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 リーダー格の兵は崖の下に消えて行く兵と馬を見て、

「みんな、馬から降りろ! もう馬じゃムリだ! こっから先は徒歩で逃げるぞ!」

 全員馬から降り、山道を登り始めました。これをかなり高いところから見てる一団がいます。全員ヒャッハーな体型&装備、顔や身体のあちらこちらに刺青が見えます。その中の1人。

「あいつらが親方が言ってたヤカラか?」

 隣りの男。

「ふふ、鈍った身体にはちょうどいい運動になりそうだ」

 さらに別の男は大きな石を両手で持ち上げ、

「じゃ、行きますか!」


 山道を登るスクルド王国軍一行。その1人がふと影を感じました。

「ん?」

 その兵が顔を上げると、上から岩石が。

「ええ?」

 岩石が兵の顔面を直撃。兵は吹き飛ばされ、崖の下へと落ちて行きました。

「なんだ、いったい!?」

 見上げる兵たち。上を見ると、たくさんのヒャッハーな男たちが岩石を落としてます。

「おらおらおらーっ!」

「ギャハハハ~っ! 死にやがれーっ!」

 兵たちは岩石を避けるだけで精一杯。小銃を構えることさえできません。

「くそーっ!」

 その兵のうなじに矢が突き刺さり、喉仏の方に貫通しました。

「うぐっ!」

 兵たちが坂上を見ると、数人のヒャッハーな男たちが弓を構えてます。

「坂上に気をつけろ!」

 兵たちの大半が坂上に小銃を構えます。すると今度は、兵たちの背中に鑓が刺さりました。ヒャッハーな男たちは坂下にもいたのです。戸惑う兵たち。

「さ、三方から挟み撃ちかよ・・・」

 その兵の脳天に岩石が命中。

「うがぁっ!」

 崖の上の岩石を投げたヒャッハーな男。

「おいおい、上にも注意しろよ。ガハハハハっ!」

 次々とスクルド王国軍の兵は倒されていき、残りは1人となりました。その兵は小銃を構えますが、飛んできた矢が右二の腕に当たり、兵は小銃を落としてしまいました。

「うぐぁっ!」

 兵はヒャッハーな男たちを見て、歯ぎしりし、

「く、くそーっ! お前ら、山賊か!?」

 ヒャッハーな男の1人は笑いながら、

「はぁ? 何言ってんだ、お前。オレたちゃ国境警備隊だぜ!」

 別のヒャッハーな男。

「山賊は2年前の一斉討伐で全滅したんじゃないの?」

 そう、2年前この峠道はたくさんの山賊がはびこってて大問題になってました。そこでノルン王国とスクルド王国は協同で掃討作戦を実施。スクルド王国側の山賊はすべてその場で処刑されました。

 一方ノルン王国側では当時の国王自ら出陣し、陣頭指揮を執りました。何人かは激しく抵抗したのでその場で処刑しましたが、ほとんどの山賊は生きたまま捕らえられました。当然処刑を覚悟した山賊たちですが、王の裁定で二度と山賊行為はしない、今後は国境警備隊として働くという条件で解き放ったのです。

 だからここにいる元山賊たちは、ノルン王国の王室のためなら命も惜しまないのです。

 元山賊、現国境警備隊のヒャッハーな男たちに囲まれては、もうどうしようもありません。最後に残ったスクルド王国最後の兵は一かバチか、崖を飛び降りました。

「うわーっ!」

 国境警備隊のリーダー格の男は高笑い。

「ガハハハ、話にもならんわ!」

 その男は落ちてる小銃を拾い上げ、

「ほーっ、こいつが親方が言ってた小銃ていうやつか?

 みんな、この武器を集めるんだ!」

 全員、応えます。

「おーっ!」

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