第2章 亜人の国 20話 エルフの森②
俺は試されたのだと、説明を受けた。
魔王が現れたとしても、エルフは力だけで付き従うことはない。他種族との交流が希薄なのは、プライドの高さ故なのだ。そんな彼らが認めるのは、合理的な判断で自分達の味方と認めるに足る資質。そして、それは精霊神であるアグラレスと、エルフの森で最強の戦士であるララノアに託されたとのことだった。
「私は、ミーキュアとミンのスキルを信じています。彼女たちが認めることのできる人物であるのならば、実際に会って本質を見極めるつもりでした。」
アグラレスが事の経緯を説明してくれたが、ミーキュアとミンに認められることが第一関門だったようだ。
「森での出来事が、あなたが俺を見極めるための試練だったと?」
後で聞いた話だが、ミンが自らのスキルが原因で孤立をしているのは事実だが、アグラレスとは懇意の仲だそうだ。ただ、あまりつきあいが深いと目されると、連合内でいろいろと問題があるらしく、対外的には立場上のつきあいのみだと装おっているらしい。人の感情を読み取ることのできるミンを取り込んで、何らかの謀を企てているのではないかとの嫌疑でもかけられるのかもしれない。
「そう。あなたは、見ず知らずの子どもを命がけで守ろうとした。それは、純粋な優しさ、そして誠実な心を持つことの証明になるわ。」
「それだけで、他の者は納得するのですか?」
「普通ならしないわね。でも、それがララノアだと、話は大きく変わる。」
そのララノアは、なぜかずっと俺の手を握っているのだが···なぜ?
「彼女だと、何が違うのですか?」
「まず、彼女は魔王候補者の1人であるということ。あなたを認めるということは、自らその補佐に回るのを認めたことになるわ。それに、彼女は先代精霊神の末裔。他者の従者になるということは、種族としても、系統としても非常に重きことなのよ。」
俺はララノアを見た。なぜか恥じらうような表情をしている。
「ララノアさんは、それで良いのか?」
「ララノアで良いわ。私に異存はない。ただ、もう一つだけ、あなたを試してみたいことがある。」
初めて聞くララノアの声は、低めだが澄んだ声だった。そして、急に真顔になったララノアを見て、『たぶん、アレだろうな···。』と思った。こちらの世界に来て、何度となく経験したアレだ。
「あなたの強さを見せて欲しい。私と模擬戦をしないか?」
ほら···ね。
模擬戦とは、擬似的な戦闘行為を意味する。
だが、ララノアは真剣を握っている。刀に少し似た、細身で白銀の片刃剣。
加えていうなら、剣豪がまとうような覇気まで漂わせていた。
幼少期の、模擬戦とは名ばかりの死合を思い出した。あれは生き残るための関門。剣の腕だけではなく、相手を死に追いやる胆力が試された。
だが、今は違う。
ララノアからは殺気ではなく、気魄を感じる。
気魄とは、力強く立ち向かっていく精神力。ただ勝利だけを見据えていることを強く感じさせられた。
構えは正眼。
正眼の構えは、攻防においてバランスが良く、1対1の真剣勝負においては最も隙が少ない。
俺は片手を上げて、少し待ってもらうように伝えた。
『なめとんかぁ!ああっ!!』
『いてまうぞ!ゴラぁ!!』
破龍を空間収納に入れ、蒼龍を手に取る。
さすがに、この場面で反社会的なキーワードを口にはできない。念じるように脳内でつぶやいてスキルを起動させたが、もう少しまともなキーワードに早く変更をしたいものだ。どこかにマニュアルかFAQでも落ちていないものだろうか···。
「神威術ね。本気になってくれたようで何よりだ。」
武具を持ちかえる様子を見ていたララノアは落ち着いている。実戦経験が豊富なのだろう。多少のことでは、動じないようだ。
「待たせたな。」
その言葉に、ララノアの覇気がさらに強くなった。
俺は蒼龍を下段に構えた。
これは動きの妨げになるという欠点はあるが、足への攻撃や斬り上げなど、相手が防御をしにくいカウンターに特化した構えといえた。
ララノアの体格や、体の運びを見る限り、俊敏さでは向こうに歩があるだろう。エルフ得意の風属性魔法による遠中距離を一気に詰める動きにも注意を払わなければならない。
その対抗のための構えだった。
「行くわ。」
ララノアはその言葉を放つと同時に、風をまとって一直線に向かってきた。
魔法による身体能力強化だけではない。こちらからは逆風となる風が、ララノアの後方から流れてきている。
おそらく、風属性魔法で突風を作り、それを推進力に使っているのだろう。
10メートル程の距離を一瞬で駆け抜けたララノアの白刃が、俺の頭上に真っ直ぐに落ちてきた。
まだだ。
俺は軸足に重心をかけて溜めにしていたが、それをもう少しだけ深くして、ほんのわずかに反応を遅らせる。
蒼龍の刀身を跳ね上げると同時に、肘の可動で狙いを合わせ、体はやや右前方に踏み出す。
キィィィィィン!
ララノアの剣が半ばで真っ二つとなり、切っ先の方がそのまま地面へと落ちた。
「····································。」
瞳を見開き、驚愕の表情を浮かべるララノアの首筋に刃を向けた。
「俺の勝ちだ。」
夜が更け、静寂が訪れた。
俺は模擬戦の場であった湖畔で、1人佇んでいた。
ララノアとの勝負の後、俺たちはアグラレスの住居に招待をされた。今夜は静養をとり、明日に今後の話をしようということになったのだ。
少し頭を整理したくなり、夜の森を歩いてここに来た。
それにしても、異世界に来たときにも戸惑ったが、テトリアを倒した後のことが浮世離れしすぎている。
神格化して亜神となり、なぜか魔王という立場にまでならされてしまった。
魔人の嫌疑をかけられたり、稀代の英雄と崇められた時以上に、何の実感もわかない。
いや、神威術を自ら使えるという点においては、その恩恵を実感している。
神威術とは便利なものだ。
しかし、俺が使える術に戦闘系のものはない。魔法のようなものが使えたり、空が飛べたりはしない。
テトリアを倒した後、身体能力は向上したが、戦闘スタイルに変化はない。それは、敵が万を超えるような人海戦術で来た時や、空中戦などではイニシアチブを握れないということだ。
これまでに培ってきた知識や経験、そして技術を駆使するだけでは、窮地に陥ることもあるだろう。
弱い部分を補う武具や装備の拡充はもとより、助力を得れる仲間も必要だった。
エージェントの時のように支援に特化したものではなく、共闘できる仲間。
ふと、アッシュの顔が思い浮かぶ。
そういえば、最後に共闘した時は、あいつの極大魔法によって何度か死にかけたな。
背中を預けるなら奴だと思ってはいたが、背中を見せたら危険な奴に思い直すことになった。
まあ、アッシュはさておき、カリスの実力は申し分ない。魔法に特化している分だけ、近接戦は役に立たないかもしれないが、自分にはない手法を心得ている。
ミン達は、この大陸での生活がある。多くの亜人と呼ばれる者達の将来を担う必要があるのだ。巻き込むわけにはいかないだろう。
今はまず、人族との確執に決着がつくように動きながら、転移か長距離移動の方法を模索しなければならない。
俺は万能ではない。
やれることを確実にこなすために、動くしかないのだ。
「ここにいたのね。」
ララノアだった。
「夜中に気配を消して近づかれると怖いぞ。」
足音も気配も、まるで夜の森に溶け込んだかのように消えていた。
「でも、気づいていたでしょ?」
「まあ、いちおう。」
「タイガはすごいね。エルフの森では、草木や精霊達がエルフの気配を消すのに。」
そうなのか?何でもありだな。
「本気で気配を消す気がないなら、何となくわかる。」
ソート·ジャッジメントは気配ではなく、相手の存在を知覚する。先ほどまでのように、1人でいる時には護身のために無意識に発動する癖がついていた。だが、このスキルに関しては、あまり人には打ち明けていない。自分が善人か悪人かを勝手に判断されるスキルなど、関係にいらぬ隔たりを生むからだ。
「そう。少し話をしたいのだけど、良いかな?」
「ああ。」
「さっきのあの技は何?」
「剣を斬ったやつか?」
「うん。あの剣はミスリルでできているのよ。あんなの信じられないわ。」
特に変な仕掛けを施した訳じゃない。見たままの技だった。
「落陽という技だ。俺の大太刀はアダマンタイト合金で、ミスリルよりも硬い。それに、鍔に近い部分の方が安定している。その部分を、硬度で劣るララノアの剣の真ん中辺りに食い込ませた。」
剣は刃先に向かうほど折れやすい。てこの原理と同じだ。
「それって···刃の向きに少しでもブレが生じたら、あなたのも折れていたんじゃ···。」
「そういうカウンター技だからな。」
「神業ね···。」
「もっと厚みや重量のある剣が相手なら、使えないけどな。」
落陽は刀対刀用の迎撃技だ。斬れ味や硬度で劣る剣が相手なら、刃を垂直に入れれば造作もない。
「悪かったな。剣を使い物にならなくしてしまった。」
「授業料だと思えば良いわ。上には上がいるものね。」
素直に相手の力量を認められることは、これまで以上の研鑽につながる。長い目で見れば、ララノアの糧になるだろう。
「ねえ、お願いがあるのだけど。」
「お願い?」
「うん···パパって呼んで良い?」
「························はい?」
突然何を言い出すんだんだ、このエルフは···。
「だめ?」
小首を傾げてかわいい仕草をするララノアだったが、その呼び方はどうかと思う。
エルフは長命で、見た目の若さは数百年に渡りキープされる。
今の俺がパパなどと呼ばれると、周囲からは子供のいる夫婦だと勘違いをされるだろう。10年、20年後だと、違う意味のパパと誤解もされかねない。
「理由は?」
「あなたのぬくもりが懐かしかった。」
森で手をつないだ時のことか?
それとも、抱え上げて逃げた時のことだろうか?
「ぬくもり?」
「私が幼い頃に、父は魔族と闘い命を失った。その時と同じ···。」
ララノアが語った話は、亡き父との思い出だった。
無口だが、強くて優しい父親は、幼少期のララノアと手をつないだり、抱っこをよくしていたそうだ。
そんな父親は、エルフの森に迷い混んだ魔族から家族を守るため、身を挺して盾となり、やがて力尽きたという。
「エルフは長命だけど、だからこそ家族への想いが深いの。恋人や夫婦だってそう。1人の相手をずっと深く想うのよ。あなたのぬくもりはそれと同等だった。見ず知らずの子を、何としてでも救おうとした。それに···最初に手をつないでくれた時に、父性のような強い優しさを感じたわ。こんな、他人を自分の娘のように想える人がいるんだって、本当に驚かされた。」
···そうなのか?
俺はそんな感情を持てたのだろうか?
家族の愛情も、友人との信頼も、前の世界では表面上のものでしかないと感じていた。
人を想う気持ちなど、踏みにじられるものだと、ソート・ジャッジメントは俺に示した。
確かに、こちらの世界に来てからは、信頼できる友人を持てた···と思う。
余計な猜疑心を持たなくてもいい人たちと関われた気はする。
無意識に他人を思いやれるようになったということなのだろうか。
「買い被りすぎじゃないか?」
天邪鬼な言葉しか出なかった。
自分の変化が自然なものであるのかわからない。
ただ、人を信じよう、大事だと思える人達を守ろうと意識的にやっていただけではないのか?
自分こそ打算的な存在ではないのか?
そんな感情が反芻する。
「今の自分の表情がどんなものかわかってる?」
「え?」
「顔が真っ赤よ。自分の優しさを褒められて、どうして良いかわからないって感じかな。」
···そうなのか。
おれは、自然体で人を信じることができるようになったのか···。
今更ながら、自分が変わったことを認識し始めた瞬間だった。
「じゃあ、パパで決定ね。」
「え?いや、それは···。」
ララノアに精神崩壊させられてしまった···。
今の俺は、メンタルが激弱だ···。
「ん···パパぁ···。」
···またあれだ。
この世界に来てから、朝起きるとたまにこんなことが起こる。
さすがに、もうなれっこ···とは言いがたいが、それほど慌てなくなった。
フローラルの香りに、今の言葉。
目を開ける前に、誰かは想像ができた。
これはあれだ。
一種の抱き枕か、もふもふの小動物と勘違いされる何かが俺にあるのだろう。
それとも、気づかないだけで、女性が抱きつきたくなるフェロモンでも分泌しているのかもしれない。
普通なら羨ましいとも思われそうなことだが、これは勘違いしてはいけない類いだ。
そう、自分に男としての魅力が溢れているわけではないのだ。
あらぬ期待で醜態をさらさないように、ここは冷静でいなければならない。
そっと目を開けて見る。
胸に重みを感じていたが、やはりそこには、窓からの朝日を受けて白銀に光る頭髪が見えた。
半身に心地よいぬくもりを感じる。
いや、待てよ···。
俺はいつも通り、上半身裸で寝ているのだが···接している部分が微かに湿気を帯びて張りついている感がある。
この感触は···。
どうやら、俺に抱きついているララノアは裸らしい。
なぜだ···。
サキナの時のように、起こしに来たら眠くなったから···というのであれば、なぜ脱ぐ必要がある?
「ん···ん···パパぁ···。」
いや···おい、身動ぎされると、胸の先端らしきものが擦れて···。
いかん、冷静になれ。
ララノアは、パパと同じぬくもりを感じたと言っていた。
幼い頃に父親を亡くしてさびしかったのだろう。
···いや、それにしても、なぜ···裸?
はっ!?
やばい。
ヤバイぞ!
朝の生理現象は絶賛通常稼働中じゃないか!!
俺の魔王が···。
「ふ~ん···。」
俺の胸にララノアの寝息がっ!?
いかん、やめろ、耐えろっ!
魔王は寝てろっ!!
こんなところを、やや潔癖なミーキュアや、俺にあらぬ疑いを持っているイリヤが見たらどうなる···。
「んふ···パパぁ···。」
やめろ···ララノア。
胸に頬擦りするのは···やめてくれ。
コンコンっ!
「タイガ、まだ寝ているの?朝食の準備ができたみたいよ。」
来たーっ!
ミーキュアが来たーっ!!
この姿は···まずいだろ。
ミンなんか、無言で軽蔑の目線を突き刺してくるんじゃないか?
せっかく仲良くなったリーラにまで、軽蔑されたらどうする?
ミーキュアが言わなかっただけで、もしかして俺の二つ名には、「女難の帝王」とかがあったんじゃないのか!?
様々な思考が高速で駆け巡る。
「返事がないから開けるわよ。」
いやー!
やめろっ!!
空気を読め、ミーキュア!!!
カチャ。
カチャカチャ···。
「鍵がかかってる···タイガ、いないの?」
おお···ララノアが鍵をかけたのか?
そういえば、寝る前に鍵を締めるのを忘れていた。
何にしろ、グッジョブだ。
「ああ、ごめん。今起きたから、すぐに行くよ。」
「お寝坊ね。早く来てよ。」
そう言って、ミーキュアは去って行った。
これで、一難去った。
さて···この抱きついているのをどうしようか。
俺はゆっくりとララノアを引き剥がし、離脱することにした。もちろん、急に目を覚まされて、変な勘違いをされないように、体は見ないように視線をそらしながら。
「ふぅ···。」
朝から疲れた。
「あら、お口に合わなかったかしら?」
「いえ、とても美味しいですよ。」
アグラレスに余計な気づかいをさせてしまった。
料理は野菜が中心だが、とても美味しいものばかりだ。
「そう?いっぱい食べてね。」
「はい、ありがとうございます。」
「そう言えば、ララノアがまだ起きてこないわね。」
ミーキュアが、余計な発言をした。
頼むから、やめてくれ···。
俺は、予防線を張ることにした。
「ララノアなら、なぜか俺のベッドで寝ていたぞ。」
「へ?」
「どういうこと?」
「「「····························。」」」
空気が凍った気がしたが、下手に嘘をついて、後で大炎上なんてことは避けたかった。
「知らん。本人に聞いてくれ。」
冷静に返答をする。
こういう時は、慌てて繕うとドツボに嵌まる。
「タイガ···もしかして···。」
「もしかしてたら、自分から言い出さないだろう?」
「それは···そうだけど···。」
再び静寂が訪れる。
視線が痛い···痛い。
もはや、激痛。
「嘘···じゃないみたいね。」
予想外だったが、ミーキュアが助け船を出してくれた。
「そうなの?」
イリヤの射るような目が、疑念の色に変わる。
「タイガの二つ名に変化はないわ。」
こんなことのために二つ名を確認するなよ···。
「天然のままだし···。」
どうやら、天然だと良いらしい。
「ふぁぁぁ···あ、タイガ。先に行くなんてひどいよ。一緒に起こしてくれたら良かったのに。」
···予防線を張っていて正解だったようだ。
ララノアが部屋に入ってきて、危ない発言をしたのだ。
「ララノア、勝手にベッドに入り込むのは勘弁してくれ。危うく責任を取らないといけないのか、本気で悩んだぞ。」
「「「「「·····························。」」」」」
安堵から冗談めかして放った言葉で、また長い静寂が訪れた。
何かまずったか!?
「はあ···天然極まりね···。」
ミーキュアの言葉に、全員が頷いた。
···なぜだ!?
「本題に入る前に、エルフとしての見解を話しておくわ。」
アグラレスが真剣な眼差しで全員を見回した。
「エルフは、人族との戦争を望んではいないわ。確かに、人族との確執は消えていないかもしれない。でも、私たちは、先を見て生きていかなければならないの。二度と戦争を起こす気はない。」
「それは···現状維持を望むということなのですか?」
「戦争で犠牲を出したくはないと言うことよ。」
エルフは長命だ。以前の人族との戦争を体験している者達がまだ生きている。その彼らが、戦争を回避したいと言っているのだ。
「わかりました。」
アグラレスと俺の対話を聞いていた者達は、それぞれに思考を重ねているようだ。
しばらくの沈黙の後、ミンが口火をきった。
「連合は、人族への復讐を企てている。魔王の擁立はその手始め。」
「ミンはどうしたいんだ?」
「私はタイガについていく。」
「俺がどんな決断をしてもか?」
「タイガが誤った選択をするとは思っていない。」
真っ直ぐにみつめてくるミンの意志は強いようだ。
「ならば提案だ。まずは人族や、連合から離脱した者の現状が知りたい。俺は魔の森を抜けて、情報収集に行く。ミン達は連合の中枢に、その旨を伝えてくれないか?」
「1人で行くつもり?」
「今はその方が良い。人族と接触しても、俺の風貌なら最悪の場合でも問題にはなりにくい。」
最悪の場合とは、人族が昔と同様に亜人を蔑視していた場合のことだ。
「···わかった。タイガの判断に任せる。」
「もし···人族が昔と変わっていなかった場合は、どうするの?」
当然の疑問をミーキュアが唱えた。
「どんな種族でも、そのすべてが同じ思考をしているわけじゃない。善人もいれば悪人もいる。種族の壁を取り払うか、戦うべきか、それとも現状維持かは、それを見定めてからだ。俺とミンが、それぞれの場所でスキルを使ってことに当たる。それが最善だろう。」
人の悪意や負の感情を見ることができるスキル。これは、決して悪いものではないのだ。
こうして、俺たちはそれぞれに行動を起こすことになった。
ミンを含めた魔王候補者は、全員がその内容を承諾し、連合との協議に向かう。
そして、俺は単独で魔の森を踏破し、この大陸の人族社会を見極めるために動くのだった。
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