渡航準備

初期配備している調味料は有限です

「ミエルさん、ヤバイです」


 5日間の営業、および営業結果の解析を完了し。

 俺は、とある危機的状況の存在に気づいた。


「何?

 お客さん、いっぱい来てたじゃない。

 営業成績書、見せてちょうだい」


 俺は、営業成績書を手渡すと同時に、一言を添える。


「問題は、この成績書の中には、存在しません」


「売り上げも安定して、15日目には最大の売上を達成している。

 問題はどこにあるの?」


「逆に、質問ですけど・・・。

 何が問題だと思いますか?」






*****






 ここからミエルさんがシンキングタイムに入りますので、皆さまはスーツ姿のミエルさんの映像をお楽しみください






*****






「売れすぎて、従業員が足りない、とか?」


「『売れすぎて』は、ある意味正解です」


「?」


「一大事です。

 『醤油』が、なくなりました」


「ごめん、何が問題か、全然わかんない」


「ウチの、今の一番の稼ぎがしらは『チキン南蛮定食』です。

 これは、醤油がなければ作れません。

 『唐揚げ』も、『テリヤキチキン』もできません」


「そのための、『ピザ』、なんじゃないの?」


「それは、その通りです。

 メニューを増やしたことで、危機が分散されています。

 ここからは、俺の所感です。

 聞いてもらえますか・・・」


 そして、俺は、『醤油』の重要性について説明を開始した:


・俺の調査では、ハミルトンに醤油は売っていない

・『醤油味』というものは、この地域では、あまり親しみのないものであり

・逆に言えば、これが『物珍しさ』につながっていたと考える

・『唐揚げ』、『甘酢』、『テキヤキ』というキーワードには、全て『醤油』が必要

・せっかく、常連をつかみ始めていたところで、このキーワードが消えるのはヤヴァイ


 これを見てください。

 これは、醤油が『A:ある場合』と、『B:ない場合』のメニュー表です:


[A]

・コーヒー 300G

・唐揚げ定食 600G

・[★オススメ]チキン南蛮定食 750G

・[☆NEW]トマトスパゲティー 750G

・バターサンド 300G

・タマゴサンド 500G

・ハムサラダサンド 500G

・[★オススメ]ミックスサンド 500G

・[☆NEW][★オススメ]ピザサンド 600G

・テリヤキチキンサンド 750G

※お料理をご注文の方は、コーヒー100Gで提供します


[B]

・コーヒー 300G

・[☆NEW]トマトスパゲティー 750G

・バターサンド 300G

・タマゴサンド 500G

・ハムサラダサンド 500G

・[★オススメ]ミックスサンド 500G

・[☆NEW][★オススメ]ピザサンド 600G

※お料理をご注文の方は、コーヒー100Gで提供します


「たいして、変わらなくない?」


「『定食』がなくなるんです。

 この店の、今の、一番の顧客は。

 『腹をかせた冒険者』です。

 定食がなくなることは、重要な問題です。

 今週は『ピザトースト』が、うまくハマりましたが。

 来週も、うまくいくかは、不明です」


「じゃあ、定食、作れば、いいじゃない」


「まあ、それは、検討します。

 でも、最も・・・。

 一番重要な理由は、別にあるんです」


「それは・・・、なんなの」


「俺が!

 単純に!

 醤油味のモノ、食べたいんです!」






*****






 俺の演説は終了し、俺は醤油を求める旅に出ることに決めた。

 ミエルさんからは、もはや、お決まりとなりつつある、『ちょっと、意味、わかんない』というフレーズを頂戴した。

 しかし、俺の醤油にける情熱は・・・。

 ・・・。

 でもなぁ。


 正直。

 もう、すでに、めちゃんこ探したのである。

 ハミルトン中を、探しつくしたのである。


 そして、塩や胡椒などの調味料を扱う商人さんにも聞いたのである。

 しかし、『聞いたことない』という回答が帰ってきたのである。

 これは推測だが。

 この大陸には、『醤油』は、存在しないのでは、と考えている。

 この世界には・・・。

 その可能性もある。

 よって、まず考えるべき、進むべきは。

 『輸入』という道であると、考えたのだった。

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