第8話:復讐

 狂竜は厳しく辛い鍛錬といっていましたが、違いました。

 多少は痛かったですが、それほど辛くはありませんでした。

 公爵令嬢に相応しい力とマナーを体得するために、家庭教師から受けた鍛錬の方がよほど厳しく辛かったです。

 そう思った気持ちが顔に出ていたのか、嫌がらせをされてしまいまいした。


「ふん、バカの割にはなかなか我慢強いではないか。

 では一気に魔力袋と魔力路を広げてやろう。

 これで貯められる魔力量も一度に使える魔力量も百倍だ」


「きゃあああああ」


 狂竜はサディスティックでした。

 見栄を張っていたのもありますが、私が平気な顔をしているのが面白くなかったのか、一気に鍛錬を厳しく辛い物にしたのです。

 ですがそのお陰で、とてつもない力を手に入れることができました。


「使う魔術には気をつけるのだぞ。

 全部今までの百倍の破壊力がある。

 一番よく使われるファイアやファイアーボールが、今までの百倍だぞ。

 ファイアズやファイアーボールズを使ったら、今まで二つだったら二百になる」


「それは、とても恐ろしいですね。

 敵を九人斃すつもりだったのに、九百人殺してしまいかねないのですね」


「まあ、しっかり狙えば大丈夫だ。

 一匹の人間に百発のファイアーボールを叩き込む気でやればいい。

 まあ、しっかり狙いを付けられるようにするのが大前提だがな。

 奈落なら攻撃魔術の鍛錬をする場所には困らない。

 しっかりと鍛錬すればいい」


「陛下はそう申されますが、私には大切な両親や家臣領民がいます。

 私がここにいる間に、彼らを殺されるわけにはいきません。

 鍛錬に時間をかけているわけにはいかないのです」


「ふん、我儘ばっかり言いやがって、大バカ者が。

 だったらこうすればよい」


 私は狂竜の許しを得て王都に転移させてもらいました。

 伝説の転移呪文を本当に便利です。

 何が何でも呪文を教えてもらわないといけません。

 

「な、何故お前がここにいる、ベアトリクス」


 マクシミリアンのバカが裸でわめいています。

 でも裸でブリギッタに組み敷かれている状態では、なんの威厳もありません。

 しかもブリギッタの両手にはムチとロウソクがあります。

 そういう趣味の貴族がいるとは噂で聞いていましたが、まさかこの二人だったとは、想像もしていませんでした。


「何をバカな事を言っているのマクシミリアン。

 狂竜の手先になったに決まっているでしょう。

 さっさと殺してしまいなさい、このクズが」


 これはダメです。

 完全に上下関係が逆転してしまっています。


「眠らせるだけにしようと思っていたけれど、それではダメのようですね。

 カエルになって反省しなさい。

 フロッグチェンジ」

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