06:律歌から遊びの誘いを受けよう!
その週の土曜日、
いつも起こしてもらっている目覚まし時計を見ると、だいたい九時を指していた。
「もう起きたー?」
「……あれ、
「三十分くらい前に起きて、宿題やってたわよ」
志音は小さい時から
「洗濯物干し終わったらご飯にしようか」
「うん……」
頭がぼうっとしている。何で志音はパッと起きられるんだろ……。
よいしょと体を起こして、私はリビングに向かった。
朝ご飯を食べて歯
「志音は今日宿題終わらせる?」
「無理。宿題多いから、明日の朝も起きてやる」
「一組は多いよね。私は明日やるのはめんどいから、終わらせちゃうけど」
計算ドリルとノートを開き、スラスラと(というよりさっさと)問題を解いていく。
三組の私のクラスは、本当に最低限しか宿題が出されない。音読は毎日必ずある。日
自主勉ノートは絵を
それでも多いなぁと思う私。
しかし、一組はそれに加えて算数プリントがあったり、同じ日に漢字ドリルと計算ドリルが出されたりする。しかも土日は自主勉ノートが一日二ページに増える。
「音葉は計ドの二周目やってればいいからよ、
と、今日もこのセリフをくり返す志音。
宿題を始めるまでが
「お母さん、サックスやってきていい?」
「全部終わったの?」
「自主勉があと二ページ」
「練習終わったら、もう二ページやるのよ」
「あと一ページがどうしても思いつかないから
一足先に『オルビス・ナイト』を始めている私の
お母さんにはしっかり断りを入れたらしい。
「志音なら明日ちゃんとやりそうだしね。私だったらダメって言われそう」
「俺は音葉と
勝手に
「
「あっ」
「知ってんのか?」
私の後ろから同じところを志音がのぞき見に来た。
「
「もしもし、その声はおと?」
「うん、そうだよ」
水曜日会った時と変わらないテンションで話してくる。
「今日の午後
「そうなの! ちょっとお母さんに聞いてみる」
受話器から耳を
「今、音楽教室の友だちから電話かかってきて、午後遊ぼだって。行ってきていい?」
「いいけど、どこで遊ぶの」
「あっ、ちょっと聞く」
再び受話器に耳をくっつけ、「どこにする?」と問いかける。
「うちら三人で言ってたのは、けやきの森公園なんだけど、行ったことある?」
「あっ、何回かあるよ」
そこはちょうど北小と西小の学区の境にある公園で、その近くに住む友だちと一緒に遊んだことがある。
できてから二年くらいしか経っていない公園なので、遊具もベンチもきれいだったのを覚えている。
「そこでいいよ。何時にしようか」
「昼食べてからだから……二時くらいでどう?」
「うん、二時にけやきの森ね」
「あっ、スイッチ持ってる?」
「持ってるけど、志音と一緒に使ってる」
「じゃあ『オルビス・ナイト』持ってる?」
「持ってる持ってる」
「オッケー、スイッチとオルビス持ってきて」
「分かったー」
二時にけやきの森公園にスイッチを持って集合っと。
また後でね、と言って受話器を置いた。
「ほーん、
「うわっ、聞いてたの!」
志音の顔が五センチもない間に
「律歌、声がでけぇから音
「それは確かに。じゃあ……あっ」
お母さんに遊ぶ場所を伝えようとしたが、また水を出し始めてしまった。
「お母さーん、けやきの森公園で遊ぶってー」
「はーい、気をつけてね」
今日は一発で聞き取ってくれた。
「「いってきまーす」」
「「いってらっしゃーい」」
スニーカーを
「えっと……けやきの森ってどうやって行くんだっけ?」
久しぶりすぎて行き方を忘れてしまった。だいたいあそこら辺っていうのは分かるんだけど。
志音にため息をつかれる。
「俺が前走るから」
自転車のスタンドを上げてひょいとまたがり、ペダルをこいで走り出してしまった。私も
志音とはある程度の
そっか、ここの道から入って行くんだった。
そして意外にも、道を曲がる時にはしっかり止まって確認していた。めんどくさがって、ちゃんとやってないって思ってたのに。
小さい時は急に走り出したり、お母さんと手をつないでいないとどこに行くか分からなかったりしたはずなのに。
十分くらい自転車を走らせ、けやきの森公園に着いた。公園の入り口近くに自転車を止めると、律歌らしき声が聞こえてきた。
「おとー、しおーん、こっちこっち!」
けやきの森公園には、木のテーブルと、それを
「……久しぶり」
もちろん弦斗も一緒にいる。
「久しぶり……って、三日ぶりだけどね」
「……そんなに経ってないか」
弦斗の口角が少し上がる。
「後は琴音だけど……あっ、来た来た!」
向こうからくるオレンジ色の自転車に、私と律歌で琴音に手を
私と志音の自転車の隣に止めると、手を合わせて謝ってきた。
「ごめん、待たせたかな」
「ううん、私は志音と今来たばっか」
「律歌と弦斗くんは?」
「うちと弦斗はもう五分前くらいからいたけど、心配いらんって! 琴音が一番遠いから」
「それならよかったぁ」
片方のベンチに私と琴音が座り、もう片方に志音と律歌と弦斗が座った。
「まずフレンド
バッグからスイッチを取り出して、サッとフレンド追加の画面にする。
スマートフォンでは通じ合えなかった五人が、同じゲーム機を通じてつながった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます