第二話

「二年生は一年生の手本となるように。三年生は…

教頭先生が壇上でお決まりの台詞を得意げに話す中、私は今日の放課後のことを考えていた。我ながらせっかちな父に少し似てきたのかもしれない。


 今日は始業式とクラスでの顔合わせだけだ。いつもは水曜日しか行かないけれどちょうど本も読み終わったところだし図書館にでも行こうか。

きっとクラスメイトたちはでも進級祝いでそこらへんのカラオケで打ち上げしに行くんだろう。

無論、私にはそんなもの、関係も縁もないのだけれど。


 


 うちの学校は3年間クラス替えが無いため何事もなく始業式とLHRを終えて私は市立の図書館へ向かった。

県内ではそこそこ広い図書館で数年前にリニューアルしたので近未来的なデザインで私の数少ないお気に入りの場所だ。

そして一番は屋上のテラスだろう。天井が一面ガラス張りのため晴れでも雨でもそこで本が読める。しかも高台にあるため、街並みと海が一望できる。

今日も私はそこで一通り本を読んで新しい本を借り、帰路につこうとした。

(あ、雨降ってきた。)

玄関でバックの中から折り畳み傘を出そうとしていると、誰かの傘とぶつかった。

(あ、妖精)

ぶつかったのはうちのクラスの妖精、黒川彗だった。

え、こんな広い玄関でわざわざぶつかる?しかも相手の傘はビニール傘だ。

前が見えなかったはずがない。

それにしても綺麗な容姿だ。近くで見ると二次元かと勘違いしそうになるくらいに。背中に羽が生えてるんじゃ無いかと確認したくなる。

「あ、すいません」

「すいません」

妖精も本を読むんだ、なんてド偏見の塊のような思考回路をぐるぐると回していたら、妖精もテラスへ向かう階段を登っていくのが見えた。


(さ、そろそろ帰るかな)

私はお気に入りの鴇色ときいろの折り畳み傘を開いた。

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