シェルタークローズ中でも、内蔵物の腐敗、発酵は進みます

 俺は厨房にやってきた。

 実は、もうアイデアがあるのである。

 しかも、買い出し不要。

 既存の食材のみで完成されられます。

 では、試作スタートです。


 まず、トマトを煮込みます。

 ただし、ケチャップの際よりも、煮込み時間を短くし、少し水分多目で仕上げます。

 鍋に、塩と砂糖を入れて、味を整えます。


 そして、ここで登場する食材。

 それが、『鶏肉様』です。

 困った時の、鶏肉頼みです。

 この鶏肉の『ムネ肉』を、フライパン、多めの油、オリーブオイルで。

 こんがり、こんこん、キツネ色になるまで。

 両面を、パリッとなるまで焼いたら。

 ここで、塩、そして胡椒を、少し多目くらいにまぶし。

 お皿に乗せ。

 煮込んだトマトのソースを滴下。

 最後に、きざんだトマトを少し乗せて・・・。


 完成!


「トマトソースのチキングリルです!」






*****






「赤いわ」


「色の情報は、誰でもわかります。

 味の感想をください」


「酸っぱい」


「美味しいですか?」


「そこそこ」


「チキン南蛮と、どっちが美味しいですか?」


「ごぶごぶ」


 だめだ、この天使。

 遅めの昼食は、試食会を兼ねて行われたが。

 収穫は少なかったように思う。

 ただし、こうも考えられる。

 あの営業成績トップの『南蛮』くんに対して、『ごぶごぶ』で渡り合っている。

 そういうふうに。

 まったく思えないのである。


「俺は、チキン南蛮のほうが、美味しいと思います」


 ここで補足。

 今回の料理は、『トマトソースのチキングリル』と銘打ったが。

 実は、俺は、この『グリル』という言葉の意味を理解していない。

 言い訳をすると、よいネーミングが思いつかなかったのである。

 以下、俺が検討した、その他の案を示します:


・トマトソースのチキンソテー

・トマトソースのチキン焼き

・トマトソースのチキンステーキ

・こんがりチキンのトマトソース味

・鶏ムネ肉のトマトソース掛け

・チキンソテー、トマトの酸味を乗せて

・赤い鶏

・レッドチキンロースト


 皆さまは、どのネーミングがいいと思いましたでしょうか?

 名前を付けるのって、本当にセンスが必要だな、って思いましたとさ。


「この料理で、また5日間、勝負しようと思っています」


「いいんじゃない?」


「これが、新しいメニュー表です」


 俺は、『醤油が消えた』、新しいメニュー表を天使に見せる:


・コーヒー 300G

・[☆NEW]塩唐揚げ定食 600G

・[☆NEW][★オススメ]トマトソースのチキングリル定食 600G

・トマトスパゲティー 750G

・バターサンド 300G

・タマゴサンド 500G

・ハムサラダサンド 500G

・[★オススメ]ミックスサンド 500G

・[★オススメ]ピザサンド 600G

※お料理をご注文の方は、コーヒー100Gで提供します


「『唐揚げ』、復活してるじゃない」


「醤油を使わず、生姜と塩と胡椒のみで味付けする唐揚げです。

 醤油味に勝てるかは、わかりませんが。

 これはこれで、かなり美味しいです」


 塩唐揚げに関しては、試作も完了済み。

 『間違いない』一品に仕上がった。

 ここで、ミエルさんはあることに気づく。

 味音痴であるミエルさんだが、『金』が絡むと鋭いのであった。


「トマトソースのチキングリル定食、600G、って。

 安くない?」


「さすが、鋭いですねミエルさん。

 チキン南蛮定食は、750Gでした。

 150Gも安いです。

 では、ここで問題です。

 なぜ、価格を安く設定したのでしょうか?」






*****






 ここからミエルさんがシンキングタイムに入りますので、皆さまは多肉植物が大量に乗ったラダーシェルフの映像をお楽しみください






*****






「タマゴが不要だから?」


「それは、値段検討の要素として重要なものです。

 しかし、トマトも、結構高いんです。

 タマゴの代金より、トマトの方が高くつきます。

 ちなみに、タマゴ、鶏、トマトは、この地方に根付いている食材なので、入手性や価格は良い方ですね」


「じゃあ、なんなの?」


「鶏肉です」


「同じ鶏肉を、同じ量使ってるでしょ?」


「その考えが間違っているのです。

 正解は、『使用している鶏肉の部位が異なるから』でした」

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