21
侍従長は地図のヴェルザンディ公国の部分を指差し、
「実はノルン王国は、元々このヴェルザンディ公国より小さな都市国家だったのです」
「へ~・・・」
「しかし、今から約200年前、我が国の王に不思議な力が宿りました。地震を起こす魔法が具現したのです」
「へ~ いきなりそんな魔法が?」
「いいえ、それ以前から我が国の王は魔法を使えることができました。しかし、それまでの魔法はささやかなものでした。天変地異を起こす魔法などなかったのです。
7代前の王は地震魔法を武器に周囲の国々を次々と合併していきました。さらにウルズ王国とスクルド王国にも侵攻を考えました。しかし・・・」
侍従長は地図のノルン連合王国の中央の国境線を指さしました。
「この国境線沿いに山脈があります。かなり高い山々が並んでいて、馬で乗り越えることは到底ムリ。徒歩でもなかなか乗り越えることはできません。海を廻るという手もありますが、海上では王の地震魔法は威力を発揮することはできませんでした。結局7代前の王は、この2つの国の併合を諦めました。
しかし、5代前の王は違ってました。7代前の王は自身がその地に行かないと地震を起こすことはできませんでしたが、5代前の王は遠隔地からでも地震を起こすことが可能だったのです。
ウルズ王国とスクルド王国では毎日地震が発生し、人口は半分以下になってしまいました。さらにヴェルザンディ公国にも地震が発生し、これら3つの国は我が国に使者を送り、降伏を宣言したのです。
けど、先ほども話した通り、これら3つの国を常時征服しておくことは地形的に絶対不可。そこで半年に1回3つの国が貢物を我が国に謙譲することで、恭順の意を示してると解釈することにしたのです」
準一は昔習った歴史用語を思い出しました。
「
侍従長は大陸の方を指差し、
「5代前の王はさらに大陸に侵攻し、その意志は4代前の王にも受け継がれ、ノルン連合王国は広大な領地を獲得しました。
しかし、困ったことに、続く3代前の王と2代前の王は女でした」
「え、なんで女王だと困ったことになるんですか?」
「この2人、実は地震魔法が使えなかったのです」
「ええ~?・・・ 他に地震魔法を使える人はいなかったんですか?」
「先ほども話した通り、この世界で魔法が使える人物は、この国の王のみ。
けど、世間的には女王もふつーに地震魔法が使えると思われてました。ノルン応国としても謀反を起こした地域は直ちに女王の怒りに触れるだろうと、何度も何度も喧伝してたそうです。
しかし、2代前の女王の時、ついに地震魔法が使えないことが露呈してしまい、ここぞとばかりにウルズ王国とスクルド王国は船団を組んで我が国に同時に攻め入ってきました。
我が国が絶体絶命になったとき、新たな王が就任しました」
「それが先代の王様?」
「左様。先代12歳の時でした」
「あは、今の女王様と同じ年齢だ」
「先代の王は男子だったので地震魔法が使えました。それで南海岸から攻め入ってきたウルズ王国を撃破。これを見たスクルド王国はすぐに撤退しました。しかし、先代の王の怒りはこれで収まるはずがありませんでした。先代の王は両国を徹底的に破壊すると宣言したのです」
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