、近くに酪農業者が存在している、ということなのです!」






*****






 ソシャゲ天使に、『甘いものが食べれるかもしれません』と言ったら。

 喜んで転送してくれた。

 場所はガンダルから南東に0.5日。

 草原と森の境、丘の上。

 草原には、黒い牛が、放し飼いにされていた。

 その一方で、小屋の中に押し込めらてている牛もいる。

 こちらは白色で、黒のブチ模様。

 小屋で作業中の男性を発見。

 声をかける。  


「生クリームって、あります」


「クリームは売ってないよ。

 でも、バターなら売ってる。

 とりあえず、そこの直売所に行ってみな」






*****






 酪農業者の直売所。

 そこは、オークラとはまた異なる。

 食材の聖地だった:


・ハム

・ベーコン

・牛乳

・バター

・チーズ

・卵

・砂糖

・クッキー


「ハムもチーズも卵も。

 ガンダルより、安い!」


 ただし:


・牛肉

・豚肉

・鶏肉


 は、売っていなかった。

 これらは、さばかれると同時に、すぐ全出荷となるので。

 ここには並ばないそうです。


「全部買います!」


「マスター、目的を履き違えてます」


「こんなに買ってくれるなんて、うれしいね。

 なにかサービスしてあげようか?」


「生クリームを、売ってください!」


「あんたも、菓子職人かい?

 実はね。

 昨日も、同じようなことを言ってきたが来たんだよ。

 その娘の依頼で、昨日からクリームを販売するように決めたのさ」


「そんな偶然があるんですね。

 でもでも、その人に感謝しないと。

 ちなみに、その娘。

 なんて言う名前でした?」


「アリサ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る