第7話:育成ゲーム
目に前に笑顔の絶えない家族がいます。
子供達が鶏を小屋に入れようと追い回しています。
母親が笑顔を浮かべながら牛の乳を搾っています。
少し離れた畑で麦の世話をしているのは父親でしょうか。
ごくありふれた、でも羨ましいくらい幸せな農家です。
「この一家は最初に生贄に来た娘の子孫だ。
もうそろそろ二百代目に入る家庭もあるのではないかな。
最初の頃はつがいを探しに人間の世界に行かせていたが、今では奈落にいる人間の中からつがいを見つけることができる。
まあ、どうしても外の世界でつがいを探したいという者は外に出て行くがな」
話を聞くととんでもない事でした。
狂竜は自分の遊びで小国に匹敵する人間を育てています。
しかも生贄の娘から好きな男を聞き出して、その男と夫婦にさせてやるのです。
羨ましい気持ちと腹立たしい気持ちが相半ばします。
政略結婚しかできない我が身と比べて、そんな気持ちになってしまいます。
「全ての夫婦が幸せになれるのですか。
家や国の縛りがなくなってしまったら、分かれてしまうのではありませんか」
半ば嫉妬に近い感情で嫌な質問をしてしまいました。
「ふん、バカめ、そんな事は当たり前ではないか。
そもそも嫌いになったのにつがいのままでいる必要などない。
繁殖期や交尾の時にだけ一緒にいるつがいも多いのだ。
嫌になれば分かれる、それが普通ではないか」
「人間はモンスターとは違うのです。
子供を育てるのはとても大変なのです。
夫婦で協力しなければ子供を育てる事などできません。
こ、交尾だけして逃げるような男を、陛下は許すと言うのですか」
「ふん、やはりお前はバカだな。
人間には交尾だけして子供を育てない男の方が多いのだ。
そんな事も知らない大バカ者め」
「自分の無聊を慰めるために、育児に苦しむ生贄を見て喜んでいるのですか」
「バカめ、誰がそんな事をするか。
余が育てている人間を、死なせたり病気にさせたりするはずがないであろう。
自分で餌を獲ることができないのなら与えてやる。
病気になったら薬を与えるか魔術で治してやる。
つがいがいなくなって寂しがっているのなら、新しいつがいを与えてやる。
バカ者は自分が飼っている犬猫に餌もやらなければ薬も与えなかったのか。
ああ、飼っていると言っても人任せか。
それは飼っているとは言わないのだ。
余は人間がそれだけ増えても、全て自分で世話をしてやっておるぞ」
バカ、バカ、バカと言いやがって腹が立つ。
ですが、狂竜の言う通りです。
私は犬や猫の世話を家臣任せにしていました。
それに比べれば、狂竜の方が遥かに責任感があります。
だからといって人間を飼うというのは納得できませんし、つがいを与えるという表現も許せません。
「分かりました、この件に関してはもういいです。
私の手に余る事で文句を言うのは無責任だと分かりました。
それよりも早く魔術を教えてください」
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