55
いよいよ準一のタガがはずれる、その瞬間、1階から玄関の扉が開く音が。続けて階段を猛スピードで駆けあがる音が。きっと警官です。準一は慌てて、
「姫、逃げないと!」
上気してる姫も、すぐに緊急事態だとわかったようです。
「うん!」
2人は箒に乗って浮上。雨戸に開けた穴に向かいました。準一の耳にドアが開く音が聞こえましたが、準一は振り返りません。
「待てーっ!」
2人の背中にかかる怒号。けど、2人を乗せた箒は窓の外に行ってしまいました。
箒にまたがって上空を飛ぶ姫と準一。姫はつぶやいてます。
「準一て本当に固いんだね。それとも私、あまり魅力的な女じゃないのかなあ?・・・」
準一はそれに応えるように、
「姫は魅力的な女の子だよ。けど、まだ子どもだよ」
「じゃ、13歳になったらセックスしてくれるの?」
「前にも言ったでしょ。オレの世界じゃ、18歳になるまでセックスしちゃいけないんだって」
「え~・・・
じゃ、こうするよ。私、13歳になったらいろんな男の人とセックスして、いろいろとテクニックを磨くよ」
準一は苦笑いして、思いました。
「おいおい、そこは18歳になるまで我慢する、じゃないのか?」
「準一もいろんな女の人とセックスして、テクニックを磨いてね。私、たくさんの女の人を紹介するから。
私、セックスで失神してみたいんだ。1度でいいから」
「ええ・・・」
準一は童貞。今の姫の言葉は、童貞にはかなり刺激的でした。
姫の発言が続きます。
「ところでさぁ、準一の世界では輪廻転生て信じられてるの?」
「輪廻転生? う~ん、どうなんだろ? 宗教によって違うんじゃないのかな?」
「準一は?」
「信じてる方かな?」
「私は信じてるよ。私の世界では輪廻転生の女神様がいるんだ。現世で結ばれることがなかったカップルが輪廻転生の女神様に祈れば、来世で2人は結ばれるんだ。もちろん現世で正しい行いをしてないといけないんだけどね」
「あは、それじゃオレは絶対ムリだ。実の父親を殺しちまったからな」
「あは、そっかあ・・・」
「姫、なんでそんな話をするの?」
「なんか私、すぐに死んじゃうような気がするんだ」
「ええ?」
「だって、ノルン王国は今、グラニ帝国とウルズ王国とスクルド王国と3つの国に狙われてるんだよ。やつらの狙いはきっと私だよ。私の命を獲るということは、ノルン王国を乗っ取るのと同じ意味だよ。私、いつ殺されても不思議じゃないんだよ」
「ふふ、そのために武器を調達してきたんだろ?
「そうだといいけど・・・」
姫は振り返り、準一の肩に掛かった古びたカバンを見て、
「そう言えば、準一、何持ってきたの?」
「パトロール魔女ジェニーのDVDとそれを見る機械だよ。姫は魔女はみんな悪の存在だと思ってるけど、世の中には正義の魔女もいるんだよ。このアニメにはそれが収められてるんだよ」
姫は懐疑的。
「う~ん、信じられない・・・」
「ふふ、これを見るばわかるよ」
この2人のやりとりをさらに高いところから見てる人影がありました。箒に横乗りしたブリュンです。
「やっと見つけたわ。ふふ、この世界たらマナの力を持ってる人ばかりで、ほんと捜すのに苦労したわよ」
なお、ブリュンの身体と箒は緑色に輝いてます。実はこれは透明魔法。これによって姫と準一は、ブリュンの存在に気づくことはありません。
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