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 リーダー格の近衛兵が叫びました。

「お前ら、ここから1歩を入れさせないからな! とっとと去れ!」

 跳ね橋の付け根、両側にわずかにある蔭に数人のデモ隊の生き残りが隠れてます。その内の1人。

「くそーっ、これじゃ勝負にならねぇよ・・・」

 これを俯瞰してる人がいます。透明になって箒に横乗りしてるブリュンです。ブリュンははーっとため息。

「やっぱ突撃銃アサルトライフルの前じゃ、話にならないか・・・」

 ブリュンがあたりを見渡しました。生き残ってるデモ隊は、跳ね橋の両側に隠れてる者、広場兼庭園にある灌木や喬木に隠れてる者を含めて10人いるかどうか。ブリュンは諦め顔。

「あ~あ、この作戦、失敗かなあ?・・・」

 ブリュンはニヤッと笑い、

「ふふ、もうちょっとあがいてみるか」

 透明なブリュンが乗った箒は、すーっとバルコニーへ降りていきました。そのままバルコニーに着地。今ここには3人の近衛兵がいます。1人の近衛兵の真後ろにブリュンが立ちました。その右手には大きなナイフが握られてます。

 近衛兵の甲冑からわずかにですが、首筋が見えます。ブリュンはニヤッと笑い、そしてナイフを振りました。グサッ!

「うぐっ!・・・」

 近衛兵の首筋から血がドピュッと吹きだしました。びっくりする残り2人の近衛兵。

「な、なに?・・・」

 さらに1人の近衛兵の首筋から血が噴き出します。

「うっ!・・・」

 その近衛兵も倒れました。残る1人は闇雲に小銃を振り回し、大声を発しました。

「くそーっ、なんだよ、これ? 眼に見えない悪魔がいるのかよ!?」

 その声を聞いてそれ以外のバルコニーにいた近衛兵はびっくりします。

「な、なんだ?」

 近衛兵の視線が事が起きてるバルコニーに集中しました。

 そのバルコニーですが、3人目の近衛兵の背後に透明なブリュンが立ってます。ブリュンはまたもやナイフを振り上げました。グサッ!

「うぎゃーっ!」

 3人目の近衛兵も首筋から血を吹き出しながら倒れました。

「あのバルコニーに誰かいるぞ!?」

「撃てーっ!」

 近衛兵たちはそのバルコニーを小銃で乱射。銃弾がバルコニーの手摺や壁や窓ガラスを破壊していきます。

 リーダー格の近衛兵が号令。

「やめーっ! 撃ち方やめーっ!」

 銃弾がやみました。バルコニーの手摺はボロボロ。背後の壁も小さな穴だらけになりました。リーダー格の近衛兵がつぶやきます。

「やったか?・・・」

 が、透明なブリュンは箒を使ってかなり高いところに浮いてました。1丁の小銃を抱きかかえてます。

「ふふ、私はそんなに簡単にはやられないわよ」

 ブリュンが小銃を構えました。

「死ねーっ!」

 ブリュンが小銃を連射。その弾丸が別のバルコニーにいた3人の近衛兵に直撃します。

「うぐぁーっ!」

 3人はあっという間に射殺。他のバルコニーにいた近衛兵が慌てます。

「くそーっ、どこから撃ってやがる!?」

 一部の近衛兵は小銃を闇雲に乱射。その弾丸が別の近衛兵に命中。

「うぎゃーっ!」

 その近衛兵はもんどりうって倒れます。なお、持ってた小銃は撃たれたときの衝撃で前方に落ちました。地面にその小銃が落ち、転がります。

 慌てるリーダー格の近衛兵。

「みんな、慌てんな! これじゃ同士討ちになっちまうじゃないか!」

 ブリュンは引き続き小銃を撃ってますが、突如銃声に勢いがなくなりました。銃弾が尽きたようです。

「おや、銃弾タマが尽きた?」

 ブリュンの眼が先ほど地面に落ちた小銃を捉えました。

「ふふ」

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