シェルターは船上でもオープンできるように設計してあります

 ジェルソンでの用事が完了し、あとは出航を待つのみ。

 が、出航は明日なので、まだ1日の余暇が発生した。


 ここで、まず行っておくべき確認がある。


「船の上で喫茶店をオープンしたら、どうなりますかね?」


「沈没する」


「ですよね。

 ちなみに、船の上でシェルターをオープンしたら、どうなりますかね?」


「それは、大丈夫」


「なんで大丈夫って、言い切れるんですか?」


「そういう設計にしてあるから。

 重量がどうとか、そういう問題ではなく。

 船でも解放できよるように、そう設計してある」


「神設計ですね」


「ただし、注意点がある。

 シェルターが展開できるサイズの、床、空間が存在しないと解放できない。

 『この場所には展開不能です』というアナウンスがあるわ」


「なるほど。

 なら、食料などは、全てシェルターに収納しとけばいいですかね?」


「いや、船のサイズがまだ未知だし。

 小さい船だと、シェルターを展開できない。

 また、船長の許可が下りない可能性もあるでしょ。

 なので、食料は自分の手で持って、持ち込んだほうがいいわね」


「なるほどですね」






*****






 食材購入のため、ハミルトンへ転送してもらいました。

 今回の購入品は以下:


・パン

・チーズ

・ハム

・ビーフジャーキー

・ライム

・水筒


 パンは主食。

 ビーフジャーキーは腐りにくいので、長旅には重宝する。

 ライムは、大事なビタミン源になる。

 水は、配給されるが、その水を入れる水筒が必要なので購入する。


「しばらくは、質素な食事になるなぁ」


 以上の食材を、天使の分も合わせて購入。

 合計、6,000Gの出費。

 天使のぶんは、あとで返金してもらえるので、実質は3,000G

 ビーフジャーキーが、結構高かったのでした。






*****






 食材を喫茶店まで持ち帰ったのち。

 俺は、再びハミルトンを訪れていた。


「アリゲータの皮、確かに納入されました。

 残り2匹です」


 ・・・


「アリゲータの皮、確かに納入されました。

 残り1匹です」


 ・・・


「アリゲータの皮、確かに納入されました。

 依頼達成です。

 6,000G、受け取ってください」


 以前もあった、この一連のやりとり。

 そう、


・アリゲーター3匹討伐、および、全皮素材の納入


 の依頼が復活していたのである。

 依頼人は別の人であったが。

 アリゲータは15匹ハントして、6匹納入。

 まだ9匹分も、皮素材が残っているのである。


 ただ、アリゲータの依頼は、掲示板には、1つしかなかった。

 この皮を販売する方法は、他にないだろうか。






*****






 アリゲータの皮の販売先を探し。

 俺はまず、ライザさんの武器屋へとやってきた。

 今日も、お客さんが数人入っている。

 しかし、お目当のライザさん、ピンクの髪が見当たらない。

 代わりに、カウンターに立っていたのは。

 黒い魔女帽子と、ローブをまとった。

 銀髪の魔女さんだった。


「あの?

 ライザさんは?」


「旅に出ました」


「旅?」


「もっと、屈強な冒険者と、武器素材がつどう街へ行く、とか言って。

 店を、私にたくして。

 『ちょっくら、散歩、行ってくる』、くらいのノリで。

 海、渡っちゃいました」


「行き先は?」


「ガンダルです」






*****






 次にやってきたのは、ユナスさんの魔法防具店。

 ちなみに、その前にユズノさんの雑貨店にも足を運んだが。

 『ウチでは扱えない』、という言葉を放たれ、追い返された。


「買うよー」


 という軽いノリで、交渉が成立した。

 さて、いくら値がつくか?


「で、何体ぶん、売りたいんだい?」


「9匹」


「なんで、そんな在庫持ってんの?

 ワニに好かれる魔法でも覚えたの?」


「沼に行ったら、いっぱい寄ってきたので。

 いっぱい倒しました」


「運搬は?」


「それは、企業秘密です」


「あっそ。

 でも、9匹もいらないなぁ。

 というか。

 なめし業者が受け取ってくれるか、わからん。

 この前の『白黒』の仕事も残ってるだろうし。

 こんな小さな町のなめし業者だと、キャパも高が知れている。

 まあ、例えば、ガンダルでも行けば。

 何体分でも回転するんだろうけどさぁ」


「実は、俺、今からガンダルへ行くんですよ」


「ワニ皮を引きずって、海渡るの?」


「まあ、なんというか。

 あれです。

 だから、全部、売りたいなーって」


「ワニ皮は、ギルドだと、1匹2,000Gが相場さ。

 1匹1,500Gなら、全部買ってやるよ」


「それでお願いします」


 ここから、俺は。

 防具店と喫茶店を9回往復することになったのだが。

 ユナスさんは、半分冗談だと思っていたようで。

 たいそう驚いて。

 『お前に『ワニの人』の称号を与える』。

 とか、よくわからんことを言いだしたのだった。


 売却金の13,500Gを受け取った時点で、夕暮れ時。

 さあ、ついに明日。

 俺は、海を渡る!

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