第3話:恥辱

「やっちまえ、今まで王家に奪われていた金を取り返すんだ」

「「「「「おう」」」」」

「殺せ、殺してしまうんだ」

「ひぃいいい」


 情けない話ですが、毎日命懸けでダンジョンに挑んでいる冒険者に比べれば、血統だけでに騎士や徒士になった者達は弱すぎます。

 一一〇〇人という人数差で圧倒てできる、少人数が相手なら何とかなりますが、町中の冒険者と労働者が敵に回ったら、とても勝ち目はありません。


「やれ、やれ、やれ、やっちまえ。

 奪った金と装備の半分をくれてやる」


 いつの間にか下種は、叛乱のリーダーにおさまるつもりです。

 しかも冒険者や労働者の上前をはねる気でいます。

 したたかと言うべきか、それとも小狡いと言うべきか。


「俺は姫様とじっくりと交渉するから、お前らは今までの恨みを晴らすんだ。

 王家とバッハマン公爵家から送られてきた、役人どもを叩きのめしてやれ」


 上手く冒険者と労働者の眼をそらせましたね。

 今まで散々偉そうにしていた連中を叩きのめせる機会を与えて、彼らが夢中で復讐と略奪をしている間に、私を乱暴するつもりです。

 王女の私を手に入れて、自分が王位に就く大義名分を手に入れる気です。

 ですが私は形だけの養女なのですけどね。


「あっ、この野郎、俺様から逃げられる思うなよ」


 さすがに目敏いですね。

 騎士団の連中は、逃げた私の事に全く気がついていなかったのに、叛乱を唆した腐れ外道は、私の事をちゃんと見ていたようです。

 とは言っても、それなりに時間と距離は稼ぎました。

 問題は体力と地の利ですね。


「うっへへへへ、逃げた事を後悔させてやるよ」


 下卑た表情をして私を見るその眼に、耐えがたい嫌悪感が走ります。

 こんな奴にこの身を穢されるのは耐えられません。

 恥辱を受けるくらいなら、自害します。

 しかしただでは死にませんよ。

 私だってそれなりに鍛えているのです。


「うぎゃっ!」


 火炎魔術で顔を焼いてやりました。

 王国の騎士団長や騎士達が相手なら、即死させられるだけの攻撃力のはずなのですが、残念ながら下種が相手だと致命傷になりませんでした。

 下種が自分一人で私を嬲り者にしようとして、周りに冒険者や労働者を近づけていなかったので、上手く囲みを突破できました。


「この野郎が、もう勘弁ならねえ、王女だろうが徹底的に調教してやる」


 最初から嬲り者にして意のままにしようとしていたくせに、よく言いますね。

 結構時間稼ぎしたつもりでしたが、よほどレベル差があるようですね。

 性根は腐っていても、実力を高める努力は怠らなかったという事ですか。


「捕まえたぞ」


 ドラゴンダンジョンの淵に追い込んだと思ってのでしょうね。

 貴族令嬢の覚悟を舐めてもらっては困りますよ。


「なっ、ダンジョンに飛びおりやがった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る