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 女神の説明が続いてます。

「私は現世で結ばれることなく非業の死を遂げたカップルを来世で結びつけることを仕事としてます。

 もし、どちらか1人が死んだのに、もう1人がそのあと長生きしたら、不都合が生じると思いませんか? もう1人はずーっと待たされるんですよ。その間どちらかの気が変わるかもしれません。

 私は明確な基準を設けてませんが、2人が同時に亡くなる、または1人が亡くなったあと、24時間以内にもう1人が亡くなった場合のみ、2人同時の輪廻転生を認めてます」

「そんなバカな!? 24時以内って・・・ なんで24時間以内にもう1人が亡くなるとわかるんですか?」

「私は現世に生きてるすべての人の人生を見守ってます。必要ならその人の未来を見ることもあります」

「それじゃ姫は、24時間以内に死ぬ・・・ ああ・・・」

 準一は思いました。

「姫は禁忌の黒い箱を開けた。あの箱には呪いがかかっていて、開けると24時間後に死ぬことになってる。もう遅いのか?」

 準一は発想を変えることにしました。

「もうこうなったら姫の最期の願望を叶えてやろうじゃないか! オレ、それに協力することはできないのか?」

 準一は女神を見ました。

「女神様、お願いです! オレを蘇らせてください!」

 女神は呆れた顔をして、さらに苦笑い。

「それが可能とでも?」

「オレ、もう1回よみがえってんですよ!」

「ええ、背中に彫った刺青の効果で蘇りましたね。けど、私にはそれはできません」

 準一は感極まって思いがけない行動に出ました。なんと土下座したのです。

「お願いです! オレを、オレをもう1度蘇らせください!」

 しかし、女神は無下。けど、準一はさらに頭を下げます。

「オレは姫を・・・ あの女性を助ける義務があるのです! 蘇らせてください! お願いします!」

 準一の声は涙声。女神は再び呆れたという顔を見せ、

「まあ、正直なことを言いましょう。蘇らせることは可能です。けど、それにはいろいろと条件があります。その条件をすべて呑みますか?」

 準一は安心した顔を見せ、

「聞かせてください、その条件を!」

「それはですね・・・」


 ここは宙に浮く空中要塞。そのコントロールルーム。いま自動のドアが開き、ブリュンが入ってきました。ブリュンはいきなり大あくび。

「ふわ~ なんですか、こんな時間に? 例の大砲を撃つ時刻まで、まだ1時間以上もあるんじゃないですか?」

 玉座のような艦長席、いや、艦長席のような玉座に座ってるナルヴィは、かなりのおかんむり。

「ふざけんな!」

 と一喝。けど、ブリュンにはあまり効いてません。眠たそうな眼のまま、ふわ~っとまたあくびをしました。

 ブリュンは魔女。ナルヴィが部下に処刑を命じても、魔法を使ってさっさと逃げるすべを知ってます。これではナルヴィの叱責をまともに聞くはずがありません。

 ちなみに、ブリュンは昨日、正確には今朝未明までほとんど寝てません。夜間はナルヴィのためにずーっと戦ってました。脚に銃弾を受け、自己治癒魔法を使ったことも。この自己治癒魔法、魔法力をかなり消費します。眠いのは当然なのです。

 けど、ナルヴィは独裁者、そんなブリュンの苦労なんてまったく考慮しません。それにナルヴィは怒りたい理由がありました。

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