天使は、雷、光、治癒の属性の魔法を得意とします

 今日の朝食=ミックスサンド+コーヒー。

 ミックスサンド=タマゴサンド+コールスローサンド。

 以上の方程式を完成させたと同時に、ミエルさんが帰還。

 『解体は自分で』という言葉を残し、朝食会場へと向かわれた。

 俺は、レッドドラゴンと向かい合う。

 このドラゴンも、まさか、こんな早朝から襲撃されるとは思っていなかっただろう。


 ここで俺は、ドラゴンゾンビの話を思い出し、解体を急ぐべきという結論に至った。

 まずは、レザーのぎ取りから。






*****






 ここから多少グロテスクな内容を含みますので、皆さまは朝ごはんの映像をお楽しみください






*****






 と。

 解体作業の途中で。

 片手にタマゴサンドを持って、口をモグモグさせている天使が割り込んできた。


「今回は、素材回収は、『レザーのみ』、ね。

 最近、あんま、りにも、『甘やかしすぎた』、そんな気が、するから。

 角だけ、私がもらって。

 あとはまた、『現場』で、『火葬』してくるわ」


 それだけ伝えると、ミエルさんは食事に戻った。

 動物解体しているところ見ながら食事できる人、俺、初めて見た。






*****






 レザーと角の採取が完了。

 ミエルさんは、残る死骸とともに去り。

 1分後には戻ってきた。


「火葬、早すぎませんかね。

 レッドドラゴンって、炎耐性持ちでしょ」


「レザーがなかった分、早く済んだわ」


「天使って、みんな、そんなに強いんですか?」


「天使は強いけど、その中でも、私は特別よ。

 エリートなの。

 エリートなの。

 なのになんで、私。

 こんな辺境の地で、監獄生活を送らないといけないわけ?」


「監獄生活って、シェルター内部で寝てること、ですよね。

 もう、喫茶店の中で寝たらどうですか?

 俺、命に掛けて、絶対に、手を出さないって、誓いますんで。

 天使に」


「それも、それで、なんか、不愉快だわ。

 私に魅力がない、みたい、にも聞こえるじゃない」


「そんな、もんですか?」


「・・・。

 はあ・・・。

 まあ・・・、いいわ。

 ・・・。

 私の分のベット、用意してくれる?」


「最優先事項として、登録いたしました!」






*****






「実は、これこれしかじかで」


 というように、昼礼にて、事情をメンバーに説明する。

 ただし、1点だけ嘘をついた。

 それは、『相方は女性、ではなく男性』、という嘘だ。

 『ちょっと最近、居候いそうろうができたから』とか言って、ごまかした。

 ごまかせた、と思う、たぶん。


 大工のケントさんが、すぐに手を挙げてくれた。

 設計図もあるので、今日中に完成する、とのことだ。

 頼もしいばかり。


 ここから、連絡事項の伝達に入る。

 まずは、ケントさんから。


「塗料の乾燥は完了している」


 次は、モリタさん。


「ゴムのカッティングも完了済みです。

 双子ちゃんが、頑張ってくれました」


 最後は、双子ちゃん。

 妹のカナエちゃんのほう。


「レザーの縫い合わせも完了済みです、なのです。

 お母さんが、頑張ってくれました」


 イノリちゃんが縫い終わったレザー、クッションの『ガワ』を、重そうに持ち上げて見せてくれる。

 俺は、思う。

 お母さん、タマエさんこそ、このプロジェクトの、一番の功労者だと。

 これは、勝手な予測でしかないが。

 昨夜も遅くまで作業をしてくれていた、のかもしれない。

 それは、貴重な『ランプオイル』を消費させてしまった、ということを意味するわけで。

 何かの形で恩を返さないといけない、と思ったのだった。


「部材は揃いました。

 ではでは・・・。

 組み立て(アッセンブル)、開始です!」






*****






 最初に着手するのはクッションにゴムを詰める作業から。

 1、ゴムダイスを適当に詰める。

 2、そして、隙間が埋まるように、巨大鶏の羽毛を詰める。

 3、座ってみて、感触を確かめる。


 俺は、1、2、3の作業を、ゴムと羽毛の比率を変えながら、何回も、何回も繰り返した。

 目指す、最高の反発力を、叩き出すために。

 ケントさんとモリタさんは、『もう、よくないか』という言葉を発したが。

 双子ちゃんは、まったく泣き言を吐かず。

 というよりも、自分たちも座ってみては、いろいろと、その『座りごごち』を、いろんな言葉を使って表現しようと試みていたのである。


「合格!」


 10回目の試行で、俺は合格を出した。

 双子ちゃんにも笑顔が戻る。

 ちなみに、このクッションは、『尻敷き』

 『背中当て』のクッションは、今回は全て羽毛を詰めることに決定した。


 ここで、双子ちゃんに依頼。

 タマエさんに、最後の縫合をお願いする。

 ゴムが入って重たくなったクッションは、モリタさんに運搬してもらう。

 羽毛だけで軽い方のクッションは双子、2人掛り。

 『今度、恩を返します』という伝言もお願いし、見送り。

 

 さて、ついに。

 残る工程は2つだ。

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