33
小さな女の子の質問とそれに応える母親の会話が続いてます。
「もし占領されてたら?」
「私たちはきっと奴隷になってたわよ」
「奴隷になったらどうなるの?」
「それはとても恐ろしいことよ。私たちの自由は奪われ、毎日牛や馬のようにこき使われるの。もし逃げ出そうとしたら・・・」
「逃げ出そうとしたら?」
「みんなが見てる前で命を取られるの」
「へ~・・・」
ここは海峡の向こう側にある港の広場。無数の首吊り死体が展示してあるように並んでます。その死体を前にたくさんの女性や子どもたちが泣いてます。
実はこれは、ノルン王国侵攻戦争で負け、逃げ帰ってきた漕ぎ手=奴隷。この戦争でグラニ帝国軍の兵は1人も帰ってきませんでした。なのに奴隷たちは100人以上も帰ってきたのです。
これにグラニ帝国軍は激怒。逃げ帰ってきた奴隷を見つけ次第捕らえ、次々とここに連行してきて、生きたまま吊るしてるのです。奴隷化した市民への完全な見せしめです。
ここは大きな空間。何か宮殿の中の広間のようです。奥中央には玉座があります。そこに20~30代の男性が座ってます。肘掛けに片肘をついてます。
彼の名はナルヴィ。グラニ帝国軍西部方面最高指揮官にして、グラニ帝国の皇帝の次男。大陸の西半分は彼に任されてました。
彼の眼の前に1人の男が
「逃走した奴隷は発見次第港の広場に吊るしてます。しかし、何分向こうは土地勘がありまして、いろんなところに上陸しては、身を隠してるようで・・・」
だらだらとしゃべる兵にナルヴィはしびれを切らしたようです。思わず怒鳴りました。
「もういい! ともかく逃げてきたやつは全員ひっ捕らえて吊るせ!」
「わ、わかりました・・・」
兵はすごすごと引き下がりました。ナルヴィはここで悔しそうな顔を見せました。
「くっ・・・」
この大陸はかなり広大。東の方はかなり文化が進んでいて、東に侵攻した長男の軍はかなり苦戦してるようです。一方西の方はあまり文化が進んでおらず、西に進んだ次男のナルヴィの軍は破竹の勢いで領土を広げていきました。ここまで無敗。今日初めて敗北を味わったのです。
なんとしても欲しい皇帝の地位。通常なら長男がその地位を継ぐのですが、より多くの領土をより早く占領できれば次期皇帝の地位は自分のものになるかもしれません。だから今日の敗北は、ナルヴィにはかなりの屈辱だったのです。
「ふふ、皇子様、かなり悔しそうですね」
突然の声。ナルヴィははっとしました。
「その声、ブリュンか?」
するとナルヴィの眼の前に2つの人影が現れました。アナログテレビの走査線をかなり粗くしたようなものに
左側、ピーンと張った金髪の20代後半の魔女がブリュン。右側、黒髪のボブヘアの10代後半の魔女がヒルドです。両者とも身長170cmは越えてそう。ヒルドはスレンダー。ブリュンは出るところは出てる、引っ込んでるところは引っ込んでるのナイスボディ。
ナルヴィは2人を見て、
「ふ、ブリュン、それにヒルドもいたのか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます