喫茶店もシェルターの加護を受け、防御性能が向上しています

「お前、この前の!」


 すぐバレたー。

 先頭で店内に入ってきたのは、『おかしら』と呼ばれていた男。

 そして、それに続いて6人の『小物』がワラワラ入ってきた。

 すでに全員、短刀をさやから引き抜いている。


「知り合いなの?」


「この前、襲われました。

 未遂で終わりましたけど」


 天使さんが、たずねてきた。

 ここで、さすがに、盗賊も天使さんの存在に気づく。


「なんだ、お前。

 女連れ込んでたのか?」


 盗賊の視線は俺かられ、天使さんに釘付けに。

 まあ、この衣装だったら、そりゃあ、そうだよね。


「いい、女じゃねぇか」


「あなた、見る目あるわね。

 ほら、もっとよく見ていいのよ」


「そうかい。

 じゃあ、もっと近くで見せてくれよ」


 いやらしい笑みを浮かべる親分、および子分たち。

 しかし、対する女神さんも、それはそれは、いやらしい笑みを浮かべているのだった。


 嗚呼。

 これ。

 たぶん。

 っちゃうヤツだ。


「ひれ伏せ!下衆げす共」


 瞬間、天空に複数個の光の球が生み出され。

 すぐにその光は、地へ向けて落とされる。

 地面まで到達した光は、地面に吸収されていく。

 これは、シェルターの加護を受けた喫茶店、その堅牢な防御性能を示していると判断。

 一方で、地面に到達しない光。

 それはつまり、下衆を焼く、天の怒り、となるわけであって。


「ギャーーーーーーーーーーー!!」


 血をき散らしながら、地面に倒れこむ盗賊たち。

 俺が受けた『デコピン』とは、全く『意志』が異なる。

 『叱責』と『殺意』の差だ。


「5」


 突然、意味不明な数字をつぶやいた天使さん。

 その意味は、次の言葉を持ってして、理解可能なものになる。


「4」


 カウントダウンだ!

 『死』への、カウントダウンだ!


「こいつ、魔法を使えるのか!」


「やばいです、親分。

 俺、足やられて、動けません」


「3」


「動け、俺の体、動け!」


「2」


 この時点で、最後尾に陣取っていた盗賊がなんとか足を動かす。

 しかし、その瞬間、簡易的な光の魔法が構築され、相手の足を焼き、動きを封じた。


「1」


「助けてくれーーー!」


「死ね!」


 その瞬間、盗賊、全員が光に包まれる。

 その光には、強い、既視の感覚があった。


「転送魔法だ」


 そして、7人の盗賊は消滅した。

 多少の血痕を残して、完全に消滅してしまった。

 それでも俺に、恐怖の感情は全くなかった。


「逃してあげたんですね」


っちゃったら、掃除が大変でしょ」


 大きくため息をついて、天使さんは椅子に座り込んだ。

 そして、俺は、ここで、理解した。

 

「最強の、用心棒じゃないですか!」


 この天使さん、その強さ。

 それを、ほんの一瞬の出来事を持ってして理解した。

 否、理解されられた、強制的に。


「勘違いしないで。

 私はあなたを谷に突き落とす存在よ。

 これからは、あなただけの力でなんとかしなさい。

 今回は、相手があまりにも『よかった』から。

 ある意味、運がよかったわね。

 天使の加護を受けられて」


「でも、ほんとうに危ないときは助けてくれるんですよね。

 天使さん、ほんとは優しいから」


 とか、からかってみた。

 彼女はニッコリと笑って、飛び膝蹴りをお見舞いしてくれた。

 やっぱり、優しくなーい。


「血痕だけは掃除しておいて。

 お客様が見たら不快でしょ。

 私が参戦するからには、喫茶店の運営も中途半端なことは許さないわ。

 明日から、もっと『大きく』動いてもらうわよ。

 そのために、今日はゆっくり寝なさい。

 ちゃんと、鍵をかけてね」


 そこまでで、『夕礼』はめられ。

 今度こそ天使さんは、シェルターへ向かった。

 と思ったら、振り返って。

 最後に、一言を添えてくれるのだった。


「私の名前は『ミエル』よ。

 よろしくね、『タドル・マイズミ』さん」

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