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 ヒルドは光弾銃についてるインジケーターを見て驚きました。

「うわ、バッテリー、ゼロになってる!?」

 そう、今の2発の光弾はバッテリー不足で、威力は半分以下になってたのです。ヒルドは光弾銃を見てほぞを噛みます。

「ええ、なんで? 空飛ぶ鉄の馬の方はバッテリー切れの警告音が出るのに、なんでこっちの方は警告音が出ないの?」

 実は空飛ぶ鉄の馬は民生品。それに対して光弾銃の方は軍用品。戦場で軍用の光弾銃がバッテリー切れの警告音を発したら、敵兵はその音に反応して猛攻撃を仕掛けてきます。だから光弾銃の方は警告音が出ないのです。

「ちっ!」

 ヒルドは慌てて光弾銃から弾倉バッテリーを抜きました。姫はそれを見て、

「今だ!」

 姫が乗った箒がヒルドが跨った空飛ぶ鉄の馬に向かって突進。ヒルドはそれを見て、

「ふ、私だってそれくらいの魔法は使えるわよ!

 防御魔法スヴェルクーゲル!」

 そう宣言すると、ヒルドの身体が彼女が跨ってるマシーンごと防御魔法スヴェルクーゲルの光の球体に包まれました。

防御魔法スヴェルクーゲル!」

 姫も再び防御魔法スヴェルクーゲルを宣言。姫の身体も箒ごと防御魔法スヴェルクーゲルの淡い光の球体に包まれました。

 2つの光の球体が空中で激突。激しいせめぎ合い。両方の光の球体に無数のヒビが走ります。姫は歯ぎしり。

「くっそーっ、負けるもんかーっ!」

 ヒルドも歯ぎしり。

「こっちだってーっ!」

 これを見上げてる準一と侍従長。

「負けるな、姫ーっ!」

 ブリュンもこの戦いを興味深く見てます。なお、ブリュンが乗ってるマシーンは、地面に着陸してました。

 バリーン! ヒルド側の光の球体が粉々に砕け散りました。ヒルドは思わず悲鳴。

「きゃーっ!」

 ヒルドが跨ってる空飛ぶ鉄の馬は大きすぎて、それを包む防御魔法スヴェルクーゲルの光の球体もその分大きくなってしまい、単位面積当たりの力が弱くなってました。その分姫の防御魔法スヴェルクーゲルに負けてしまったのです。

 喜ぶ準一。

「やったーっ!」

 防御魔法スヴェルクーゲルの光の球体の欠片かけらがヒルドの顔に降りかかります。思わず顔をそむけるヒルド。

「くっ・・・」

 と、ヒルドははっと気づきました。自分の額に向けられた軍用拳銃の銃口を。その拳銃は姫が握ってました。

「おじい様の仇、死ねーっ!」

 バキューン。ヒルドの額のど真ん中に銃痕が付きました。ヒルドは後ろに押されるようにゆっくりとマシーンから落ちます。ブリュンはそれを見て、

「あ~あ、嫌な予感がしてたんだよね・・・」

 一方姫も空中に投げ出されました。姫は右手で拳銃を撃ちました。隻腕です、左手はありません。つまり箒から両手を離した状態で拳銃を撃ったのです。これでは反動で後ろに投げ出されて当然。

 焦る準一と侍従長。

「ああ・・・」

 落下中の姫は右手の拳銃を投げ棄てました。そして叫びました。

「箒よ!」

 すると次の瞬間、姫の右手に箒の柄が握られてました。箒が瞬間移動してきたのです。準一と侍従長は安堵。

「よ、よかった・・・」

 姫をぶら下げた箒はゆっくりと落下。そして姫はテラスに着陸しました。準一と侍従長が姫に駆け付けます。

「姫ーっ!」

「あは、私、おじい様の仇を取ることができた! けど・・・」

 姫は空を見上げました。そこにはマシーンに乗って逃げていくブリュンが。

「もう1人は逃げちゃった・・・」

 姫は準一を見て、さきほど箒から落ちたものの、低速で落下し、事なきを得た準一を思い出しました。

「あは、やっぱ準一のマナの力はすごいなぁ。私、箒から落ちたら、真っ逆さまに落ちちゃったもん」

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