雨がそぼ降るなか、はくの家に近いホテルに行った。そこでもはくは乱れた。ぼくも五日間を挟んでのセックスだったのだが、アノ時の声に姿態に年甲斐もなく興奮した。

 晩御飯を食べて帰れる、と言うのではくの家からは反対方向にある回転すしを食べに行った。土曜日の夜なので店は混んでいた。立ちながら待っていると、はくはぼくの中指を擦ってきた。そして耳元で「この指が悪い」と囁くのだった。

その夜のライン。

はくの乱れた姿に興奮して少し手荒なことをしたのではないか、と心配だったので「痛くしなかった?」って聞いてみると、

「少し、痛いかな」

「ごめんね、優しくしたつもりだけど・・」

「長い間使わなかったからよ 痛いのは」

「充分に濡れていたから」

「ただ柔らかい所やからね」

「ごめんね、それにしたこともないことを無理強いして」

「あ~あれね まささんへの証だよ いといません」

「そうだったの?」

「証」とはセックスの途中で体位を替えるとき、はくの口元にペニスを近づけると、意外とも驚きともとれる表情をしたので「知らないの?」って聞くと「したことがないの」と言いながら恐るおそる口に含んでくれたことだ。

「でも触ったか余り覚えてないわ」

「愛くるしいよ」

「まささんが居なければ生きていけなくなる」

「そうなの?」

「私を抱くのはまささんだけ」

「ぼくが抱くのははくちゃんだけだよ」

「うれしい」

「何があっても絶対に離さないから」

「うん しあわせよ ついていく」

「ありがとう」

「身体が心配 お肉ばかり食べるといけないよ」

「そんなこと無いよ」

「やさいは?」

「ちゃんと、摂っているよ」

はくはぼくに対しても母親なんだと思った。


翌日のラインも何気ない会話から始まった。

「朝から雨」

「辛いね 濡れた?」

「少しね」

「それは大変だ」

「雨音はショパン 自転車ガラガラいうからコラボやね」

「陽気やな」

「びゅんびゅん飛ばすと水の音もするよ」

「危ないよ」

「今日はお友達とランチ行くからね 女のひとよ」

「ほんとに?怪しいな」

「もう~」

「・・」

「なに~」

「・・・」

「もう~もう~」

「・・・・」

「なになになに」

「もう~もう~もう~」

「も~、いや」

「濡れたから風邪ひくよ」

「風邪はひかないよ、土曜日会えるもの」

「そうだったね」

「まささん、見るもの」

「なにを?」

「言えない」

「見るだけでなく触るよ」

「もう~」

「はくちゃんはぼくのものでしょ?」

「そやけど」

「だってはくちゃん可愛い声をだすもの」

「うれしい」

「でも乱れ方が激しい」

「激しくないよ余りしてないから」

「え~、信じられないな」

「主婦やったんやから」

「彼と2年も・・羨ましい」

「スネポン まささんのものでいるって言ったやん」

「この前アノ時に爪を立てたよ」

「え~ うそ、痛かった?」

「少しね」

「私は夢中やったから覚えていないわ 恥ずかしい」

「どうして?感じてたからやろ」

「幸せ 悪魔のまさ 女性なんて興味ないと思わせて」

「ぼくの動きに合わせて腰が・・」

「それはまさが動くからよ 女ならみんな同じではないの?」

「腰はあんなに動かさない」

「もう~いじめんといて」

「苛めるつもりは」

「こんなに愛してもらえる幸せ」

「はくの話し方も好き 声も耳に心地よい」

「初めてよ、そんなこと言ってくれるひと」

「キスマーク付けて良いの?」

「どこに?」

「胸とか、あそこの近くに」

「いいよ誰も見ないもの まさの印やね」

「嬉しいよ」

「でもねもし私が歳をごまかししたままやったら こんなにできないね?」

「え?どういう事?」

「妊娠するかもしれないやん」

「それはそうだけれど・・」

「中に出せるからいいんやろ? 楽やん」

「・・うん」

「まさは妊娠するかもと思っていたら私を抱いてなかったと思う」

「そんなこと無いよ 何で付けてって言わなかったの?」

「それはまさのそのままが良いから」

「良いの?」

「いい もう錆びついていたと思っていたからうれしい」

「そう・・」

「女は生理が終わったらさびていく一方って聞いていたからね」

「はくちゃんはまだまだ」

「身体は温めないと お風呂入ってね」

「うん」

こんな会話の合間にもぼくのガンのことを気遣ってくれるのが嬉しい。

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