素材を用いて強化することで、武器レベルを上げることができます

 俺がやってきたのは『武器屋』だった。

 こちらもわかりやすい、剣のマークの看板がかかげてあった。

 店内には、鎧を装備した屈強な戦士が3人ほど、品定めをしていた。

 前回までに訪れた『魔法防具屋』『魔法屋』と比べると、盛況。

 雑多だが、しっかりしたお店である。

 店の敷地も、前述の店のおおよそ2倍ほどあるが、どうも奥にも部屋があるらしく、その部屋は立ち入り禁止となっていた。

 そして。

 意外なことに、店主は女性だった。

 モフモフしたピンク色の髪。

 しかし、全く違和感を感じなかったのは、彼女の体が、鍛えに鍛えられていたからである。

 チャラ男を瞬殺する程度の能力はあると、その一瞬の視覚確認でも認識できる。

 

「こんにちわ、店主さん」


「こんにちわ、お客さん。

 冷やかしかい?」


「素材、買ってもらえないかなーー、って」


 あしらわれる前に、俺は品物を見せる。

 手提げ袋に詰め込んでいたブツを、カウンターの上にゆっくりと乗せる。

 その瞬間、店主さんの表情が変わった。

 それを見て、俺は安心した。

 やはり、値打ちある一品であったのだと、確信したからである。


「ドラゴンの爪か!」


 こちらからの一切の説明なく、これが何の素材であるかを言い当てた店主さん。

 さすが。

 この人の目利き能力は本物だ。


「いくらで、買ってくれます?」


 今回は早めに軍資金が欲しいので、あまり金銭的な駆け引きはしない予定。

 このドラゴンの爪。

 例えば、魔法防具屋でも、魔法屋でも、そこらの出店でも出品可能だとは思っている。

 その上で、この武器屋を選んだのは、ある意味、『賭け』である。


「ドラゴンの爪、1本で2,500G。

 6本で15,000Gでどうだい」


「それでオーケーです」


 よしよし、想定以上の値がついた。

 これで本日の買い出しに関しては、問題なくこなすことができそうだ。

 が、ここで話題は意外な方向に向いた。


「角は?」


「角ですか?」


「爪があるんなら、角もあるんだろ」


「あります。

 でも、今回は持ってきていません」


「角は1本で10,000Gで買う。

 2本なら20,000G」


「マジで!」


「ドラゴンのツノは、『武具強化素材』として大変重宝されている。

 それ故に、高い値が付くのよ」


「『武具強化素材』?」


「あんたの持ち武器、見せてみな」


 俺はさやから包丁を抜き、店主さんに向けて見せる。


「変な武器だな。

 刀なのか、短刀なのか、わからん」


「ですよねー」


「まあ、それでも武器は武器だ。

 『武具強化素材』を使ってきたえれば、この刀のレベルをアップさせることができるのだよ」


「ほんとですか!?」


「ただし、この武具強化に使う素材、それに一体何が適しているのか、それを理解できるのは、武器屋、それも限られた人間のみだ」


「その中に、店主さんも含まれるんですね」


「そのとおりさ。

 『武具強化素材』、持ってきて、さらに金払ってくれりゃ、この刀。

 『最高の切れ味』に仕上げてやろうとも」


 思いもよらなかった展開。

 現在仕立て中の防具(エプロン)に合わせて、武器までカスタムできれば。


「ただし残念ながら。

 お前の武器は異質すぎて、必要な素材が特殊なものになりそうだ。

 ちょっと触らせてもらってもいいか?」


 俺は包丁を店主さんにたくす。

 店主さんは、終始不思議そうな顔で包丁を多角的に眺めていた。


「やはり、こんな武器、見たことないな。

 でもまあ、おおよそ『刀』と同様の素材で強化できそうだ」


 包丁を私に手渡すと、店主さんは何やらメモを始めた。

 そしてすぐに、そのメモ用紙を俺に渡してくれる。


「これらの素材がそろったら、アタシのところに来な。

 絶対に後悔しない『リメイク』をほどこしてやる」


「ありがとうございます、店主さん!」


「アタシの名前はライザ。

 これからヨロシクな」


「俺はタドルです。

 素材集め、頑張ります!」

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